2024年までの円安阻止と何が違うのか?
2022年から150円を超える円安が繰り返されるようになったが、それでも2024年までは円安阻止の為替市場への介入をきっかけに円安は一段落した。ところが今回は、2026年のゴールデンウィークに為替介入を再開したものの、これまでのところ円安は止まっていない(図表1参照)。
2024年まで円安が一段落したのは、日米金利差(米ドル優位・円劣位)拡大が一巡、縮小に転じた影響が大きく、為替介入はきっかけの役割だった。これに対して、約1年前から金利差縮小に米ドル/円がほぼ反応しなくなった(図表2参照)。
円売りの主因は、日本の財政規律への懸念に変わった
金利差縮小でも止まらない円安については、日本の財政規律への懸念を背景とする長期金利上昇が原因だとの見方が強まっている(図表3参照)。この関係が続く中では、財政規律への懸念が払しょくされて長期金利上昇が止まらない限り、円安は止まらないという理屈になる。
その意味で、高市政権の経済財政運営と改革の基本方針である「骨太の方針」が注目されたが、これまでのところ財政規律への懸念を払しょくできるとの評価は見られず、長期金利上昇も続いている。こうした中では為替介入で円安を止めるのは難しいというのが一般的な見方になっている。
2024年までの判断基準なら円安180円の可能性=国内的に許容できず
ただし、そうしたことは、通貨当局も理解していたようだ。2024年までとは違う円安阻止の事情があることは、ゴールデンウィークに行った為替介入からもうかがえた。2022年と2024年の米ドル売り・円買い介入は、米ドル/円が5年MA(移動平均線)を3割近くも大きく上回ったところで行われたのに対し、ゴールデンウィーク介入は5年MAを15%程度上回ったところで行われた(図表4参照)。
米ドル/円が5年MAを大きく上回るほど、米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念が強くなる。その意味では、ゴールデンウィーク介入は、2024年までより米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念が強まる前に行われた。
仮に、2024年までのように、米ドル/円が5年MAを3割近く上回るところで介入を始めるなら、足下の5年MAは140円程度なので、介入開始は180円になる計算だ。にもかかわらずゴールデンウィークに160円を超えたところで介入に動いたのは、もはや180円まで円安を放置することは国内的には許容できないと判断したためだった。
高市政権と足並み揃わず=早期の円安阻止はできるのか?
円売りの最大の理由が日本の財政規律への懸念となっている状況では、その流れを変えるためには財政規律への懸念の払しょくが大前提になる。高市政権の「骨太の方針」の決定までを見ると、この点において政権と通貨当局の足並みが揃っていない印象は否定できないだろう。
そうした中で、当局が早期の円安阻止を断念したら、これまでの動きからすると円安は180円まで止まらない可能性が出てくる。しかし、国内的に許容できないとの判断から早期の円安阻止介入に動いた当局が、方針を簡単に変えるだろうか。
2024年までとは円安阻止の事情が違うことをと理解していた当局は、これまでのような日本単独の為替介入で円安の流れを変えるのは難しいことも理解していた。その意味では、日米やG7(主要7ヶ国財務大臣及び中央銀行総裁会議)などの協調介入まで選択肢を広げて、円安が160円を大きく超えることを阻止できるかに注目したい。
