日経平均は引き続き振幅の大きい展開にあります。先週(7月27日週)は一時61,000円を割り込むなどかなり下値が意識され始めた局面となりましたが、その後は好材料もあって急反発しています。これで底打ちと思いたいところですが、直感的には一筋縄ではいかないように感じています。
大相場の宴の後始末はそれほど簡単には済まないと慎重に捉えておくことが重要でしょう。相場格言で「落ちてくるナイフはつかむな」というものがあります。高値を見た後ではまだ下落基調にある中でも「もう十分に安い」と思いがちです。ここは長期成長シナリオと短期の調整を、しっかりと分けて相場に臨みたいところです。
金利正常化が本格化。その波及効果を改めて整理する
さて、今回は「金利上昇」をテーマに取り上げてみましょう。このテーマは過去に何回か取り上げています。
【日本株】高まる利上げの可能性、株式市場に与える影響と注目銘柄(2025年12月3日付)
【日本株】銀行関連銘柄/「日銀の追加利上げ」から次の時流を読み解く(2024年8月7日付)
日銀の金融政策変更、銀行セクターのこれからを読み解く(2024年4月17日付)
ただ、いずれも金利が正常水準に戻る過程での執筆でもあり、金利正常化が現実のものになってきたことで、改めて影響をまとめてみたいと思います。実は例によって編集部より「『風が吹けば桶屋が儲かる』的な感じで金利上昇の影響と波及効果をまとめよ」との依頼もあり、ちょうど良い機会になったという事情もあります。心なしかここもとは編集部の無茶振りをやや感じるのですが(笑)、ありがたく編集部の「フリ」に乗ってみたいと思います。
金利が上がると実生活や企業活動はどう変わる?
住宅や自動車のローン負担が増加する
まず、「金利が上がると我々の実生活では何が変わるのか」から考えてみましょう。
金利が上がって直ちに影響があるのは、住宅や自動車のローン負担でしょう。変動金利型でローンを組んでいれば、適用金利の上昇によって月々の返済額や支払利息の金額が増加します。ローンを抱える世帯にとっては、自由に使える資金が圧迫されます。その結果、日々の消費を手控えるきっかけになります。これからローンを組もうかと考えていた世帯も、月々の利息負担増加を懸念し、実際の購入に二の足を踏むことになることは想像に難くありません。
住宅取得や引越し、自動車購入の機会が減少すれば、家財道具の更新見送りや旅行先送りなどの波及効果も生じます。結果として、ヒト・モノ・カネの動きは鈍化することになります。この積み重ねで需給関係は緩和の方向にシフトし、物価やサービス価格への下落圧力の増加という流れへと繋がっていくのです。
企業は設備投資を控えるようになる
これは企業も同じです。設備投資資金を銀行借入で調達しようとすれば、金利上昇によって支払利息が膨らんでしまうため、より厳しく投資採算を精査する必要があります。
金利上昇によるヒト・モノ・カネの動きの鈍化は、売上想定をより慎重に見通す必要性も喚起するでしょう。その結果、投資見送りとなるケースも出てくるはずです。
ヒト・モノ・カネの動きはさらに鈍化することとなり、資材や物流需給は緩和へと向かい、最終的には物価上昇の沈静化の方向が鮮明になるという流れとなるのです。
「逆資産効果」=資産価値が下がり消費を控える
また、直ちに影響とはなりませんが、金利上昇からは「逆資産効果」も発生します。通常、不動産や株式・債券などの金融資産は、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて価格が形成されます。金利が上昇すると、現在価値への割引率が上がります。そのため(預金などの金利収入も期待できるようになり)、理論上は資産の現在価値が低下します。すると、将来への不安が徐々に台頭し、消費を控えようという動きも出始めることになります。
企業であれば、資産の担保価値低下で資金繰りが悪化する場合も生じかねません。消費や投資を一旦控えようという心理的萎縮はさらにヒト・モノ・カネの動きを鈍化させます。もちろん、預金に発生する金利収入が増加するというメリットも発生します。
一般企業はコスト増、銀行業は「利ザヤ」が拡大する
ただし、金利上昇局面では、借入金利の上昇が受取金利の上昇よりも速く大きくなる傾向があります。銀行業では「利ザヤの拡大」という現象が起こります。マクロ的に見ると、銀行業以外の業種では、借入金利の上昇による影響の方が大きいという構造だと言えます。
円高圧力が生じる
また、他通貨と比較して相対的に魅力が増すため、円高圧力が生じるという影響も忘れてはいけません。円高ではエネルギーコストの低下が予想され、これもまた物価抑制に影響することになります。
景気の過熱を抑える日銀の微妙な舵取り
一般的に、金利上昇は金融引締めとも言われ、物価上昇の抑制に寄与し、景気の過熱を抑える効果が認識されています。「風が吹けば桶屋が儲かる」的な説明を心掛けました。こうした仕組みであることをわかっていただけるかと思います。こうした観点からも金利上昇はよくよく注意をしてその影響を見ておく必要があるのです。
ただし、金利は景気が良くなる局面でも上昇します。ヒト・モノ・カネが動き始める(=景気が良い方向に廻っている)局面では資金需要が膨らみ、金利上昇を招くのです。そして、金利が一定の閾値を超えたところで、実体経済に急ブレーキがかかってくるものなのです。
日銀は実際の景気・経済にブレーキをかけぬよう、しかし物価上昇などを抑制するよう、金利の微妙な舵取りをするという役目を担っていると言えます。
金利が上がると、どのような企業が投資対象になる?
では、この金利上昇局面ではどのような企業が投資対象となるでしょうか。
1.銀行株
前段でも触れましたが、筆頭は「利ザヤ拡大」の恩恵をフルに受ける銀行株です。特に、伝統的な「利ザヤビジネス」への依存度が高い銀行ほどそのメリットを享受できる構造となります。
具体的には、資金利益のウエイトが高い九州フィナンシャルグループ(7180)、七十七銀行(8341)、山口フィナンシャルグループ(8418)、岩手銀行(8345)、秋田銀行(8343)、阿波銀行(8388)、ほくほくフィナンシャルグループ(8377)、ふくおかフィナンシャルグループ(8354)、滋賀銀行(8366)、百十四銀行(8386)などです。
2.無借金企業
次に考えられるのは無借金企業群です。これらの企業群も金利上昇によるマクロ景気の影響は避けられませんが、金利収入が増加する分、他社より相対的に優位になり得ます。
ここでは受取金利規模が営業利益に対して大きい企業として、塩野義製薬(4507)、任天堂(7974)、SUBARU(7270)、トヨタ自動車(7203)、信越化学工業(4063)などの名前が挙がります。
