米国では貯蓄率が3.0%と2022年以来の水準まで低下する中で、消費者の支出に変化がみられています。実際、2026年5月の米消費者支出(名目、前年比)では、中古車への支出が2ヶ月連続で前年比マイナスとなるなど高額消費に慎重な姿勢がみられています。
イプソスが2025年10~11月に行った調査によれば、中間層(年収5~10万ドル)の回答者のうち約3割が過去6ヶ月間で「費用のために医療を先延ばし、または受けるのを見送った」と回答したほか、「家賃や住宅ローンの支払いができなかったことがある」との回答が2割強あったことも明らかになっており、消費を取り巻く環境は過度に楽観視できない状況になっていることが見て取れます。では、米国の個人消費に関して明るい材料はないのでしょうか?
選別的に支出を行う消費者、足元で2桁成長となっている「遊園地・キャンプ場・関連娯楽サービス」
前述の米消費者支出を商品・サービス別でみていくと、異なる景色が見えてきます。例えば、「遊園地・キャンプ場・関連娯楽サービス」は2025年年央にかけて高めのインフレ率に伴い値ごろ感が後退するなか、前年比マイナスの状態が続いていましたが、その後は成長軌道に入り、足元では2桁成長となっています(図表1、2026年5月:前年比13.5%増)。
遊園地に関しては、2025年5月にフロリダ州オーランドで開業したテーマパーク「エピック・ユニバース」(現状ではコムキャスト[CMCSA]が手掛ける)が好調な集客となったほか、後述するシックス・フラッグ・エンターテインメント[FUN]では、シーズンパス会員基盤の拡大や複数パークにまたがる地域横断アクセスの拡充といった企業努力によって集客力が強化されるなど、遊園地関連の需要は回復しています。
また、外出する娯楽という共通項を有する「ライブ娯楽(除くスポーツ)」に関しては、2025年末にかけて伸びが減速していたものの、足元では回復トレンドとなっています(図表2)。消費者による良質な体験を求める動きから、スタジアムや野外、アリーナでのコンサートのチケットが好調と報じられています。
他方、同じ娯楽という観点ながら少し角度を変え、「ゲーム・玩具・趣味」の分野に目を転じると、こちらは伸びの増減が相対的に少なく緩やかな拡大基調をたどっています(図表3)。
足元では、日本でも人気のポケットモンスター関連やMLB関連の製品が人気となっています。このように、自動車を筆頭とする高額消費については低調な傾向がみられているものの、「遊園地・キャンプ場・関連娯楽サービス」、「ライブ娯楽(除くスポーツ)」、「ゲーム・玩具・趣味」のように好調な分野もあり、消費者は選別的に支出を行っている様子がうかがえます。
好調な娯楽分野の関連銘柄は?
「遊園地・キャンプ場・関連娯楽サービス」関連銘柄
「遊園地・キャンプ場・関連娯楽サービス」に関連した銘柄としては、コムキャスト[CMCSA]が挙げられます。主力のブロードバンド事業の低迷など逆風に直面していますが、足元では同事業における加入者数の減少幅が5年ぶりに縮小しました。また、テーマパーク部門は好調で、同部門の収益は2026年に9%超の成長が見込まれています。なお、同社は2026年6月29日、約1年後をメドに、ブロードバンドやワイヤレスなどを担う事業とテーマパークや映画、動画配信サービスなどを手掛ける事業に分離し、機動的な経営を目指す方針を明らかにしており、今後の動向が注目されます。
別の企業例としては、シックス・フラッグ・エンターテインメント[FUN]もあります。同社はテーマパークやウォーターパークなど地域型の施設を運営しています。同社の遊園地における待ち時間のデータは、4月は前年同月比35%増、5月が同53%増となっており、来園者数の増加を伴う好調な夏を見込む声も聞かれています。同社では2025年12月に新たに社長兼最高経営責任者(CEO)が就任しており、経営改革も期待されます。
「ライブ娯楽」関連銘柄
「ライブ娯楽」関連では、ライブ・ネーション・エンターテインメント[LYV]を企業例として指摘できます。同社は、コンサートのプロモーター、会場運営者、チケット販売プラットフォームとして機能しています。2025年には約5万5000件のイベントをプロモートし、約1億6000万人の観客を動員したとされています。さらに2026年4月までで前年同期比11%増となる1億700万枚のチケットを販売し、スタジアム、アリーナ、野外音楽堂、フェスティバルといった主要な会場タイプ全体で2桁成長を記録しているとしており、好調さが目立っています。
また、同社のCEOは「人工知能(AI)が台頭するなかで、人々はアーティストや他のファンと共にいる機会を求めている」との認識を示しています。こうしたなか、2026、2027年の売上高については10%前後の成長が市場で予想されています。ただし、チケット市場の独占に係る法的費用の計上が足元の純利益の圧迫要因となっています。
「ゲーム・玩具・趣味」関連銘柄
「ゲーム・玩具・趣味」に関連する銘柄としては「トランスフォーマー」や「マジック:ザ・ギャザリング」などの有名ブランドを活用して商品を提供するハスブロ[HAS]があります。同社は2025年、ティーンや13歳以上を重視し、購買者の平均年齢を引き上げる方針を打ち出し、この戦略を進めています。こうしたなか、2026年7月21日に発表された最新四半期決算では売上高、1株当たり利益(EPS)ともに市場予想を上振れました。同社のCEOはインタビューで「どの客層を見ても、どのブランドを見ても、かなり良い勢いがあった」と述べました。
地政学リスクの高まりなどから先行き不透明感が漂うものの、消費者は選別的に支出している様子がうかがえます。こうした動きに伴いテーマパークやライブ、玩具関連では業績に追い風が吹いている企業もみられますので、参考にしていただければと思います。
なお、関連銘柄を本文ならびに図表4にてご紹介していますが、時価総額の小さな銘柄もみられます。新規材料などによっては株価が急変動するリスクがあるためご留意ください。
【図表4】娯楽分野の銘柄一覧
| ティッカー | 名称 | 時価総額 | 株価 |
騰落率 年初来 |
1年 | 3年 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 遊園地・キャンプ場・関連娯楽サービス | [CMCSA] | コムキャスト | 840 | 23.52 | -21.3% | -33.3% | -45.2% |
| [PRKS] | ユナイテッド・パーク・アンド・リゾート | 21 | 45.27 | 24.7% | -11.2% | -14.0% | |
| [FUN] | シックス・フラッグ・エンターテイメント | 18 | 17.28 | 12.6% | -45.3% | -51.8% | |
| ライブ娯楽 | [LYV] | ライブ・ネーション・エンターテインメント | 419 | 177.92 | 24.9% | 17.9% | 83.7% |
| [SPHR] | スフィア・エンターテインメント | 49 | 138.25 | 45.4% | 197.4% | 260.4% | |
| [MSGE] | マディソン・スクエア・ガーデン・エンターテインメント | 37 | 78.18 | 45.1% | 91.8% | 129.3% | |
| ゲーム・玩具・趣味 | [HAS] | ハスブロ | 126 | 89.04 | 8.6% | 14.8% | 39.2% |
| [GME] | ゲームストップ | 97 | 21.6 | 7.6% | -11.0% | -2.6% | |
| [MAT] | マテル | 42 | 14.4 | -27.4% | -27.6% | -32.0% |
出所:ブルームバーグのデータをもとにマネックス証券作成。時価総額の小さな銘柄が含まれており、材料次第で株価が急変動するリスクがあるためご留意ください。
