先週(5月4日週)の動き:米国が停戦継続の意向を示しNY金は週足で反発、NY金の値動き受け国内金価格も振れ幅拡大

先週(5月4日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、週足で反発した。5月8日の終値は4,730.7ドルで週足は前週末比86.2ドル(1.86%)高となった。終値は2週間ぶりの高値水準でもある。

戦闘終結に向けた米国とイラン双方の駆け引きともいえる、仲介国パキスタンを介した外交攻勢に加え、戦闘の現場では交戦も発生し、原油価格の振れに対して、NY金も逆の値動き(逆相関)で変動した。戦闘終息に悲観的な見方が広がった週前半には、一時約1ヶ月ぶりの安値(4,510.1ドル)まで売り込まれた。しかし、交戦の事実をトランプ米大統領は意に介さず停戦状態の継続に言及、米国側の収束に向けた意欲を感じさせた。

米国、イランに「覚書」を提出

5月7日の当欄で触れたとおり、5月6日に米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)など複数のメディアが、仲介役を務めるパキスタンの関係筋による話として、米国は「1ページの覚書」を提出し、米国とイランの双方が戦闘終結に向け合意に近づいていると報じた。「5月7日までにはイランから回答が届く」としたトランプ米大統領のいつもながらの楽観見通しはともかく、米国サイドも5月8日にはルビオ米国務長官が、同日中にイランから回答があるとの見通しを示していた。「交渉を本格化させるきっかけとなることを期待している」とまで話したと伝わった。

こうした環境の中でNY金は週末にかけて水準を切り上げ、5月5日以降4連騰となり、前述のとおり5月8日の終値は4,730.7ドルとなった。先週(5月4日週)のレンジは4,510.1~4,775.2ドルで、値幅は265.1ドルと前週(223.6ドル)をやや上回った。

戦闘現場では米イラン交戦も停戦継続変わらず

ところがその後の時間帯に伝わったのは、前日5月7日に続き、米国とイランの間で交戦が発生したというニュースだった。米東部時間5月8日夜になり、米中央軍は、封鎖措置を突破してイランの港湾に入ろうとしたイラン船籍の石油タンカー2隻を、オマーン湾で攻撃したとSNSで発表した。FA18戦闘攻撃機を使いタンカーの煙突に精密誘導弾を撃ち込んで航行不能にしたと伝わった。この件に関しイラン側は明確な反応を示していないようだが、5月8日イラン外務省のバガイ報道官は、「我々は名目上は停戦状態にあるが、必要なら全力で応戦する」と述べたとイランメディアが報じたとされる。

米国側が提出した「覚書」をイラン側が受け入れれば、30日間をめどとした戦闘終了に向けた協議を行うとされる。一方で、戦闘の現場は双方ともに神経を使いながらも緊迫した状況が続いているとみられる。また「覚書」の受け入れ自体も双方の主張の違いが大きいとみられ、現実に即しお互いがどのように妥協を図るかがポイントになりそうだ。

NY金の値動き受け国内金価格も振れ幅拡大

先週(5月4日週)の国内金価格はゴールデンウィークの連休の影響で、5月7日、8日の2営業日のデータとなる。大阪取引所の金先物価格(JPX金)の5月8日終値は2万4651円で終値としては4月27日以来、約2週間ぶりの高値水準となった。週足は前週末比760円(3.18%)高の反発となった。レンジは2万3469~2万4736円で値幅は1267円となり、2026年3月30日週の2042円以来、5週間ぶりの大きさとなった。

連休中も取引が続いていたJPX金

大阪取引所では5月1日の夜間取引に続き、5月4~5日の間は海外市場の変動に合わせてリスクヘッジできるように、祝日取引(通常の平日と同じ時間帯、日中セッション:8:45~15:15)および夜間取引(17:00~06:00)が行われた。したがって前述のレンジはその間に付けた価格を含んでいる。レンジの安値2万3469円は日本時間5月5日午前3時59分に付けたものである。なお5月8日の代表的な店頭小売価格(10%消費税込み)は2万6305円となった。

中国人民銀行の金準備増加、4月は1年4ヶ月ぶりの規模

先週(5月4日週)は5月7日に中国人民銀行が4月末の外貨準備の状況について恒例の発表を行った。それによると外貨準備として保有する金の量は前月から8.1トン増となった。18ヶ月連続の増加で保有量は全体で約2321トンとなった。1ヶ月の増加量としては2024年12月の10.3トン増以来の規模となる。

このところ毎月1トン程度の増加にとどまっていたが3月の4.9トンに続き2ヶ月連続でややまとまった規模となった。国際価格の下落で買いを増やしているとみられる。

今週(5月11日週)の動き:米「覚書」へのイランの回答と米中首脳会談、ケビン・ウォーシュ氏のFRB議長就任、5月12日発表の4月米CPIに注目

予想を上回る拡大を示した米雇用統計

イラン情勢にとかく注目が集まるのはやむなしだが、この間に発表される米主要経済指標は堅調な内容が続いている。

前回の当欄では5月8日発表の4月の雇用統計に注目としていた。結果は、非農業部門雇用者数(NFP)が前月から11万5000人増加し、伸びは市場予想(6万2000人増、ロイター)を大きく上回った。失業率は4.3%と前月から横ばいとなり、労働市場の底堅さが示されたことで、米連邦準備制度理事会(FRB)は当面、金利を据え置くとの見方が強まった。

一方で、経済的理由でパートタイム就労を余儀なくされている人の急増やヘルスケア関連の雇用への依存度の高さなど、労働市場のひずみも浮き彫りになり、FRBによる年内の利上げ期待はやや後退した。

5月12日の米4月CPIに注目

労働市場の安定した状態が続けば、FRBの焦点は再びインフレに戻ることになりそうだ。この点で今週は5月12日に発表される4月の米消費者物価指数(CPI)に注目したい。

市場予想では前月比0.6%上昇が見込まれている(ロイター)。イラン戦争による燃料値上がりで3月は前月比ベースで2022年以来の大幅上昇となっていた。基調的なインフレを示す食品とエネルギーを除くコアCPIは、4月に小幅ながら(前月の0.2%から0.3%)加速すると予想されている。次のFRBの政策の方向性について、市場の見方を見極める上で重要な手がかり材料となる。

ケビン・ウォーシュFRB新議長誕生へ

FRBに関しては、今週(5月11日週)中にも米上院にてケビン・ウォーシュ元FRB理事のFRB新議長就任の採決が行われ、承認が見込まれている。同時に任期が延長されていたミラン理事が退任する。予定では5月15日にパウエル現議長が退任する。ただし、そのまま理事職に残るとみられる。

米「覚書」へのイランの回答と米中首脳会談

地政学要因では5月14~15日の米中首脳会談が言うまでもなく注目される。その前にトランプ米大統領は、終戦に向けた30日間の協議開始などを通じて、イラン情勢に一区切りつけたかったとみられる。前述の「覚書」に対するイラン側の回答は遅れていたものの、米東部時間5月10日に示されたと伝わった。それに対しトランプ米大統領は「全く受け入れられない」との見解を示したと伝えられた。

5月11日のアジア時間の市場では原油高の中でNY金は売りが先行する流れとなっている。トランプ米大統領による楽観見通しはまた現実化しなかった。ただ、予想の範囲内の展開とも言え、市場の反応は現時点で限定的なものとなっている。米国によるイラン攻撃再開は考えにくく、不安定ながら停戦状態が続くと予想される。NY金は引き続き4,700ドル近辺を固めながら再騰の機会をうかがうことになるとみられる。