主役交代の兆し?進むセクターローテーションと相場の裾野の広がり

今週(6月29日週)の米国株式市場は、表面上はしっかりした相場となり、S&P500は週間で+1.76%、ナスダック100は+0.72%上昇し、NYダウは史上最高値を更新しました。週初は、最高裁がFRB(米連邦準備制度理事会)理事の解任を巡る問題で中央銀行の独立性を守る判断を示したこと、アルファベット[GOOGL]がNYダウ構成銘柄に加わったこと、そして大型テクノロジー株への買いが続いたことが支えになりました。

ただ、週全体の流れを一言で言えば、指数は上がったものの、これまでのマーケットをけん引してきた主役が揺れた相場でした。6月までの市場をけん引してきたのは、AIインフラ投資、半導体、メモリー、データセンター関連でした。しかし週後半になると、メタ・プラットフォームズ[META]が余剰計算能力を外部販売する可能性が報じられたことをきっかけに、「AI向け計算能力は将来余るのではないか」という見方が浮上しました。これを受けて半導体株には売りが広がり、フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は7月1日(水)、2日(木)と2日続けて大きく下落しました。

一方で、ソフトウェア株には買い戻しの動きが見られました。AIが既存の企業向けソフトウェアの収益構造を脅かすのではないかという懸念は依然として残っています。しかし今後は、AIを自社サービスにうまく組み込むことで、生産性の向上や価格改定につなげる企業も出てくると考えられます。

つまり、買われすぎていた半導体株には利益確定売りが出る一方、これまで売られすぎていたソフトウェア株が見直されるという、セクターローテーションが起きたということです。また、このところ不調だったスーパー大型テック株にも買いが入り、FANG+指数は先週+3.29%上昇しました。

もう一つの大きなテーマは、引き続き相場の裾野が広がっていることです。週後半はナスダックが軟調だった一方、NYダウは大きく上昇し、ヘルスケア、金融、資本財なども買われました。これは決して悪い動きではありません。むしろ、上昇相場が一部のセクターだけに依存し続けるよりも、景気敏感株やディフェンシブ株にも資金が回る方が、相場の持続性という意味では健全です。

雇用とインフレに減速感、株式市場を支えるマクロ環境

マクロ面では、米雇用統計が相場に安心感を与えました。7月2日に発表された6月の非農業部門雇用者数は市場予想を下回る5.7万人増にとどまりました。一方で失業率は4.2%へ低下しました。これは「景気が急失速している」とみるほど悪くはありませんが、「FRBが追加利上げを急ぐほど強い」わけでもありません。市場にとっては、いわゆる「悪いニュースは良いニュース」と受け止められました。CMEのFedWatchでは、7月利上げ確率は約29%(7月1日)から約20%へ低下しました。

インフレについても、やや風向きが変わってきました。米国・イラン情勢の緊張で一時上昇した原油価格は、和平交渉の進展期待もあり、戦争前の水準に近づいています。ガソリン価格や輸送コスト、石油化学製品価格の低下は、時間差で物価に効いてきます。食品や外食関連ではなお値上がり圧力が残っていますが、エネルギー価格のピークアウトは、年後半のインフレ鈍化につながる可能性があります。

この組み合わせは、株式市場にとって比較的好ましいものです。雇用は減速していますが、急激に悪化しているわけではありません。インフレは高止まりしていますが、エネルギー価格の低下で先行きには改善余地があります。FRBは利上げを急ぐ必要がなくなり、企業利益はまだ伸びています。これが、今週の相場を支えた基本的なストーリーです。

まもなく本格化する第2四半期決算、注視すべき3つのポイント

今後の最大の焦点は、まもなく始まる第2四半期(4ー6月期)の決算発表です。現在、市場は2026年の後半に企業利益が再加速することをかなり織り込んでいます。S&P500のEPSは前年比で大きな伸びが見込まれており、強い利益成長が続けば株価上昇を正当化できます。しかし、期待が高い分だけ、企業が弱いガイダンスを出した場合の失望も大きくなりやすいです。特に注目すべきなのは、AI投資の継続性、企業の利益率、消費者需要、そして価格引き上げ後の販売数量です。

決算で確認したいポイントは3つあります。第一に、ハイパースケーラーがAI向け設備投資を本当に増やし続けるのかです。第二に、AI投資が半導体メーカーだけでなく、ソフトウェア、電力、通信、データセンター、不動産、金融サービスなどに波及しているのかです。第三に、企業が人件費や原材料費を吸収しながら、利益率を守れるのかです。この3つが確認できれば、相場は再び上値を試しやすくなると考えます。

今後のリスク要因と来週(7月6日週)の注目ポイント

逆にリスクは、期待が先に走りすぎることです。金利が再び上昇する、原油価格が反発する、関税や地政学リスクが再燃する、あるいはAI設備投資に過剰感が出る場合、株価は一時的に調整しやすくなります。特に信用取引の膨張や半導体株の上昇スピードを考えると、2026年後半のどこかで「強気相場の中の大きめの押し目」が来る可能性はみておきたいと思います。

7月3日の米国金融市場は、米国の独立記念日(7月4日)の振替休日で休場となります。来週(7月6日週)は発表される経済指標が比較的少ない週ですが、ISM非製造業景況指数、FOMC議事要旨、中古住宅販売、ペプシコ[PEP]とデルタ航空[DAL]の決算などが注目材料になります。決算シーズン本格化は7月13日週の大手銀行からですが、7月6日週はその前哨戦として、金利、景気、消費、企業マージンに対する市場の見方を整理する週になるでしょう。