先週(5月25日週)の動き:NY金は2ヶ月ぶり安値から4,600ドル近辺へ、国内金価格も底打ちの兆し

先週(5月25日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は週足で反発した。引き続き米国とイランの間で、イラン核問題やホルムズ海峡の封鎖解除を巡り、両国の意向が対立し、楽観と悲観・警戒のバランスが変化する中で、価格の上下への振れが続いた。原油価格の高止まりを背景とした根強いインフレ懸念が、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げへの政策転換を意識させ、基調的に弱気センチメントを広げた。

NY金 2ヶ月ぶり安値から反発

先週(5月25日週)はメモリアルデーの祝日の関係で4営業日となった。また、NYコメックスでは中心となる取引(中心限月)が2026年6月物から同8月物に切り替わるタイミングでもあった。不安定なイラン情勢の中で、最終取引日を控えファンドの手じまい売りも見られたことから、5月28日には一時4,395.6ドルと約2ヶ月ぶりの安値水準まで売り込まれた。その後、米国とイランが停戦期間を60日間延長し、核問題に関する協議の開始などを盛り込んだ暫定合意に達したと伝えられた。また、バンス米副大統領やベッセント米財務長官も両国の合意が近いとの見方を示したことから、原油と米長期金利が低下する中でNY金は買われ、下げ幅を縮小しプラス圏に浮上した。

そのような中で米東部時間5月29日午前にはトランプ米大統領が、自身のSNSにイランとの戦闘終結に向けた合意について最終判断を下すとして「今から(ホワイトハウスの)シチュエーションルーム(作戦指令室)で会議を行う」と投稿した。

アジア時間からロンドン、さらにNY早朝と前日に切り上げた4,500ドル台前半の水準を維持して推移していたNY金は、この書き込みに反応した。4,550ドルを上抜くとそのまま4,600ドル台に乗せ、一時4,627.1ドルまで買われ、これが高値となった。4,600ドル前後の水準を維持し、5月29日は前日比60.6ドル高の4,593.0ドルで終了した。

ただし、その後の時間帯に米紙ニューヨーク・タイムズが「シチュエーションルームでの会合は約2時間の協議の末、トランプ米大統領が何ら決定を下さず終了した」と報じたことから、やや売りが優勢となり、時間外取引は4,569.9ドルで週末の取引を終了した。

NY金、月足3ヶ月続落

こうして先週(5月25日週)のNY金の週足は、前週末比69.8ドル(1.54%)高の反発となった。レンジは4,395.6~4,627.1ドルで値幅は231.5ドルと、前週の138.2ドルから100ドル近く拡大した。

5月は月間ベースではほぼ横ばいながら前月比36ドル(0.78%)安となり、3ヶ月続落となった。イラン情勢を巡る停戦合意見通しの変化が、原油価格を通じてインフレ懸念を高め、さらにFRBの政策見通しにも影響しNY金の上下動につながっている。

振れ幅拡大の国内金価格

こうした中で国内金価格も上下の振れ幅が大きくなった。大阪取引所の金先物価格(JPX金)は5月28日に一時2万2969円と、3月25日以来約2ヶ月ぶりに2万3000円割れを見て、これが週足の安値となった。

NY金は前述のように5月29日のNY時間午後に週足の高値を付けたが、時差の関係で先週のJPX金には反映されていない。5月29日の日中取引の終値は2万3787円となった。週足は前週末比62円(0.26%)安とほぼ横ばいながら3週続落となった。レンジは2万2969~2万4120円で値幅は1151円と前週の771円から大きく拡大した。

FRB高官発言、原油高騰の受け止め方に温度差

ケビン・ウォーシュ新議長が宣誓式を終え正式に就任した。同氏はFRB改革に着手することを表明している。同議長の下での最初の米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる6月17~18日に向け、メンバーの発言内容が引き続き注目される。

クックFRB理事、リスクはインフレ

5月27日はスタンフォード大学で開催されたAIに関する政策フォーラムで、クックFRB理事が講演し、「当面、政策金利を据え置くべきだと考えている」と述べた。その上で、「関税やイラン戦争、AI関連投資の急増が物価を押し上げているため、必要であれば利上げを行う用意がある」と発言した。

また、インフレ率が5年間もFRBの目標である2%を上回っていることで、それが価格や賃金決定行動にさらに根強く影響を与えるとの懸念も表明した。表現を替えるならインフレ期待を注視しているということになる。「リスクは依然としてインフレ率上昇に傾いている」とし、「インフレ鈍化が適時に実現しない場合は、利上げも辞さない構えだ」と述べている。

ボウマンFRB副議長 エネルギー価格への過剰反応を戒め

5月29日はボウマン副議長(銀行監督担当)が、アイスランド・レイキャビクでのイベントで講演した。イラン戦争を踏まえ「エネルギー価格の上昇で一時的に高まったインフレに対応してしまうと、根拠の乏しい引き締めを加え、経済活動や労働市場の環境を不必要に圧迫することになる」と述べている。イラン戦争の影響を判断するのは時期尚早だとし、「FRBとしては一時的な価格ショックを過度に重視すべきではない」としている。

一方、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は5月29日FOXビジネスとのインタビューで、金利政策は適切な位置にあり、経済については「慎重ながらも楽観視している」と述べた。政策を「調整する差し迫った必要性はない」とも発言している。

見解は異なるが、両者とも戦争がいつ終結するのか、そして原油価格がどう推移するかを注視しているという点は共通している。

今週(6月1日週)の動き:イラン情勢が最大注目事項、FRB高官発言と米雇用統計など重要指標に注目

イラン情勢が最大注目事項

今週(6月1日週)はまずイラン情勢に注目が集まる。先週来、米国とイラン間の交渉が活発に行われているようだが、トランプ米大統領以外にバンス副大統領やベッセント財務長官などの発言が伝えられており、何らかの合意の可能性がありそうだ。

週末5月30日に米ニュースサイト、アクシオスが報じたところでは、トランプ米大統領が5月29日の会議で、覚書の草案について複数の修正を求めたと伝えた。高濃縮ウランの米国への引き渡し方法や時期に関し、より具体的な詳細を盛り込むよう求めたという。トランプ氏は、ホルムズ海峡再開を巡る表現も一部修正したい意向を示したとされる。ブルームバーグは5月31日、それに対しイラン側も修正案を検討中とイランの準国営タスニム通信の報道を交えて報じている。

60日間の停戦延長については株式市場を中心に相応の織り込みが進んでいるとみられるが、金市場は比較的織り込みが進んでいないことから、成立すれば、値動きは大きくなりそうだ。前回は、内外の金価格が売り込まれている水準を新規買いのゾーンと記したが、反発の動きが出始めていると捉えている。

ブラックアウト期間入りを前にFRB高官発言に注目

6月17~18日に予定されているFOMCを前に、今週(6月1日週)も数名のFRB高官の発言機会が予定されている。6月6日以降はブラックアウト期間(金融政策に関連する発言を自粛する期間)に入ることから、新議長のFOMCデビューを控え、各高官が見通しをどう述べるか興味深い。新議長が、声明文から政策の方向性を示す文言を削除することを唱えているためだ。

ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁、クリーブランド地区連銀のハマック総裁、ダラス地区連銀のローガン総裁、サンフランシスコ地区連銀のデーリー総裁、リッチモンド地区連銀のバーキン総裁の発言機会が予定されている。

FOMCを巡っては6月3日に地区連銀経済報告(ベージュブック)の公表も予定されている。

米5月雇用統計など目白押し

今週(6月1日週)は月初の重要週である。米国関連の指標では言うまでもなく、6月5日の米5月の雇用統計をはじめ、ISM製造業・非製造業景況指数などが注目指標となる。