米ドル買いは4月上旬で一巡=投機筋
CFTC(米商品先物取引委員会)統計に基づく投機筋の米ドル・ポジション(主要な非米ドル5通貨=円、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドルのポジションで試算)は、4月上旬に買い越し拡大が一巡し、中旬以降は買い越し縮小に転じた(図表1参照)。
米ドル・ポジションは、米国等のイラン攻撃が始まる2月末までは大幅な売り越しとなっていた。それがイラン攻撃開始以降は縮小に向かい、さらに買い越しに転換した上で、それの拡大が4月上旬にかけて続いた。
つまりイラン戦争という「有事」が展開する中で、当初は米ドル買い戻し、その後は米ドルを買い増す形で米ドル買いが続いた。ただそれは4月上旬までで一巡し、4月中旬以降はまだ「有事」が続いている中でも米ドル買い越しの縮小という形で米ドル売りに転換した。
対豪ドルでは米ドル売り続く=対ユーロでも4月上旬以降米ドル売り
米ドル買い越しが4月中旬以降縮小に転じたのは、一つにはユーロ売り・米ドル買いが4月初めで一巡し、ユーロ買い・米ドル売りに転換した影響がありそうだ。投機筋のユーロ・ポジションは、イラン攻撃開始以降ユーロ買い越しが縮小、さらに売り越しへ転換する形でユーロ売り・米ドル買いが続いていたが、4月上旬以降は改めてユーロ買い越し拡大に転換した(図表2参照)。米ドルの側から見ると、イラン攻撃開始以降続いた対ユーロでの米ドル買いが、4月上旬から米ドル売りに転じたことになる。
代表的な資源国通貨である豪ドルは、2月末のイラン攻撃開始以降も米ドルに対する買い越し拡大傾向が基本的に続いていた(図表3参照)。米ドルの側から見ると、イラン情勢の緊迫という「有事」が展開する中でも、資源国通貨の豪ドルに対して米ドル売りが続いていたということになる。
4月中旬以降、目立ち始めた「悪い米金利上昇」
2月末のイラン攻撃以降、原油などエネルギー価格が高騰した。これは、その後のホルムズ海峡封鎖などによるエネルギー供給不安を受けた動きとして理解しやすい。そして原油価格などの高騰に対して米金利が強く連動した結果、「原油高=米金利上昇」となった(図表4参照)。
イラン情勢が緊迫する中で当初起こった米ドル買いは、「原油高=米金利上昇」が主因と考えられる。このように考えると、原油価格が高騰しても、資源国通貨である豪ドルに対して米ドル買いにならなかったことも説明がつくのではないか。
4月中旬以降、米金利上昇が豪金利上昇を上回るペースとなったことから、豪米金利差(豪ドル優位・米劣位)は縮小に転じた。しかし、それにもかかわらず豪ドル高・米ドル安がさらに拡大に向かった(図表5参照)。これは米金利上昇が米ドル買いではなく、米ドル売りの反応となる「悪い金利上昇」が目立ち始めた可能性を感じさせる。
イラン情勢の悪化を受けた原油高は米金利上昇を通じて、一部の資源国通貨などを除き、多くの通貨に対して米ドル買いの反応をもたらした。ただ4月中旬以降、米金利上昇に対して、むしろ米ドル売りで反応する「悪い金利上昇」も目立ち始めたことで、イラン情勢の悪化という「有事」が続く中でも、米ドル買いから米ドル売りへ転換したのではないか。
