日経平均株価は腰の強い展開が続いています。先日はザラ場ベースで67,000円に達するなど、日経平均株価7万円も俄かに現実味を増してきました。6万円到達が4月下旬だったことを考えれば、上昇ピッチは流石に速いと思わざるを得ない展開となっています。5月は「セル・イン・メイ」というアノマリーがよく知られていますが、2026年は結局このアノマリーは成立しませんでした。確かに一旦は6万円を割る局面もあったものの、そこからの切り返しは相場の地合いの強さを物語るものだったと言えるでしょう。ただし、依然として相場の牽引役は半導体関連です。バリュー株もバランスよく上昇しているという指摘はありますが、半導体などテクノロジー領域への過熱感は否めません。今回取り上げるテーマのように、どこかでバリュエーション調整が入るリスクがあることはしっかりと肝に銘じておきたいところです。併せて、日銀が6月に追加利上げに踏み切るのかどうかも、今後しばらくは注目されることでしょう。当面はそうした動向を見定めるやや神経質な展開になるのではと想像しています。

防衛株ブームは終わった?ド真ん中銘柄が軒並み2割超の下落

さて、今回は「防衛産業」をテーマに取り上げたいと思います。何を今さら、と思われるかもしれません。しかし、防衛関連企業の株価は2~3月に高値をつけた後、大きく調整が入っています。ド真ん中銘柄とされる三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)、IHI(7013)に注目してみると、3月の高値からいずれも2割を超える株価下落となっているのです。これをどう捉えればよいのでしょうか。もう上昇相場は終わったのか、それとも単なる調整なのか。

今回はアナリストの視点から、こうした現象を捉え直してみようという試みです。なお、本コラムで防衛産業を最初にテーマに採り上げたのは2022年6月に「骨太の方針2022」が示された時でした。そこで今後期待される産業の一つとして紹介し、同年8月には防衛産業をメインに新たにコラムを記しています。

「骨太の方針2022」注目したい産業・分野とは
地政学リスクの高まりで注目の「防衛産業」を読み解く

今思うと、これはドンピシャのタイミングでした。それから現在に至る約4年間で防衛関連銘柄が大相場を演じたことは皆様もよくご存じの通りです。当時に期待したシナリオと比較して、何がどう変わったのか。まずはここから検証をしてみましょう。

防衛予算拡大と利益率の急回復がもたらした構造変化

結論を急げば、概ねこの時に考えたシナリオ通りの展開にあると受け止めています。地政学リスクは(残念ながら懸念通りの)高まりを見せ、我が国においても安全保障への意識は急速に高まってきたように思います。それを受け、長らく対GDPで1%が実質的な上限にあった防衛予算は、2026年度予算では2022年度GDP比1.9%(2026年度GDP見通し比では1.5%)にまで上昇することとなりました。金額ベースではおよそ倍増となり、2027年度に2%としていた当初の目標をほぼ前倒しで実現するペースとなっています。

武器輸出に関しても、これまで5類型に限定されていた制限は撤廃されました。こうした変化のペースはむしろ4年前に想定していたものよりもはるかに速いとさえ言えるかもしれません。ド真ん中銘柄の決算を見ても、三菱重工業や川崎重工業ではこの間の売上が毎期2桁に近い成長ペースとなっています(事業譲渡などの特殊要因補正後基準)。防衛関連の伸長にエネルギー関連の需要拡大が加わり、概して好調な推移となっています。損益的にも、防衛関連セグメントの利益率は急回復となっており、いずれも社内で最も利益率の高いセグメントへと急浮上してきました。両社は今期も過去最高の決算を計画していることを考えれば、防衛予算の拡大は着実に関連銘柄の業績に追い風をもたらしていると言えるでしょう。

業績絶好調でも株価が冴えない理由と、今後の「底打ち」のサイン

にもかかわらず、株価は冴えません。合理的に考えると、こうした企業の成長期待が低下してきた可能性が浮かび上がってきます。成長期待はPERで表されますが、実際に三菱重工で言えば、2月時点のPERは60倍を超えており、相当の成長期待が株価に織り込まれていたことがわかります。現在は今期予想基準で31倍程度と、プライム市場平均の18倍と比べると依然として成長期待は高いとは言えますが、より落ち着いた見方になってきています。

今後の予想は難しいですが、GDP2%枠設定の基準となったNATOでは既にGDP比3.5%の防衛予算水準が一つの目途となりつつあること、そして装備品は輸出機会の拡大が今後見込まれること、などを勘案すれば、一定の成長が期待できる環境はまだ続いているようにも思えます。

確かに、防衛産業が「儲からなかった時代」から「十分稼げる時代」へと転換するという構造変化は一巡したのかもしれませんが、巡航速度で成長が継続するというフェーズはまだ途上にあると考えます。今後はど真ん中銘柄の株価がどのくらいのPER水準で底打ちしてくるのか。それは巡航速度の成長期待がどの程度なのかを占うベンチマークになるものと注目しています。

本命企業から周辺ビジネスまで。「防衛関連銘柄」のおさらい

さて、ここでは改めて防衛産業関連銘柄を整理しておきましょう。

まずは本命とも言える防衛省の装備品調達契約企業群です。契約上位企業として、三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)、三菱電機(6503)、日本電気(6701)、富士通(6702)、日本製鋼所(5631)、日立製作所(6501)、沖電気工業(6703)、SUBARU(7270)、IHI(7013)、ENEOSホールディングス(5020)、ダイキン工業(6367)、小松製作所(6301)などの名を挙げることができます。このうち、三菱重工業、川崎重工業、日本製鋼所の3社は、契約額が直近期売上高に対して25%を超える規模にあるなど、防衛関連事業のインパクトが高いことがうかがえます。

また、防衛省関連ビジネスへの関与を明らかにしている企業群としては、東京計器(7721)、細谷火工(4274)、理経(8226)、日清紡ホールディングス(3105)、新明和工業(7224)、放電精密加工研究所(6469)、アイコム(6820)、多摩川ホールディングス(6838)、ジーエス・ユアサ コーポレーション(6674)、シンフォニアテクノロジー(6507)、ミネベアミツミ(6479)、日機装(6376)、ナブテスコ(6268)といった名前も出てきます。タイミングを計りながら、これら企業への投資機会も探っておきたいところです。