先週(3月30日週)の値動き:NY金は約3ヶ月ぶりの安値から反発、国内金価格は3月は月足下落の一方で四半期ベースでは続伸
NY金、約3ヶ月ぶりの安値から反発
先週(3月30日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、週足で5週間ぶりに反発した。4月3日の米国市場はイースター(復活祭)のグッド・フライデー(聖金曜日)の祝日で休場となったため、4営業日となった。4月2日のNY金の終値は4,679.7ドルで前週末比187.2ドル(4.17%)高の反発となった。レンジは4,444.7~4,825.9ドルで値幅は381.2ドルだった。約3ヶ月ぶりの安値まで見た前週(3月23日週)の水準に対する戻り高値更新という印象を与えた。
イラン戦争の早期終結期待は後退し、原油は直近の高値更新
引き続き、イラン戦争を巡る戦況と、トランプ米大統領による戦争収束に向けた不規則発言に、市場の関心が集まった。収束見通しにもっとも敏感に反応したのは原油価格である。米国産原油WTIの4月2日の終値は111.54ドルと、2月28日のイラン戦争開戦後の終値としては最高値となった。ホルムズ海峡再開のめどは立たず、石油市場への圧力が後退する兆しはほとんど見られない。WTIの価格は、4月2日までの年初来で54.12ドル、94.25%上昇した。なお開戦前の2月27日以降では44.52ドル(66.43%)の上昇となっている。
戦争収束見通しを示せなかったトランプ演説
WTIの直近高値の更新は、米東部時間4月1日21時に行われたトランプ米大統領の国民向け演説に反応したものだった。「戦況は圧倒的に優位に進み、壊滅的な打撃をイランに与えており、目標は完了に近づいている」と、従来通りの主張を繰り返した。市場が最も聞きたかった収束に向けた道筋は示さず、むしろ軍事作戦が近く激化する可能性に言及した。
また、トランプ米大統領は「2~3週間の内に彼らを徹底的に叩く」と発言。「すなわち(イランを)石器時代に戻す」と述べた。ホルムズ海峡については「難しい部分は終わったので簡単なはずだ。紛争が終われば海峡は自然に開くだろう」と述べた。
つまりイラン戦争の終結時期について明確な見通しを示すことはできず、発言内容からトランプ米大統領は懸案のホルムズ海峡再開の責任を放棄したと受け止められた。秋に中間選挙(議会選挙)を控える中での国民向け演説ということで、楽観見通しに傾いていた市場の流れは逆流した。WTIは買いを集め急騰し、インフレによって金融緩和政策が不可能になるという懸念も強まった。
原油上昇に対する耐性を示したNY金
先週の当欄で3月30日週の値動きのポイントを書いた際に、「NY金に独自の値動きが出るか注目」とした。改めて詳述すると、NY金については、原油価格や米長期金利の値動きの影響から離れる兆し(逆相関性の低下)が現れ始めているとした。
内部要因としては、換金売りが一巡した可能性があること。さらに中心になる取引(中心限月)が2026年6月物に移行する際に、取組(ポジション)が3月26日の1日だけで、重量換算で約88トン減少したことを挙げ、調整一巡との指摘もできると書いた。
また外部環境からは、イラン側の反撃も想定外に強く、当初の一方的な米国有利の状況は後退しているように見受けられるとした。こうした状況からNY金の値動きは、先行きの米国財政や米国政治状況などを読み、本来的な有事反応を示す兆しが出ている可能性があり、注視したいと書いた。
実際、先週(3月30日週)は前述したように、WTIが終値ベースで開戦来の高値を更新する中で、NY金の週足は4%強反発した。前週(3月23日週)まで残高の減少(=売り)が目立っていた金ETF(上場投資信託)の最大銘柄「SPDR(スパイダー)ゴールド・シェア」は、先週の2営業日(3月31日、4月1日)で残高の増加が見られた。
象徴的だったのは4月1日のトランプ演説後の反応だった。政権の誤算を印象付けた収束見通しの曖昧さでWTIが急伸する中で、4月2日は4,800ドル超の水準から一時4,580.4ドルまで売られたものの買い戻され、4,679.7ドルで終了。その後の時間外取引は4,702.7ドルで、週末の取引を終了した。下げ幅の縮小は原油上昇に対する耐性を示したものと捉えている。
パウエル議長の講演内容により米利下げ観測が復活
もう一つNY金の値動きに変化をもたらしたのが、3月30日にハーバード大学で行われたパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演内容だった。
パウエル議長は、FRBの金融政策は、イラン情勢がどのように影響するか見極めるために「良い位置」にあるとした。「エネルギーショックがどの程度になるか判断するには時期尚早」とした上で、インフレ期待は短期的にとどまらず、「それを超える期間において十分に抑制されているようにみえる」と述べた。この発言で年内利上げ観測は消え、むしろ利下げ観測が復活したと受け止められた。
NY金、3月月間ベースで上場来最大の下落幅
なお3月を終えNY金の月足は569.30ドル(10.85%)安となり10ヶ月ぶりの反落となった。月間下落幅は1974年の上場以来過去最大で、下落率は2013年6月(月間12.15%安)以来の大きさとなった(いずれもFactSet)。
国内金価格、3月は月足下落の一方で四半期ベースでは続伸
先週(3月30日週)の国内金価格もNY金同様に反発した。大阪取引所の金先物価格(JPX金)の4月3日の終値は2万4893円となった。
週足は前週末比1295円(5.49%)高で反発した。レンジは2万3235~2万5277円で、値幅は2042円で前週(3151円)より縮小したものの、依然として値動きの荒い状況が続いている。
3月は月間ベースでは前月末比2875円(10.63%)安の反落となった。それでも四半期ベースでは1658円(7.37%)高で続伸となった。
今週(4月6日週)の動き:米軍事行動の節目となりそうな週、米国インフレ指標にも注目
トランプ米大統領の発言内容と実際の米軍の行動に注目
今週(4月6日週)は、イラン情勢に新たな動きが出る可能性があり、トランプ米大統領の発言内容と実際の米軍の行動が注目される。トランプ米大統領は米誌WSJの取材に4月5日に応じ、イランが4月7日夜までにホルムズ海峡の開放に同意しなければ、大規模攻撃を始める考えを示した。イランのすべての発電所を破壊するとしている。
生活インフラへの攻撃は国際法違反でもある。この攻撃が地上戦を含むかどうか、展開次第でイラン側の反応も大きくなるとみられており、市場は動きの取りづらい環境が続きそうだ。
また4月5日、トランプ米大統領は自身のSNSでも、停戦に向けた交渉がまとまらなければ、現地時間4月7日午後8時(日本時間8日午前9時)に攻撃する方針を示唆した。その前日の現地時間4月6日午後1時(日本時間7日午前2時)に記者会見をするという予定も、自ら公表している。
4月9日(木)発表の2月米個人消費支出(PCE)価格指数、4月10日(金)発表の3月米消費者物価指数(CPI)に注目
今週(4月6日週)は、4月9日(木)に2月の米個人消費支出(PCE)価格指数、4月10日(金)に3月の米消費者物価指数(CPI)が発表される。FRBの利下げ観測を巡り、市場が揺れているだけに、その結果はイラン情勢に関する情報とともに注目される。
4月3日に発表された3月の米雇用統計は、非農業部門の就業者数が前月から17万8000人増と、市場予想(6万人ほどの増加)を大きく上回った。FRBは単月のデータのみでは政策判断は行わないが、米労働市場が想定を超える好調さを維持していることを表した。それだけに今週(4月6日週)発表の米国物価のデータはNY金に影響を与えそうだ。今週(4月6日週)のNY金は、引き続き4,500ドル超の値固めが続きそうだ。
