AIサーバーの高性能化で高まる「水晶デバイス」の重要性
AI(人工知能)サーバー、データセンターの高性能化とともに、水晶デバイスへの注目度が急速に高まっている。
その背景には、AIサーバー内で、高速かつ長距離のデータ伝送を実現する光トランシーバの通信速度が向上するにつれて、水晶部品で信号の揺らぎを抑えることが重要になっていることがある。光トランシーバとは電気信号と光信号を相互に変換するデバイスのことで、高速通信ネットワークを支える重要な役割を担う。
水晶デバイスはデータ通信において、非常に重要な役割を果たす。例えば「差動出力水晶発振器(SPXO)」は、信号を安定して生成するために用いられ、高速かつ正確なデータ伝送が可能になる。
半導体が「産業のコメ」なら水晶デバイスは「産業の塩」
水晶デバイスとは、水晶の圧電効果を利用して非常に安定した周波数や時間基準を生み出す電子部品の総称である。宝石に使われるのは天然の水晶だが、水晶デバイスは人工水晶から作られている。水晶は結晶構造が非常に規則正しく、硬くて変形しにくいなどの特性があり、振動の速さや周波数を一定にできる理由となっている。
電波時計やスマホ、家電など、ほぼすべての電子機器に使われている。半導体がデジタル時代における「産業のコメ」といわれるのに対し、水晶デバイスは「産業の塩」と呼ばれている。水晶デバイスには水晶だけで構成される受動部品である水晶振動子、電源を入れると自動で発振する水晶発振器、特定周波数だけを通すフィルタとして使われる水晶フィルタなどがある。
省電力・高精度化で広がる次世代サーバーへの活用
水晶デバイスには、安定した周波数を維持する役割や、規則正しい基準信号を作り出す役割がある。5G通信、自動運転、医療、ヘルスケア用途にも広がっている。そして、ここにきて省電力・高精度化が進み、次世代通信やサーバー向けにも不可欠なデバイスとして活用範囲がさらに広がっている。
基地局やネットワーク機器では、温度変動による周波数のズレが通信機器に影響を及ぼすため、安定した基準クロック(周波数)が求められる。また、AIによる処理データの増加に伴い、データセンター内部の発熱も大きくなっている。こうした背景から、高温環境での安定性、高精度、小型化を同時に満たす発振器の需要が高まっている。
高速通信のノイズを防ぐ「差動出力水晶発振器(SPXO)」
特に高速伝送が求められる中では、「差動出力水晶発振器(SPXO)」が注目されている。
一般的には、水晶発振器の出力形式として、「シングルエンド出力」が知られている。汎用用途では十分だが、高速用途に用いると誤認識が発生しやすいという。
一方、微小な信号の誤認識を防ぐには差動信号が有効である。差動信号は、1つの発振器から位相が反転した逆相の波形が出力される点が特徴で、差動出力水晶発振器はノイズの影響を受けても打ち消し合い、ノイズが少ない信号として受け取ることができるという。差動出力とすることでノイズの影響を防止できる。
水晶デバイス関連の注目5銘柄
日本電波工業(6779)
電波の送受信に欠かせない水晶デバイスの世界大手。世界ナンバーワンレベルの高純度人工水晶育成で優位性。2026年2月にAIデータセンター向けに世界最高レベルの差動出力水晶発振器を開発したと発表している。AIデータセンター向け光トランシーバ(800Gbps/1.6Tbps)に対応している。
大真空(6962)
水晶デバイス総合大手。人工水晶からの一貫生産に強みがある。民生用振動子などで国内首位級。光ネットワーク機器の小型化貢献やICパッケージ内蔵の水晶デバイス「Arkh」シリーズに注力している。2026年4月、AIサーバー向けに期待されるArkh振動子を内蔵した625MHz対応の差動出力水晶発振器の開発を発表。
リバーエレテック(6666)
水晶振動子、水晶発振器を軸に電子部品を製造・販売。2025年12月にAIデータセンター向けに、次世代高速通信に不可欠な超低位相ノイズ・低ジッタ(波形の揺らぎが小さい)水晶発振器「KCRO―05」を開発したと発表している。生成AIの進化に伴い、データセンター内の通信トラフィックが爆発的に増加しており、先端光トランシーバなどの超高速通信では、ビットエラーレート低減のため、超低ジッタクロックが必要。量産化に向けた体制も整備するという。
セイコーエプソン(6724)
インクジェットプリンタの世界最大手。2009年に水晶部品のエプソトヨコムを完全子会社化。2026年3月に発表した中期経営計画ではAIデータセンター向け水晶デバイスを含む精密部品事業に注力する姿勢を示している。精密部品「プレシジョンイノベーション」の売上高を今期予想に比べて26%増の2100億円を目標としている。中計の資料によれば、同社はAIサーバー、データセンター向けの高精度発振器で約5割の世界シェアを持つ。
村田製作所(6981)
電子部品大手。積層セラミックコンデンサで世界首位。2013年に水晶振動子や人工水晶の製造販売を展開する東京電波(現岩手村田製作所)を完全子会社化。独自の水晶素材と加工技術をもとに、高付加価値な水晶デバイスの製造を行う。シナジー効果で製品ラインナップの充実を図っている。水晶原石の生産、設計、生産、世界での販売までを一貫して手掛けている。
