家族のかたちが多様化している昨今、今回はおひとりさまの終活について考えてみたいと思います。

ここで言う「おひとりさま」とは、日常的に頼れる配偶者や子、兄弟姉妹、甥姪などの家族・親戚や知人がいないため、将来、心身の衰えによって自分ではできなくなる手続きや、死後に発生する手続きを頼める人がいない人を指します。

手続きを頼みたい子どもや家族、親戚、知人がいても遠方や海外在住の場合、あるいは高齢や病気のため手続きなどを頼むことが難しい場合もあるでしょう。そういった意味でも、自身を「おひとりさま」だと感じている人は多くいらっしゃるのではないでしょうか。

高齢のおひとりさまが抱える心配事とは?

高齢のおひとりさまが抱える心配事は、多肢にわたります。病気やケガをした時に誰に助けてもらうか、自分が亡くなった後に自分の財産やペットはどうなるのか。ほかにも、お墓に埋葬してくれる人がいない、認知症になったらどうやって生活していけばいいのかわからない、何か始めなくてはと思っても実際何から手を付けたらよいかわからないといった声もよく耳にします。

このような心配事を整理しながら、ひとつひとつ対応策を検討・実行し、自分自身が安心して生活が送れるようにしていくことが「終活」です。

終活の流れ5ステップ

1)自分名義の資産等を把握・整理し、検討する

最初に行うことは、自分名義の資産等(不動産・預貯金・有価証券・デジタル遺産・所持品等)を把握・整理することです。整理が終わったら、死後に資産等を渡したい相手がいるか検討します。

2)今後の生活や自分の死後についての希望を考える

自宅で住み続けるのか、それとも施設に入居するのか。葬儀やお墓(契約済ならその内容)はどのようなものにしたいか。自分が望む医療や介護の内容などについて考えます。

3)心配事を書き出して把握する

1と2以外にも心配事を書き出して整理しましょう。「エンディングノート」などを活用すると、記入すべき項目があらかじめ網羅されているので、取り掛かりやすいかと思います。

4)対策を検討し、実行する

1~3の心配事を解消し、将来の希望をかなえるための対策を考えて、すぐに行動に移せるものは実行します。自分だけでは解決が難しいものは、支援センターなどの利用も検討します。具体例は次の項で紹介します。

5)実行した対策をエンディングノートなどに書き、保管

エンディングノートなどを書いたら、自身の生活空間の目につく場所に置いておきましょう。また、周囲に頼れる人がいる場合は、伝えておくことをおすすめします。

自分が行った対策を知ってもらうことは、自分の判断能力が不十分になった後や亡くなった後に行ってもらう必要がある手続きがスムーズに進むようにするために重要なことです。例えば、自身で葬儀社と葬儀内容などを相談し、契約をしていても、いざという時に葬儀を行う人がその事実を知らなければ、契約相手の葬儀社に連絡することができません。必要な情報がしっかりと伝わるように準備しましょう。

将来の希望をかなえるために、終活「実践リスト」

前項4)の「心配事を取り除き将来の希望をかなえるための対策」についていくつか解説します。

今後の生活の安心のための5つの対策

1)日常生活の支援・見守りを依頼する

買い物・通院・ゴミ出し・食事等の日常生活を自身で維持することが難しくなった場合、役所や地域包括支援センター等の行政機関に相談可能かを確認しましょう。支援サービスを受けることで、自身の状況を周囲に知ってもらえるので、孤独死の防止につながるという点でも安心できます。

介護認定を受けると、介護保険サービスの一環として支援を受けることができます。連絡先などを調べておくとよいでしょう。

2)身元保証人や身元引受人を決める

頼れる人が居ない場合は、病気やけがでの入院、施設入居の際に身元保証人や医療同意者となる人、または事業者と契約しておくことができます。

3)任意後見契約を結ぶ

任意後見制度は、契約によって、将来自分の判断能力が不十分になった場合に「自分を支援してくれる人」をあらかじめ自分で選んでおくことができる制度です。支援の内容も契約によって定められます。

この制度は、判断能力があるうちに契約しておかなければ利用できません。任意後見契約を結んでいない人が、判断能力が不十分になった後に利用できる後見制度は、「支援してくれる人」を家庭裁判所が選ぶ法定後見制度のみとなります。

4)財産管理等委任契約を結ぶ

財産管理等委任契約とは、判断能力にはまだ問題はないが、足腰の衰えなどにより金融機関などに足を運ぶのが難しくなった場合に備え、財産管理だけを委任できる契約です。

5)民事信託制度を使う

財産の所有者が、信頼できる相手に財産の管理・運用・処分を任せる制度です。賃貸マンションや駐車場などの収益物件や、株式などの財産の管理を受託者に託すなどの利用方法があります。 

自分が亡くなった後に備える5つの対策

1)遺言を作成しておく

遺言が無い場合、亡くなった人の財産は、民法で定められた法定相続人に法定相続割合で相続されます。法定相続人がいない場合、最終的には国庫に入ることになります。

遺言を作成することで、法定相続人以外の人や団体に財産を渡したり、法定相続割合とは異なる割合で相続人に財産を相続させたりすることができます。遺言の文中で遺言執行者(遺言の内容を実行する人)を指定しておけば、遺言執行者が亡くなった人名義の預貯金等の解約や不動産の名義変更手続きを行うことができます。

2)葬儀の生前契約をしておく

自分の希望する葬儀の内容で業者と契約しておくことができます。身寄りがない人が亡くなった場合、葬儀等は行われず、自治体が火葬などのみを行う場合が多いようです。

3)納骨先と契約しておく

おひとり様の場合、永代供養墓や共同墓、散骨などを検討する場合が多いようです。

4)死後事務委任契約を結んでおく

死後事務委任契約は、自分が亡くなった後の手続きを契約によって委任するものです。

死後事務として契約できる委任内容の例としては、死亡届の提出や社会保険(公的年金、医療保険、介護保険など)関係の手続き、電気・ガス・水道など公共サービスの解約、電話・携帯電話の解約、クレジットカードの支払いや解約、家財道具などの遺品整理、デジタル遺品の処分などがあります。

一部の自治体や社会福祉協議会では、一定条件を満たす高齢者との間で、見守り契約や死後事務委任契約を結ぶ取り組みも行われています。また、民間の「高齢者終身サポートサービス」事業者が、身元保証人サービスや身元引受人サービスなどと共に死後事務を引き受ける契約を行っている場合もあります。

自分が亡くなった後では、依頼した死後事務がしっかりと行われたかをチェックすることができないため、代わりにチェックを行う第三者がいる事業者と契約するとよいでしょう。

また、契約に含まれるサービス内容をよく確認した上で契約することが必要です。利用を希望する人が事業者を選びやすくするために、「優良事業者の認証」を行っている自治体もあるようです。 

5)ペットの引き取り先を決めておく

負担付き遺贈・負担付き死因贈与契約・ペット信託・老犬ホームの利用などの方法があります。

終活は、自分自身の生活を守るという側面もある一方で、自分の希望をかなえる積極的な活動という側面もあります。自分らしい最期を迎えられるよう、しっかり準備して憂いなく人生を過ごしましょう。