先週(5月18日週)の動き:NY金は4,500ドル割れで買い拾われる動き、国内金価格も約2ヶ月ぶり安値から底打ちの兆し

NY金、4,500ドル割れで買い拾われる動き

先週(5月18日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は4,500ドルを挟んだレンジ相場に終始し、方向感に欠けた値動きが連日続いた。金市場ではイラン戦争の終結に向けた停戦合意の可能性や、ホルムズ海峡の実質的封鎖の長期化によるエネルギー価格高騰の影響を見極めようとする中で、上下いずれにも方向感の出ない展開が週を通して続いた。

こうした中で5月22日のNY金の終値は4,523.2ドルとなった。週足は前週末比38.7ドル(0.85%)安の続落となった。週を通して、連日4,500ドル以下に売り込まれたものの、終盤には持ち直して4,500ドル超で取引を終える展開が続いた。レンジは4,455.0~4,593.2ドルで値幅は138.2ドルと、4週間ぶりに100ドル台に収まった。安値圏で値幅が収れんしているとみることもできそうだ。

年内のFRB利上げ観測高まる

先週(5月18日週)の金市場で売り手掛かりとなったのは、前週(5月11日週)に浮上した米連邦準備制度理事会(FRB)による年内利下げ観測が大きく後退し、一方で、インフレ再燃への警戒を背景とした年内利上げ観測が、日を追うごとに高まったことだった。

4月以降ここまでFRBの政策方針については、イラン情勢の見通しに伴って上下動する原油価格の方向性が、インフレ見通しを通じて、市場の利下げ・利上げ見通しに反映され、金価格の方向に影響する流れが続いた。

ウォラーFRB理事のタカ派発言

FRBの政策方針については、ウォラーFRB理事が5月22日の講演で、「インフレ率がFRBの目標である2%に戻る兆候が明確になるまでは、現在の政策金利を維持する必要がある」と述べている(ロイター)。また、インフレ期待がうごめき始めた場合は、利上げを支持することを「ためらわない」と言明した。さらに、イラン戦争後にインフレが拡大し、より持続的になっていることに警戒感を表明し、近い将来の利下げを検討するのは「正気の沙汰ではない」としている。

ウォラー氏は年初の段階では、雇用への警戒から利下げを主張していた経緯がある。ただし直近では、連邦公開市場委員会(FOMC)の声明から「緩和バイアス」を削除し、利上げの可能性も示すべきとの見解を示していた。

湾岸諸国は停戦に向け米国に働きかけ

とはいえ、大勢としての流れは不安定な停戦状態が続くイラン戦争の行方に掛かっている。米国とイラン間ではパキスタンを仲介国として交渉が続いている。トランプ米大統領は「両国が和平合意に近づいている」と述べる一方で、イランへの大規模空爆を示唆するなど、強硬姿勢と融和姿勢の間で揺れている。

先週(5月18日週)はそうした中で新たな動きが見られた。イラン戦争についてカタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)が戦争終結に向けた働きかけを強めており、それぞれの首脳がトランプ米大統領と電話交渉を行ったと報じられた。5月19日に予定されていたイラン再攻撃を見送ったと、トランプ氏は自らのSNSに書き込んだ。働きかけの背景には、戦闘が再開されイランが報復に出れば、湾岸諸国の経済が混乱に陥るとの各国の懸念があるとされる。

暫定的停戦期間で合意の方向か

この働きかけは支持率の低下など国内情勢上からもこれ以上の深入りを避けたいトランプ氏にとっても渡りに船ともいえ、戦争終結に向けた話し合いを促すことになったとみられる。イラン側も戦争終結には同じ意向とされる。ただし、双方の核開発の中断・放棄を巡る主張には大きな隔たりがあり、合意が難しい状況にある。妥協案として戦争終結は難しいものの、まず30日あるいは60日など停戦合意を結んだ後にその期間に懸案事項の協議を行う案が浮上していると多くのメディアは伝えている。

5月23日には、イランとの戦闘終結に向けた合意が「まもなく発表される」との認識を示していたトランプ米大統領だが、米東部時間5月24日夜にSNS上で、「交渉は前進しておりイランとの関係はより専門的で生産的なものになった」と指摘しつつ、「『合意は急がず』と交渉団に指示した」と書き込んだ。

イラン情勢については、楽観見通しとその後退が繰り返されている。ただし、湾岸諸国や他の中東諸国で戦争収束に向けた意思が働き始めているようだ。5月22日にロイターが伝えたところでは、イランとの協議で交渉を仲介するパキスタンと米国間のやり取りは頻度を増しているようだ。一方でイスラエルの好戦的なスタンスに変化は見られていない。

国内金価格も約2ヶ月ぶり安値で底打ち方向

こうした中で国内金価格も先週(5月18日週)は、NY金と同様に安値圏で値動きが収れんする印象の週となった。大阪取引所の金先物価格(JPX金)の5月22日の終値は2万3849円で前週末比164円(0.68%)安の続落となった。5月20日の終値2万3446円と取引時間中の安値2万3403円はともに3月26日以来約2ヶ月ぶりの安値となった。

レンジは2万3403~2万4174円で値幅は771円となった。1月5日週以来18週間ぶりに1000円以下となった前週(5月11日週)の943円を、先週(5月18日週)はさらに下回ったことになる。

今週(5月25日週)の動き:米イラン間の交渉とともに米長期金利の動向、FRB高官発言と4月の米PCE価格指数に注目

米長期金利の動向に注目

今週(5月25日週)も引き続きイラン戦争を巡る停戦合意に向けた交渉の進展状況に関心が集まることになる。仮に両国が停戦協定に合意したとしても、ここまでのエネルギー供給遮断の影響がすでに出始めていること。さらに仮にホルムズ海峡が解放されたとしても、流通の正常化までには相応の時間が掛かることが避けられないと見られていることから、市場ではインフレへの警戒感が広がっている。

前述のとおり、市場はすでに年内のFRBの利上げをほぼ織り込みつつある。その流れは先週(5月18日週)、すべての年限の米国債売りに広がった。米10年債利回りは5月19日には一時4.690%と、2025年1月以来の高水準となった。また、同30年債利回りは一時5.199%と2007年以来19年ぶりの水準まで上昇した。主要国国債の利回りも同様に水準を切り上げた。

米国債の利回りの上昇はNY金にとっては売り要因ではあるものの、ここまでのFRBの年内利上げ観測の高まりを通し、「耐性」とでも言えるような織り込みが進んでいるとみられる。先週(5月18日週)も4,500ドル割れの水準では、押し目買いが見られている。

FRB高官発言と4月の米個人消費支出(PCE)価格指数に注目

FRBの政策方針という点で、今週(5月25日週)は多くのFRB高官の講演など発言機会が予定されている。5月28日(木)のニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁をはじめ、ジェファーソンFRB副議長、ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁などの発言に注目したい。

米国指標では5月28日に発表される4月の米個人消費支出(PCE)価格指数が注目される。前年同月比3.8%上昇となる見通し(ブルームバーグ)で、そうなれば2月時点から2ヶ月間の加速幅は2021年後半以来の大きさとなるとされる。米長期金利の押し上げ要因になるとみられるが、それに対するNY金の反応は今後を見る上での手掛かり材料になりそうだ。

先週はFRBのタカ派傾斜を受けて水準を切り下げたNY金だが、2026年後半の秋以降を見据えると、米ドル建て(4,500ドル前後)・円建て(2万4000円前後)ともに新規買いゾーンに入っているとみている。