AI半導体株が牽引する、足元の「一極集中相場」

日経平均株価の上昇幅の約3割を占める2銘柄

足元の日経平均株価の上昇は、一部の銘柄による寄与が非常に大きくなっています。2025年末の日経平均株価は5万339円でしたが、2026年5月13日には6万3,272円まで上昇し、年初来では1万2,933円の上昇となりました。この上昇のうち、アドバンテスト(6857)は2,107円分の押し上げに寄与しており、日経平均の上昇幅全体の16.3%を占めています。また、東京エレクトロン(8035)も1,711円分の上昇寄与となり、その割合は13.2%に達しています。つまり、この2銘柄だけで日経平均株価の上昇幅の約3割を説明できる計算です。

この上昇の背景には、AI関連や半導体関連を中心とした一部の値がさ株の大幅な上昇があります。実際、日経平均株価の上昇幅のかなりの部分を、こうした限られた銘柄群が押し上げている状況です。

もちろん、株式市場全体でも幅広い銘柄が上昇しており、市場全体の動きを示すTOPIX(東証株価指数)も年初来で14.9%上昇しています。ただし、日経平均株価の上昇率25.7%と比べると、その伸びは相対的に緩やかです。これは、市場全体が一様に上昇しているというよりも、日経平均株価への影響が大きい一部の銘柄が相場を強く押し上げていることを示しています。

業績面で不透明感のある銘柄は選別される

一方で、すべての主力株がそろって上昇しているわけではありません。業績見通しが慎重な企業や、収益面で逆風を受けている企業の中には、株価が軟調に推移している銘柄も見られます。例えば、自動車やゲーム関連などの大型株の一部では、業績への懸念から株価が伸び悩むケースもあります。

つまり、足元の日本株市場では、AI関連や半導体関連のように成長期待の高い分野に資金が集中する一方で、業績面で不透明感のある銘柄は選別される展開となっています。

このように、日経平均株価が史上最高値圏にある一方で、その上昇の実態を見ると、ごく一部の銘柄が相場を強く牽引していることが分かります。まさに、AI半導体関連銘柄を中心とした「一極集中相場」の様相と言えます。

ITバブルとアベノミクスに学ぶ、一極集中相場の共通点と違い

これまでも我が国の株式市場は、「一極集中相場」と呼ばれる局面を幾度か経験してきました。今回は、2000年代以降に見られた代表的な一極集中相場を振り返りながら、足元の相場との共通点を確認し、今後の展開を考えていきましょう。

2000年「ITバブル相場」将来の技術革新への期待

一極集中相場の代表例としてまず挙げられるのが、2000年4月に日経平均株価が2万円の大台を回復した、いわゆるITバブル相場です(2000年4月12日に日経平均株価が2万833円まで上昇)。1999年末から2000年初めにかけては、インターネットの急速な普及により、社会や産業のあり方が大きく変わるとの期待が高まりました。企業活動のデジタル化や電子商取引(EC)の拡大、情報のネットワーク化が進むことで、従来のビジネスモデルが大きく変革されると考えられたのです。

当時は、「IT(情報技術)が新しい時代を切り開く」との期待から、情報・通信関連を中心に、半導体、電子部品、通信機器、インターネット関連サービスなどの銘柄に資金が集中しました。ソフトウエア、通信インフラ、ネット関連企業などが将来の成長産業として注目され、「利益はまだ小さくても、将来の市場拡大余地が大きい企業」に高い評価が与えられました。将来の技術革新への期待が株価を押し上げた相場だったと言えます。

2013年「アベノミクス相場」政策効果と日本再生ストーリー

もう1つの代表的な局面が、2013年前半のアベノミクス相場です。2012年12月に発足した第2次安倍晋三政権のもとで、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、成長戦略という「三本の矢」が打ち出されました。特に2013年4月には、日本銀行 による異次元の金融緩和が導入され、デフレ脱却と円安進行への期待が急速に高まりました。

この局面では、日本経済全体の回復期待が相場を押し上げましたが、とりわけ海外景気の回復や円安の恩恵を受けやすい一部の大型株に資金が集中しました。具体的には、自動車、電機、機械といった輸出関連企業や、大規模な金融緩和によって収益環境の改善が期待された金融株、不動産株などが市場を牽引しました。なかでも、時価総額が大きく、業績改善期待の強かった主力株の上昇が指数全体を押し上げる構図となりました。

つまり、アベノミクス相場は市場全体が上昇するなかでも、政策効果の恩恵を受けやすいとみられた特定の業種や大型株に資金が集中した局面であり、「日本再生」というストーリーのもとで、一部の主力銘柄が相場を主導した一極集中相場の一例と位置付けることができます。

日経平均株価は2013年5月22日に15,627円まで上昇し、当時としては約5年4ヶ月ぶりの高値を付けました。その後は、米国で 連邦準備制度理事会 による量的緩和の縮小観測が強まったことや、急ピッチな上昇に対する過熱感から、一時的に大きな調整局面を迎えました。

過去の相場と現在の「共通テーマ」は?

本稿では、このような代表的な一極集中相場と、その後の調整局面までを含めて、「2000年ITバブル相場」と「2013年アベノミクス相場」と呼ぶことにします。いずれの局面も、足元の相場と共通するテーマを持っています。現在のAI半導体関連への期待は、将来の技術革新が経済や企業業績を大きく変えるとの見方が株価を押し上げているという点で、2000年のITバブル相場と重なる部分があります。

また、高市早苗首相の経済政策に対する期待、いわゆる「サナエノミクス」への期待は、政策転換によって日本経済の成長が加速するとの見方が相場を押し上げるという点で、2013年のアベノミクス相場と共通する側面があると考えられます。

足元相場の分析、グロース株とバリュー株の両方に資金が向かう展開に

まずは、足元の相場について確認しましょう。意外なポイントは、AI半導体関連を中心としたグロース株主導の相場という印象が強いなかでも、低PBR株のパフォーマンスが堅調に推移していることです。

図表1は、TOPIX500構成銘柄(金融4業種を除く)を対象に、毎月末時点で各投資指標の水準に基づいて銘柄を順位付けし、最も魅力度が高いと判断される上位10%の銘柄に投資した場合の累積超過リターンを示したものです。TOPIX500は、時価総額と流動性の高い日本株の代表的な銘柄群であり、実際の投資対象としてイメージしやすい母集団です。ここでの超過リターンとは、同じ時点における対象銘柄全体の平均リターンを上回った部分を表しています。

【図表1】足元の投資指標の有効性:各指標の魅力度上位10%までの銘柄の平均累和超過リターン
注1:データ期間は2025年1月から2026年5月(2026年5月は11日現在)まで、データサイクルは月次
注2:母数はTOPIX500構成銘柄(但し、金融業として「銀行業」「証券、商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」に該当する銘柄は除く)
注3:毎月末時点で各指標の魅力が高い方から10%に該当する銘柄に等金額投資した場合の翌月のリターンを算出して、そこから対象となる月の母数全体に等金額投資した場合のリターンを引いた超過分を求めて2024年1月以降累和している
注4:トレンドを捉える趣旨で、前月までの値に当月のファクターリターンを累和している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

図表を見ると、最も大きく上昇しているのは、過去1年間の株価上昇率が高い銘柄群です。いわゆるモメンタム効果が強く働いており、株価の上昇が続いている銘柄にさらに資金が集まる展開となっていることが分かります。AI関連や半導体関連の一部銘柄が市場を牽引している足元の相場環境をよく表しているといえるでしょう。

一方で、低PBR株の累積超過リターンも右肩上がりで推移しています。東京証券取引所による資本効率改善の要請や、企業による自社株買い・増配など株主還元の強化を背景に、割安株を見直す動きが継続していることがうかがえます。

つまり、足元の日本株市場は、AI関連や半導体関連への期待を背景としたモメンタム相場であると同時に、低PBR株の評価見直しも続くという、グロース株とバリュー株の両方に資金が向かう展開となっています。表面的には一部の値がさ株が相場を牽引しているように見えますが、その背後では、企業の資本効率改善への期待を背景に、割安株にも着実に資金が流入していることが、足元の日本株市場の特徴と言えるでしょう。

「2000年ITバブル相場」の振り返り、極端な成長期待とその崩壊

同様に、「2000年ITバブル相場」と「2013年アベノミクス相場」をみてみましょう。まずは、「2000年ITバブル相場」です。

「IT革命」への熱狂と成長期待が織り込まれた上昇局面

1990年代後半から2000年にかけては、インターネットの普及と情報通信技術の急速な進展を背景に、「IT革命」が世界的なテーマとなりました。企業活動や消費行動のあり方が大きく変わり、生産性の飛躍的な向上や新たなビジネスモデルの誕生が期待されました。当時の株式市場では、ソフトウエア、通信、インターネット関連、電子部品、半導体などの企業に対して、将来の収益が大きく拡大するとの期待が急速に高まりました。

図表2の通り、この局面ではPBRやPERといった伝統的なバリュエーション指標の効果はほとんど確認できません。株価が割安かどうかよりも、「将来どれだけ大きく成長するか」が重視される相場であったことが分かります。現在のAI関連株に対する市場の見方と重なる部分が多いと言えるでしょう。

【図表2】「2000年ITバブル相場」の投資指標の有効性:各指標の魅力度上位10%までの銘柄の平均累和超過リターン
注1:データ期間は1999年1月から2000年12月まで、データサイクルは月次
注2:母数はTOPIX500構成銘柄(但し、金融業として「銀行業」「証券、商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」に該当する銘柄は除く)
注3:毎月末時点で各指標の魅力が高い方から10%に該当する銘柄に等金額投資した場合の翌月のリターンを算出して、そこから対象となる月の母数全体に等金額投資した場合のリターンを引いた超過分を求めて1999年1月以降累和している
注4:トレンドを捉える趣旨で、前月までの値に当月のファクターリターンを累和している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

一方で、ROEに着目した銘柄群のパフォーマンスは大きく上昇しました。ただし、これは現在のように資本効率の改善や株主価値の向上が評価されたというよりも、高い収益性を持つIT関連企業に対して、「今後も極めて高い成長が続く」との期待が強く織り込まれた結果と考えられます。つまり、ROEそのものが評価されたというより、高ROE企業が高成長企業の象徴として買われていたとみることができます。

さらに、この局面では過去1年間の株価上昇率が高い銘柄のパフォーマンスも大きく伸びており、典型的なモメンタム相場となっていました。値上がりしている銘柄に資金が集中し、その上昇がさらに新たな買いを呼び込むという循環が形成されていたのです。

成長見通しの不透明感によるバブル崩壊と、バリュー株への回帰

しかし、2000年3月をピークにITバブルは崩壊します。最大の要因は、IT関連企業の将来業績に対する見通しが急速に不透明になったことでした。当時は、インターネットの普及によって企業収益が長期にわたり高成長を続けるとの期待が広がっていましたが、その多くは新しいビジネスモデルであり、実際にどの程度の利益を安定的に生み出せるのかについて十分な実績がありませんでした。

こうしたなか、2000年3月14日付の米紙 The Wall Street Journalには、著名なファイナンス学者である Jeremy Siegel 氏による「Big-Cap Tech Stocks Are a Sucker Bet(大型ハイテク株は割に合わない投資だ)」と題する寄稿が掲載されました。この記事では、技術革新そのものは本物であっても、それが自動的に株主価値の増加を意味するわけではないと指摘され、当時の大型ハイテク株に対する過度な期待に警鐘を鳴らしました。

このように、「IT革命」という大きな潮流そのものは否定されなかったものの、「IT企業の利益が市場の期待どおり急拡大するのか」という点に対する疑問が広がり始めました。将来の業績予想に対するわずかな不安の高まりが、それまで膨らんでいた成長期待を一気にしぼませ、株価の急落につながったのです。日本市場でも同様に、それまで高い評価を受けていたIT関連株が大きく売られ、ITバブルは急速に収束へ向かいました。

その結果、それまで有効であったROEやモメンタムの効果は急速に低下し、逆に低PBR銘柄の相対的な優位性が徐々に高まっていきました。将来の成長期待が剥落すると、市場の関心は再び企業の実態価値や割安さへと移っていったのです。

このように、「2000年ITバブル相場」は、成長期待が極端に重視されることで伝統的な割安指標が機能しにくくなり、高ROEやモメンタムが強い効果を示した局面でした。そして、その期待が揺らいだ瞬間に相場の主役が入れ替わり、バリュー株が見直される展開へと転換しました。現在のAI関連を中心とした相場を考えるうえでも、当時の経験は示唆に富むものです。

現在とITバブル期の決定的な違いとは?

しかし、筆者が今回の相場で最も重要な違いと考えているのは、AI関連や半導体関連への強い期待が相場を牽引する一方で、その背後では低PBR銘柄への資金流入が着実に続いていることです。

「未来への期待」と「現実的な企業評価」が両立

図表1でも示した通り、足元では低PBR銘柄の累積超過リターンが明確な右肩上がりとなっており、割安株への評価見直しが継続しています。これは2000年ITバブル相場との決定的な違いとい言えます。当時は、「将来どれだけ大きく成長するか」という期待が極端に重視され、PBRやPERといった企業価値の尺度はほとんど意識されませんでした。株価の評価軸は成長期待に大きく偏り、企業の実態価値や資本効率は後景に退いていたのです。

一方、現在の日本株市場では、AI関連への期待によって一部の銘柄に資金が集中しているものの、それと並行して低PBR銘柄も堅調に推移しています。これは、投資家が期待だけで株価を押し上げているのではなく、企業の資本効率や株主還元、企業価値の改善可能性といったファンダメンタルズにも着目していることを示しています。

言い換えれば、足元の相場には確かに「未来への期待」が織り込まれていますが、その一方で「企業価値」もしっかりと評価されています。市場全体として、成長期待とバリュエーションの両方を意識した、より冷静で現実的な投資判断が行われていると考えられます。

この点こそが、筆者が現在の相場に対してポジティブに見ている最大の理由です。2000年のITバブル相場では、成長期待が揺らいだ瞬間に相場全体が大きく崩れました。しかし現在は、AI関連の成長期待に加えて、低PBR銘柄の見直しというもう一つの投資の柱が存在しています。市場の評価が特定のテーマに完全に依存しているわけではなく、企業価値に基づく投資資金の流れが底流として存在していることは、現在の相場の重要な特徴であり、相場の持続性を考えるうえでも注目すべきポイントといえます。

予想PERから見る「冷静さ」

また、もう一つ重要なポイントは、当時と比べて足元では予想PERの水準そのものが大きく異なっていることです。

図表3を見ると、2000年3月の予想PERの平均値は50倍に達していたのに対し、2025年5月の平均値は16倍にとどまっています。ITバブル期には、将来の利益成長に対する期待が極端に高まり、一部の銘柄に非常に高いバリュエーションが集中していました。

【図表3】 2000年ITバブル相場と足元の予想PER分布の比較 ― 現在の日本株市場はバリュエーションの過熱が限定的
注1: 左図は2000年3月末、右図は2025年5月11日時点のTOPIX500構成銘柄(金融4業種を除く)を対象に、予想PER(QUICKコンセンサスベース、予想値が取得できない銘柄は日経予想で穴埋め)の分布を示した
注2: 予想PERがマイナスの銘柄を除外し、1%点未満および99%点超の外れ値を除いて作成。縦軸は相対度数、破線は各時点の平均値を示す  
注3: 2000年3月の平均予想PERは50.78倍、2025年5月は16.89倍。2000年3月は一部の銘柄に極端に高いバリュエーションが集中していたのに対し、2025年5月は分布の広がりが比較的抑えられており、市場全体としてバリュエーションはより現実的な水準にとどまっている
出所: QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

一方、足元でもAI関連や半導体関連を中心に高い評価を受けている銘柄は存在しますが、予想PERの分布を見ると、当時ほど極端な高PER銘柄への偏りは確認されません。市場全体としてみれば、バリュエーションは比較的現実的な範囲に収まっており、企業の収益力や企業価値を踏まえた冷静な評価が行われていることがうかがえます。

つまり、現在の相場は確かに成長期待が先行する側面を持ちながらも、2000年ITバブル相場のように「将来の夢」だけで株価が押し上げられているわけではありません。低PBR銘柄の堅調な推移に加え、予想PERの分布を見ても、市場参加者が企業の実態価値を意識しながら投資判断を行っていることが分かります。この点は、現在の相場を評価するうえで極めて重要な違いと言えます。

「2013年アベノミクス相場」との類似点、成長期待とバリュエーション評価の両方が機能

続いて、もう1つの一極集中相場として、「2013年アベノミクス相場」における投資指標の効果を観察します。

図表4を見ると、2013年4月末の日経平均株価の月次ベースのピークに向けて、最も大きく上昇しているのは過去1年間の株価上昇率が高い銘柄群であり、典型的なモメンタム相場であったことが分かります。大胆な金融緩和への期待を背景に、株価が上昇している銘柄にさらに資金が流入する展開となっていました。

【図表4】「2013年アベノミクス相場」の投資指標の有効性:各指標の魅力度上位10%までの銘柄の平均累和超過リターン
注1:データ期間は2012年1月から2013年12月まで、データサイクルは月次
注2:母数はTOPIX500構成銘柄(但し、金融業として「銀行業」「証券、商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」に該当する銘柄は除く)
注3:毎月末時点で各指標の魅力が高い方から10%に該当する銘柄に等金額投資した場合の翌月のリターンを算出して、そこから対象となる月の母数全体に等金額投資した場合のリターンを引いた超過分を求めて2012年1月以降累和している
注4:トレンドを捉える趣旨で、前月までの値に当月のファクターリターンを累和している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

その一方で、足元の相場と同様に、低PBR銘柄のパフォーマンスも堅調に推移していたことが注目されます。円安の進行や企業収益の改善期待を背景に、これまで割安に放置されていた銘柄にも見直しの動きが広がっていました。市場は単にテーマ性のある銘柄を買っていたのではなく、企業価値の改善余地にも着目していたことがうかがえます。

2013年5月には、急ピッチな上昇に対する過熱感や米国の量的緩和縮小への懸念などから、一時的に相場は調整しました。図表4でも、モメンタム効果は2013年4月をピークにいったん低下しています。

しかし、その後もアベノミクスによる景気回復や企業業績の改善期待が継続し、日本株市場全体は再び上昇基調を強めました。それに伴い、低PBR銘柄のパフォーマンスも引き続き堅調に推移しており、バリュエーション面での評価が継続していたことが確認できます。

このように、「2013年アベノミクス相場」は、金融緩和への期待によってモメンタム効果が強く表れた一方で、低PBR銘柄も安定して良好なパフォーマンスを示した局面でした。成長期待とバリュエーション評価の両方が機能していたという点で、現在の日本株市場と共通する特徴を持っています。現在の相場も、一部の成長株が相場を牽引する一方で、割安株への見直しが進んでいるという意味で、2013年アベノミクス相場に近い側面を有していると考えられます。

今回の相場を支える低PBR株と、次の注目点は業績モメンタム

ITバブルとは異なり、アベノミクスに近い現在の相場

ここまで、過去の代表的な一極集中相場として、「2000年ITバブル相場」と「2013年アベノミクス相場」を振り返ってきました。いずれの局面でも、市場の期待が特定のテーマに集中し、限られた銘柄群が相場全体を強く押し上げていました。ただし、その中身を見ると、相場の持続性には大きな違いがあったことが分かります。

2000年ITバブル相場では、将来の成長期待が極端に重視され、PBRやPERといった企業価値の尺度はほとんど機能しませんでした。市場の関心は「どこまで成長するか」に集中し、その前提が揺らいだ瞬間に相場は急速に崩れました。一方、2013年アベノミクス相場では、金融緩和によるモメンタム効果が強く表れると同時に、低PBR銘柄も堅調に推移しており、企業価値を意識した投資が相場の底流にありました。その結果、一時的な調整を挟みながらも、日本株市場はその後も上昇基調を維持しました。

今回の相場で特に注目すべきなのは、図表1で確認したように、AI半導体関連を中心とした成長期待が相場を牽引する一方で、低PBR銘柄への投資も堅調に推移していることです。これは、市場が単なるテーマや期待だけで動いているのではなく、企業価値や資本効率にも着目しながら、比較的冷静に株価を評価していることを示しています。この点で、現在の相場は2000年ITバブル相場よりも、2013年アベノミクス相場に近い特徴を持っていると考えられます。そうであれば、短期的な値動きの振れはあるとしても、中長期的には相場の上昇基調が継続する可能性が期待されます。

今後のカギを握る「来期以降の業績モメンタム」

もっとも、筆者が今後の相場を考えるうえで最も意識しているのは、AI半導体関連など、足元の相場を支えている企業群の将来成長期待に変化が生じないかという点です。2000年ITバブル相場でも、「将来の収益は大きく拡大する」という期待そのものが相場を支えていました。その期待に陰りが見えた瞬間、株価は大きく調整しました。現在も同様に、来年度以降の業績成長が市場の期待を上回って継続するかどうかが、相場の持続性を左右する重要なポイントになると考えられます。

その意味で、投資家としては、単に足元の人気テーマを追いかけるだけでなく、来期以降も成長率の加速が期待できる企業に注目することが重要です。この点についての投資戦略は、本連載の5月7日付のコラム「来期の伸びが今期を超える銘柄は強い? 業績モメンタムを検証」で分析しています。今後の日本株相場を見通すうえでも、企業の成長期待がどの程度持続するのかに引き続き注目していきたいところです。