豪ドル/米ドルは2025年11月の0.64米ドル台から2026年5月前半には0.72米ドル台まで800pips近くの急騰を演じた「2026年前半の勝ち組通貨」でした。しかし、5月半ばからは下落に転じています。特に6月に入ってからは介入警戒が再燃するほど売られている円よりも弱く、豪ドル/円の下落も顕著となってきました。
RBA(豪州準備銀行)は2026年に3度の利上げを実施
RBA(豪州準備銀行)は2026年、2月・3月・5月と3会合連続で利上げを実施し、政策金利を3.60%から4.35%へ段階的に引き上げました。この2026年の3度の利上げにより、2025年中に行われた3度の利下げ分のほぼ全てを巻き戻した計算です。
利上げの理由は明快で、2月会合では「家計の支出と借り入れが依然強く、インフレを長引かせている」とし、住宅価格の上昇・貸出増・信用アクセスの緩みが追加的なインフレ圧力になっていると理事会が指摘。トリム平均インフレ率の予想を3.2%から3.7%(2026年6月時点)へ上方修正しました。
3月CPI(消費者物価指数)は前年比4.6%と2月の3.7%から急加速。イラン戦争に伴う原油急騰で自動車燃料価格が跳ね上がったことが背景です。先進国では先手を打って利上げに転じたことで、豪ドルは買われてきました。
利上げによる景気減速、変調する経済指標
ところが、3度の利上げによる引き締めは豪州経済に影を落としました。豪州の2026年1~3月期の実質GDPは前期比+0.3%と、前期の+0.9%から急減速。一人当たりGDPは前期比マイナス0.1%に転落しました。裁量的支出(外食・娯楽など)の弱さが鮮明で、家計にダイレクトに影響が出ています。
また4月の豪雇用者数は1万8600人減と、市場予想に反して減少に転じました。3月には1万7900人増で就業者数の総数は過去最高を更新していましたが、急速に変調を来しています。
利上げを正当化してきたインフレですが、4月の月次CPIが前年比4.2%と3月の4.5%(改定値)から減速。6月の消費者信頼感は前月の上昇から再び低下し、2026年に入ってから4度目の悪化と、このところの豪州の経済指標は弱いものが目立ちます。
6月RBA会合は据え置き予想
RBAの次回会合は6月15~16日。市場は政策金利の据え置きを予想しています。2月・3月・5月と続いた3会合連続の利上げは、いったん休止される見込みです。さらなる利上げ期待の後退に加えて、豪ドルには株式市場の下落という逆風もあります。
豪ドルは「リスク通貨」として取引される性格を持ちます。豊富な資源の輸出国であり、世界景気・商品市況への感応度が主要通貨の中で突出して高いため、株式市場と豪ドルの相関は強いとされています。株が上昇するリスクオン相場では豪ドルの物色が広がりますが、リスクオフ局面では投資家は米ドルへ逃避し、豪ドルは大きく下落する傾向があります。
米国では雇用統計やCPIの強さから年内利上げ観測が台頭し、AI相場の過熱懸念などから半導体セクター中心に株式市場の下落警戒が強まっています。リスクオフ相場が本格化すれば豪ドル下落が加速する可能性が高く、注意が必要な局面ですね。
