驚異的な進化を見せるヒト型ロボットの世界
今から1ヶ月ほど前の4月初旬、中国から驚きのニュースが飛び込んできました。
北京で開催されたハーフマラソン大会で、ヒト型ロボットが50分26秒というタイムで完走し、人間の世界記録(57分20秒)を7分以上も更新するという衝撃的な結果を打ち立てたというものです。前年にも同じレースが開催されており、その時の優勝タイムは2時間40分でした。それと比較するとわずか1年で中国のヒト型ロボットは劇的な進化を遂げたことになります。
このニュースもひとつのきっかけとなってロボットの世界、「フィジカルAI」にあらためて注目する動きが広がっています。
生成AIから「フィジカルAI」へ。自律的に動く新たな知能
「フィジカルAI」は、AIロボティクス、ヒューマノイド、ヒト型ロボットなど様々な表現が用いられます。人工知能のひとつの形態で、現実の物理的な空間(=フィジカル)を認識し、理解して、AIが自律的に働きかける機能を指しています。
「ChatGPT」に代表される大規模言語モデル(LLM)などの従来の生成AIが、テキストや画像などの「デジタルの情報」を創り出すことに特化しているのに対して、フィジカルAIはソフト(知能)とハード(身体)を融合させる点に大きな違いがあります。
カメラやセンサーを通じて周囲の状況をリアルタイムで把握し、物理法則を理解する力を持っています。それらを用いた「世界モデル」という概念が急速に広がりつつあります。
また、従来の産業用ロボットとは違って、あらかじめプログラムされた特定の動作を繰り返し行うものではありません。その時々の状況に合わせて、AIが「次に何をすべきか」を自ら考えて行動します。
モーターやアクチュエーターなどの駆動装置をAIが制御して、「動く」「運ぶ」「調理する」などの具体的なアクションも実際に可能になります。現実の世界にAIが物理的な変化をもたらすものです。
人手不足解消の鍵となるか、社会課題に挑むロボット技術
介護や溶接作業、物流の作業など、これまで人間が行ってきた高度な手作業をAIがロボットを通じて代替することが可能となります。危険な作業を回避し、人手不足を解消し、製造業の生産性を劇的に向上させることが期待され、フィジカルAIは現代社会の救世主となる可能性を秘めています。
かつてメタのAIチームを率い、この分野の世界的な権威であるヤン・ルカン氏は、「フィジカルAIが次の大きな波になる」と予想しています。
現状では米国と中国がヒト型ロボットの開発ではかなり先行していますが、日本が得意としてきたロボット技術(精密部品、センサー、制御技術)に最新のAIを組み合わせて、グローバルな競争力を取り戻す大きなチャンスを迎えています。フィジカルAIに関わるロボット関連企業をご紹介します。
日本の技術力が光る、注目のロボット関連企業4社
ファナック(6954)
産業用ロボットでは世界のトップ集団に属する。4月末に発表した2027年3月期の決算見通しで営業利益が2122億円(前年比+15%)に拡大すると発表。長年の経営戦略を転換して2025年末にオープンソース化に踏み切る。その効果が早くも表れて顧客層が拡大。これまで自動化を諦めていた工程にも、同社のAIロボットを使いたいと受注が相次いでいる模様。
安川電機(6506)
「ロボットの安川」。ファナックと並ぶ産業用ロボットの世界企業で、ミクロン単位で力をコントロールするサーボモーターでは世界首位。産業用ロボットも累積出荷台数は世界有数の規模を持つ。モーションコントロール技術では世界的リーダーであり、ACサーボドライブの「Σ(シグマ)シリーズ」は、産業用ロボットや工作機械など精密制御が必要な分野で高く評価されている。
ナブテスコ(6268)
油圧機器、産業用の精密減速機、鉄道車両用ブレーキなど精密機器メーカー。鉄道、航空、自動車、ロボット、建設機械、自動ドアなど、同社の精密機器が用いられる分野は広範囲に及ぶ。そのいずれの製品でも高いシェアを占めている。中でも産業用ロボットの関節として用いられる精密減速機は世界シェア6割を占める最大手。国内外に70以上の子会社を有し世界に向けてロボット用精密減速機を供給する。
ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)
高精度の減速機、および減速機とモーター、センサー、ドライバー、コントローラを組み合わせたメカトロニクスを手がける。中小型の精密減速機では世界トップシェア。半導体製造装置や自動車のエンジン向けに産業用ロボットも製造する。2026年2月に東証スタンダード市場からプライム市場に上場市場を変更。4月24日には前2026年3月期の業績見通しを、売上高で570億円→595億円、営業利益で15億円→25億円へと上方修正したばかり。
