3月期決算企業の本決算発表が一巡し、株式市場は個別材料に乏しく、方向感が出にくい局面を迎えています。しかし、今後の株価は、これまで期待先行で上昇してきただけに、その期待を裏付けるように企業業績が実際に拡大へ向かうのかどうか、すなわち業績トレンドの行方が重要な焦点です。

そこで今回は、企業の利益の「期待」と「現実」という2つの視点に着目した株価指標から、今後の相場を予想します。

利益の「期待」を読むリビジョンウォッチ

リビジョンウォッチで市場全体における業績モメンタムへの期待の強さを把握

1つ目の利益の「期待」に着目した指標は「利益予想の変化」です。複数の企業アナリストによる業績予想を平均した「市場予想」を引き上げたり引き下げたりする動きは、投資実務では「リビジョン」と呼ばれています。

市場予想が従来の見通しより上方に修正されることを上方リビジョン、逆に下方に修正されることを下方リビジョンと言います。筆者は、このリビジョンを集計して株価動向の判断に生かす「リビジョンウォッチ」という手法を考案し、継続的に観察しています。リビジョンをTOPIX(東証株価指数)構成銘柄で集計することで、市場全体における業績モメンタムへの期待の強さを把握することができます。また、リビジョンウォッチをみることで、その期待の方向性や変化の度合いも合わせて捉えることができます。

実際に図表1で足元のリビジョンウォッチを見てみましょう。リビジョンウォッチは、市場全体で集計したリビジョンの水準(横軸)と、その変化(縦軸)を2つの軸でプロットしたものです。

【図表1】リビジョンウォッチ
注1:2026年1月19日から始まる週から5月11日からスタートする週(5月15日)まで。データサイクルは週次
注2:母数はTOPIX構成銘柄
注3:リビジョンインデックス水準の計算は今期予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerで提供されるリビジョンインデックスをもとに計算している。実際の出力値を3週平均している。リビジョンインデックス(RI)変化はRI水準からそれ以前の水準との差。それ以前の水準とは4週前までの12週の平均値とする。算出方法詳細は本連載の2025年9月24日付の記事「利益予想修正指数(リビジョンインデックス)から見た市場環境と有望業種の選別方法 」参照
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

このプロットは、多くの局面で時計回りに循環する特徴があり、これが「リビジョンウォッチ」という名称の由来です。特に、赤い矢印が示すように、変化がマイナスからプラスへ転じ、その後に水準もマイナスからプラスへ向かう局面は、株価上昇の起点となりやすい重要なシグナルと考えられます。

横軸で示す「水準」が低くても、縦軸の「変化」がプラスであれば、今後の改善につながる可能性が高まります。逆に、足元の「水準」が高くても、「変化」がマイナスに転じていれば、先行きの勢いが弱まる可能性があることを示しています。

株価再上昇のカギは、リビジョンウォッチの「右上」転換

実は、足元では図表1の青い矢印が示すように、5月以降、リビジョンウォッチが左下方向へ進んでいることが気がかりです。4月下旬にかけては、赤い矢印が示すように右上方向への改善が続いていたことを背景に、相場全体も上値を試す展開となりました。実際、5月13日の日経平均株価は史上最高値となる6万3272円まで上昇しました。

しかし、リビジョンウォッチが5月7日の週から左下方向へシフトするなかで、足元の株価には一服感が見られています。5月20日の日経平均株価は5万9804円まで下落しました。

もっとも、リビジョンウォッチの大きな流れを見ると、4月6日の週以降は赤い矢印が示すように右上方向への改善基調が続いています。足元の左下方向への動きは、「変化」の鈍化と、それに伴う「水準」の調整が一時的に表れている局面と考えられます。

したがって、現時点では上昇トレンドの中での一時的な踊り場とみていますが、株価が再び上昇基調を強めるためには、リビジョンウォッチが改めて右上方向へ転じることが重要になると考えています。

本連載でリビジョンウォッチを最初に取り上げたのは、2025年9月24日付の記事「利益予想修正指数(リビジョンインデックス)から見た市場環境と有望業種の選別方法」です。リビジョンウォッチの詳しい計算方法については同記事をご参照いただきたいのですが、ここではリビジョンを集計した「水準」を次の算式で求めています。

利益の「現実」を測るアーニングサプライズ指数

今回紹介する、利益の「現実」に着目した2つ目の株価指標も、上式の「上方修正銘柄(件数)」と「下方修正銘柄(件数)」を、それぞれ「ポジティブサプライズ銘柄(件数)」と「ネガティブサプライズ銘柄(件数)」に置き換えたものです。筆者はこれを「アーニングサプライズ指数」と呼んでいます。

アーニングサプライズは、「利益の答え合わせ」とも言える指標です。アーニング(earnings)は利益、サプライズ(surprise)は驚きを意味し、実際に発表された利益が事前の市場予想をどの程度上回ったか、あるいは下回ったかを見るものです。決算で発表された実績利益が、事前のアナリストコンセンサス予想を上回ればポジティブサプライズ、下回ればネガティブサプライズとなります。

ポジティブサプライズが多いということは、決算前に市場が抱いていた「期待」を上回る形で企業業績が着地していることを意味します。すなわち、企業を取り巻く経営環境が想定以上に良好であり、業績モメンタムの拡大に対する信頼性が高まっていることを示しています。

足元のアーニングサプライズ指数は?

実際に図表2で足元のアーニングサプライズ指数を見てみましょう。青線のアーニングサプライズ指数がゼロを上回っていることは、ポジティブサプライズとなった銘柄がネガティブサプライズとなった銘柄を上回っていることを示しています。つまり、市場の期待を上回る決算を発表する企業が多く、業績モメンタムの拡大に対する信頼性が高まっていることを意味します。

【図表2】アーニングサプライズ指数と日経平均株価の推移
注1:データ期間は2025年7月1日から、5月19日まで。データサイクルは日次
注2:母数はTOPIX500構成銘柄
注3:アーニングサプライズの計算は今期予想の営業利益を対象に算出している
注4:過去4ヶ月間のアーニングサプライズを集計している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

2026年1月以降は、青い矢印が示すようにアーニングサプライズ指数が低下傾向にありました。これに歩調を合わせるように、赤線で示した日経平均株価も、3月以降は米国・イスラエルによるイランへの軍事攻撃を巡る懸念なども重なり、赤い矢印が示すように下落基調となりました。しかし、3月中旬以降にアーニングサプライズ指数が底打ちすると、それに追随する形で日経平均株価も反騰に転じています。

単なる結果論ではない、アーニングサプライズの「本質」とは?

アーニングサプライズは、一見すると過去の決算結果を振り返る指標に見えるかもしれません。しかし、その本質は単なる結果の確認ではありません。市場の期待に対して、実際の経営環境がそれを上回っているのか、それとも下回っているのかを測ることで、今後の業績拡大に対する確信度を捉えることができます。リビジョンが「決算前の期待」を表す指標であるのに対し、アーニングサプライズは「期待に対して実態の業績がどの程度伴っているか」を示す指標と言えます。

一服感はあるものの、株価の上昇トレンドは健在か

以上を整理すると、足元の市場環境は次のように捉えることができます。リビジョンウォッチから見ると、将来の業績期待は足元でやや一服しています。ただし、中長期的な改善トレンドは維持されており、業績期待の拡大基調そのものは続いています。目先は上昇ペースがやや鈍化する可能性があるものの、基調としては業績期待の回復局面にあると考えられます。

一方、アーニングサプライズ指数は上昇しており、期待を上回る決算を発表する企業が増えています。これは、市場の期待以上に実態の業績が良好であることを示しており、業績モメンタムの拡大に対する信頼性が高まっていることを意味します。

これらを総合すると、目先的には相場に一服感がみられるものの、企業業績の改善基調は維持されており、株価の上昇トレンドそのものは崩れていない可能性が高いことが示唆されます。

注目業種は非鉄金属・鉄鋼・建設業

ところで、アーニングサプライズ指数は市場全体だけでなく、業種別に集計することも可能です。今回の分析では、足元(5月19日時点)でアーニングサプライズ指数が高い業種として、非鉄金属、鉄鋼、建設業が挙げられました。これらの業種では、市場の期待を上回る決算を発表する企業が相対的に多く、業績モメンタムの強さが確認されています。

一方で、ゴム製品、金属製品、その他製品では、アーニングサプライズ指数が相対的に低く、市場の期待に対して実績がやや伸び悩んでいる可能性があります。もちろん、個別企業ごとに状況は異なりますが、業種全体の業績の勢いを把握するうえで、こうした業種別の分析も有効です。銘柄選別やセクター配分を検討する際の参考にしてみてください。