来期の業績モメンタムを見る重要性
3月期決算企業の本決算発表が本格化し、市場はまさに決算シーズンの只中にあります。直近年度の実績が明らかになると同時に、企業の業績見通しに対する関心は、2027年3月期となる今年度の業績がどのように推移するのかへと向かっています。
もっとも、株価は足元の業績水準だけでなく、将来に向けた成長期待を織り込んで形成されます。そのため、投資判断においては今年度の業績だけでなく、さらに1期先となる2028年3月期の業績動向も重要な視点となります。ただ、足元ではイラン情勢の影響などから原油価格の先行きには不透明感も強いなど、外部環境の不確実性が高い状況です。そのため、今年度の業績見通しに加え、来年度の業績を見通すことも容易ではありません。
しかし、たとえ今年度の業績が好調であったとしても、来年度にかけて業績の伸びのモメンタムが鈍化する場合には、株価の上昇余地が限られる傾向があります。利益水準そのものが高くても、それが既に株価に織り込まれている場合、さらなる上昇には新たな成長期待の高まりが必要となるためです。 こうした観点を踏まえると、来期に向けた成長の加速、すなわち来期業績モメンタムの方向性に着目することが重要になります。そこで本稿では、来期の業績モメンタムが今期を上回る銘柄に焦点を当て、その特徴と投資への活用方法を紹介します。
増益率と予想変化率(リビジョン)の2条件で銘柄を選別
来期の業績モメンタムが今期を上回るかどうかの判断に関しては2つの情報に着目する必要があります。
1つは利益の伸び率、すなわち「増益率」で業績そのものの成長度合いを示します。もう1つが「予想変化率(リビジョン)」で、市場参加者の見方がどのように変化しているかを示す指標です。
実際の銘柄選別では、次の2つの条件を用います。
来期の営業利益の増益率が、今期の営業利益の増益率を上回る
来期の営業利益の予想変化率が、今期の営業利益の予想変化率を上回る
増益率と予想変化率(リビジョン)が重要な理由
第1条件の「増益率」に着目する理由
企業の成長は、単に利益が出ているかどうかではなく、その伸びが加速しているかどうかが重要です。例えば、今期は増益であっても、来期に増益率が低下するのであれば、成長の勢いは弱まっていると考えられます。一方で、来期の増益率が今期を上回る場合には、利益成長が加速している状態にあり、将来に対する期待が高まりやすくなります。
第2条件の「予想変化率」に着目する理由
株価は将来の期待によって動くため、業績そのものだけでなく、その見通しがどのように変化しているかが重要になります。予想変化率は、アナリストや市場の見方が上方修正されているかどうかを示す指標です。来期の予想変化率が今期を上回る場合には、企業の将来に対する評価がより強まっていることを意味します。これは、投資家の期待が高まりやすい環境にあることを示しています。
来期モメンタム銘柄のパフォーマンスをTOPIX(東証株価指数)構成銘柄で検証
実態としての成長と市場の評価の両面で魅力的な銘柄を抽出
実際に、「第1条件:増益率の条件」と「第2条件:予想変化率の条件」を満たす銘柄を抽出し、その投資パフォーマンスを検証しました。
分析対象となる母集団は、TOPIX(東証株価指数)構成銘柄としています。なお、営業利益率の算出が業態特性上なじみにくい金融業は除外しました。検証方法としては、毎月末時点で2つの条件を共に満たす銘柄を選定し、それらに均等投資を行い、翌月以降のリターンを積み上げました。
その結果を示したのが図表1の青線グラフです。青線は累積リターンを表しており、グラフが右肩上がりに推移していることは、時間の経過とともに収益が着実に積み上がってきたことを意味します。ここでは2024年以降の近年の状況に着目していますが、本戦略で選別された銘柄群は、良好なパフォーマンスを示してきたことが確認できます。
さらに、図表1の赤線グラフでは、選定銘柄群のリターンから、母集団全体(金融業を除くTOPIX構成銘柄)の平均リターンを差し引いた「超過リターン」の累積を示しています。こちらも右肩上がりの形状となっており、本戦略が市場全体を継続的に上回る成果を上げてきたことが読み取れます。
このように、「増益率」は実際の成長の加速を、「予想変化率」は市場の期待の高まりをそれぞれ捉える指標です。両者を組み合わせることで、実態としての成長と市場の評価の両面から、より魅力的な銘柄を抽出することが可能になります。
注2:母数はTOPIX構成銘柄(但し、金融業として「銀行業」「証券、商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」に該当する銘柄は除く)
注3:「来期営業増益率が今期営業増益率を上回るか」、および「来期リビジョン(予想営業利益変化率)が今期リビジョンを上回るか」を基準に銘柄を分類する。いずれも各月末時点で入手可能なコンセンサス予想を用いて算出しています。
注4:毎月末時点で「来期営業増益率>今期営業増益率」かつ「来期リビジョン>今期リビジョン」の両条件を満たす銘柄群を対象。絶対リターンは各銘柄の配当込み収益率(月次)の単純平均を累積したものであり、超過リターンは母数に該当する全銘柄の平均リターンを控除した累積リターンを示す。
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
増益率と予想変化率の2つの条件を満たす銘柄のスクリーニング結果
マネックス証券のウェブサイトで提供している「銘柄スカウター」の10年スクリーニング機能を筆者が利用し、増益率と予想変化率の2つの条件を満たす銘柄を抽出しました。
対象は、金融業(「銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」)を除く企業とし、流動性を考慮して東証プライム市場に上場し、時価総額1,000億円以上の企業に限定しています。
また、業績面で一定の健全性を確保するため、以下の5つの条件を設定します。
・[今期コンセンサス]増益率(営業利益):5.0%~・アナリスト数3人以上
・[来期コンセンサス]増益率(営業利益):5.0%~・アナリスト数3人以上
・[今期コンセンサス]予想変化率(営業利益):対3ヶ月前・0.0%~・アナリスト数3人以上
・[来期コンセンサス]予想変化率(営業利益):対3か月前・0.0%~・アナリスト数3人以上
・実績ROEが8.00%以上
そして、実際のメインのスクリーニング条件は以下です。
第1条件:増益率の条件:来期の営業利益の増益率が、今期の営業利益の増益率を上回る
第2条件:予想変化率の条件:来期の営業利益の予想変化率が、今期の営業利益の予想変化率を上回る
結果を図表2に示しました。2つの条件については図表2の右から2列に示されるようにExcel上で判定処理をしています。更に、[来期コンセンサス]増益率(営業利益)(%)が高い順に並べ替えています。
なお、ここで銘柄に関しては、直前で公表されている決算が本決算企業のみに絞っています。作業時点の5月1日時点で、3月期決算企業のケースでは、2026年3月期の本決算発表が未だの企業は除くためです。投資の参考にしてみてください。
市場:東証プライム、業種:水産・農林・鉱業・建設・食料品など、時価総額:1,000億円~
[詳細条件]
[今期コンセンサス]増益率(営業利益):5.0%~・3人以上、[来期コンセンサス]増益率(営業利益):5.0%~・3人以上、[今期コンセンサス]予想変化率(営業利益):対3か月前・0.0%~・3人以上、[来期コンセンサス]予想変化率(営業利益):対3か月前・0.0%~・3人以上、[指標]実績ROE:8.00%~
さらに「第1条件:増益率の条件:来期の営業利益の増益率が、今期の営業利益の増益率を上回る」「第2条件:予想変化率の条件:来期の営業利益の予想変化率が、今期の営業利益の予想変化率を上回る」の条件を満たすかの判定をExcelで算出して、[来期コンセンサス]増益率(営業利益)(%)が高い順に並べ替えている
出所:マネックス証券ウェブサイト マネックス銘柄スカウター(2026年5月1日時点)を用いてマネックス証券作成
具体的な銘柄スクリーニング方法を解説
ここからは補足的な説明です。読者の皆さんが、ご自身のタイミングや最新データで図表2のスクリーニングを行いたい場合の具体的なスクリーニング入力項目を示しました(図表3)。
上記の条件でスクリーニングボタンを押下すると、図表4のような銘柄一覧が画面に出力されます。
さらに「第1条件:増益率の条件:来期の営業利益の増益率が、今期の営業利益の増益率を上回る」「第2条件:予想変化率の条件:来期の営業利益の予想変化率が、今期の営業利益の予想変化率を上回る」の条件を満たすかの絞り込む必要があります。そこで右上の「CSVダウンロード(図表4の〇印)」から銘柄リストを取得して、Excelで処理します。
ここで注意点があります。後に、Excel処理のために行う「csvダウンロード」は200銘柄までの制限があります。そこで対象銘柄数が200銘柄以内であることを確認します。仮に、200銘柄を超えていたら、1,000億円で設定している時価総額の最低基準を少し増やして、対象銘柄を200銘柄までに抑えるようにしてください。
図表5は図表6でダウンロードして取得したcsvファイルをExcelで開いた画面です。まず、「第1条件:増益率の条件:来期の営業利益の増益率が、今期の営業利益の増益率を上回る」の条件を判別するため、L列に「H列>G列」という数式を入力します。” >”は「より大きい」という意味です。条件をクリア行のL列のセルは“TRUE”と表示されます。
次に、「第2条件:予想変化率の条件:来期の営業利益の予想変化率が、今期の営業利益の予想変化率を上回る」の条件を判別するため、M列に「J列>I列」という数式を入力します。条件をクリア行のM列のセルは“TRUE”と表示されます。
次に、Excelのメニュー「データ」→「フィルター」を使い、TRUEのみに絞り込みます。そして、「[来期コンセンサス]増益率(営業利益)(%)」が高い順に並べ替えます。最後に直前で公表されている決算が本決算企業のみに絞ると、図表2の銘柄リストになります。
