先週(5月11日週)の動き:NY金は2週間ぶりの安値、JPX金は週間値幅が縮小
NY金は2週間ぶりの安値、レンジ下限の4,500ドルに
先週(5月11日週)のニューヨーク市場の金価格は週足で反落した。週末5月15日のNY金は大きく続落し、終値は4,561.9ドルと5月4日(4,533.3ドル)以来約2週間ぶりの安値となった。週足は前週末比168.8ドル(3.57%)の反落となる。レンジは4,513.8~4,758.4ドルで値幅は244.6ドルと、3週連続で200ドルをやや上回る水準が続いている。5月15日の取引時間中の安値は4,513.8ドルで終値同様に5月4日(4,510.1ドル)以来約2週間ぶりの安値水準だが、4月以降のNY金のレンジ(4,500~4,900ドル)の下限に近付いて終了となった。
停戦状態が続く中で週末にかけてホルムズ海峡を巡り米イラン間で再び交戦が意識されたことから原油価格が急伸し、NY金は週末にかけて売り優勢の流れが強まった。心理的な節目の4,500ドルが目先維持できるか否かがテクニカル上の注目点となる。
米中会談はイラン情勢の判断材料とならず
先週(5月11日週)は5月14~15日の日程で米中会談が開催され、いくつかの点で結果が注目された。総じて中国側の台湾政策を巡る強固な意思表示のみが前面に出て、その他は目立ったものがなかった印象が強い。
懸案となっている中東情勢については、トランプ米大統領は中国の習近平国家主席との会談で、ホルムズ海峡の再開に向けてイランに圧力をかけるよう要請しなかったと伝わった。各種関連報道から「要請できなかった」と読み替えてもよさそうだ。
結局、同海峡の通航正常化に向けた打開策は示されず、米国サイドは停戦協定を破棄し、再攻撃のプランも浮上しているとされる。再攻撃となると原油のさらなる高騰は避けられず、混乱の度合いは増す。
市場では米連邦準備制度理事会(FRB)による年内利下げ観測は消え、逆に市場が読む0.25%の利上げ確率が5月15日時点で49.5%まで上昇した。なお1週間前は13.3%だった(ロイター)。筆者は足元の状況を考えると再攻撃はない(できない)とみるが、最高司令官がトランプ米大統領だけに、何が起きても不思議ではない。
インフレ再燃懸念、米国債利回りすべての年限で上昇
結局、ホルムズ海峡の事実上の封鎖の長期化によるエネルギー供給の混乱から、先週(5月11日週)はインフレを加速させるとの見方がさらに強まった。
実際に先週5月12日に発表された米国4月の消費者物価指数(CPI)も、同5月13日発表の4月の生産者物価指数(PPI)も上昇が加速していた。CPIは前年比3.38%上昇で2023年5月以来の上昇率となり、PPIは同6.0%上昇で前月の4.3%から大きく加速し2022年12月以来の上昇率となった。
米国債の利回りは全年限で上昇し、5月15日の10年債利回りは一時4.607%と2025年5月以来約1年ぶりの水準に上昇。同30年債利回りも一時5.13%と約1年ぶりの水準に上昇した。インフレ懸念の再燃に加え、先週米国財務省が実施した10年債や30年債の入札が低調で、米国債需要に不透明感が生まれたことも、債券売りにつながり利回りを押し上げた。
主要国ともに利回りは上昇、産業用系貴金属に売り
先週(5月11日週)の特徴として米債利回りだけでなく、他の主要国の国債利回りも同時に上昇が加速したことがある(価格は急落)。
「財政の優等生」と表現されてきたドイツの10年債利回りは、先週末5月15日の終値ベースで3.17%と2011年以来15年ぶりの高水準を記録している。政局が混迷し財政への影響が懸念されたことで英10年債は一時5.199%まで上昇(価格は下落)し5.182%で終了した。利回りは2008年以来の高水準となる。
日本国債も同様に5月15日は一時2.734%まで上昇し1996年10月以来の高水準を付けた。各国ともに今後財政負担が上昇する可能性が高いことを意味する。
10年債利回りは、それぞれの国の長期金利の指標でもあり、コスト水準の上昇は景気を冷やすことから、5月15日の市場では金(ゴールド)のみならず、銀やプラチナ、パラジウムという産業用系貴金属の下げも一気に拡大した(各国利回りはダウ・ジョーンズ)。
JPX金は週間値幅が急速に縮小
こうした中で国内金価格も先週(5月11日週)は下値追いとなった。大阪取引所の金先物価格(JPX金)の週足は、NY金と同様に反落した。5月15日の終値は2万4013円で、週足は前週末比616円(2.5%)安の反落となった。終値としては5月1日の2万3891円以来の安値となる。レンジは2万3990~2万4933円で値幅は943円と、年始1月5日週以来の1000以下となった。
今週(5月18日週)の動き:ウォーシュFRB新議長就任で発言内容とFOMC議事要旨に注目、NY金4,500ドル割れは新規買いのゾーン
今週(5月18日週)も基本的にはイラン情勢を横にらみしながらも、動きが大きくなっている債券市場の動きからも目が離せなくなりそうだ。米国債については、先週(5月11日週)はすべての年限で利回りの上昇が見られた。特に指標となる10年債利回りの上昇が、金市場ではファンドの売りを促すことになった。
5月13日、上院本会議にてケビン・ウォーシュ氏のFRB新議長就任が承認された。今週(5月18日週)は宣誓式に臨み、正式に着任する見通しとなっている。ここまで発言を控えてきたとみられるウォーシュ新議長がどのような発言をするのかにも注目したい。債券市場の動きが活発化しているタイミングでもあり、金価格への影響も大きくなりそうだ。
FOMC議事要旨、インフレ警戒高まるか
FRB関連では、5月20日に4月28~29日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公表される。FRBの内部ではFOMC声明から緩和バイアスを取り除き、次の一手が利下げと利上げのいずれにもなり得ることを示唆する中立的な文言に切り替えるべきとするメンバーが増えているとみられている。
実際に4月の会合では、3名が緩和バイアスの維持に反対し、反対票を投じた経緯がある。地区連邦準備銀行の総裁を中心に、雇用よりもインフレ抑制を前面に掲げるメンバーが増えている可能性があり、その動向は市場の利上げ観測をさらに押し上げる可能性もありそうだ。
下値に中銀の買い、下振れリスクは米国による対イラン攻撃再開
NY金は前述したように4月以降の4,500~4,900ドルのレンジ下限まで売られており、押し目買いの入りやすい水準とも言えるだろう。というのも、直近で発表された新興国中央銀行の保有推移のデータからは、4,500ドル割れの水準で買いが入ったと思われる動きがみられる。直近の中国関連のデータでは、輸入量の増加もみられており、投資需要は堅調に推移しているとみられる。
本日5月18日午前の時点までに、NY金は一時4,500ドル割れを見ているが、4,400ドル台は積極的に買いが入る水準とみている。仮に米国がイラン再攻撃を再開した場合には、4,400ドル割れを試す局面も考えられるので、これが下振れリスクと言える。状況からは本格的な再攻撃はしないと思われる。
