先週(4月27日週)の値動き:停戦状態の中、米イラン交戦により原油は高騰、売られたNY金、国内金価格は為替介入の円高で下げ幅拡大
先週(4月27日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は続落した。停戦期間は延長されたものの、ホルムズ海峡を巡る米国とイラン双方の主張の食い違いにより、停戦合意の継続を危ぶむ見方が高まり、原油価格は高騰した。
インフレ懸念から米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測は大きく後退し、NY金は週前半を中心に売りが先行し、水準を切り下げた。4月29日には一時4,522.2ドルまで売られ、当日の終値(4,561.5ドル)ともに約1ヶ月ぶりの安値となった。
週末には買戻しの動きが見られ、5月1日の終値は4,644.5ドルとなった。週足は前週末比96.4ドル(2.03%)安で2週続落となった。レンジは4,522.2~4,745.8ドルで値幅は223.6ドルと前週(182.6ドル)を上回った。
利下げ観測を左右する原油価格、NY金と逆相関
ホルムズ海峡封鎖による原油はじめエネルギー供給の停滞は価格高騰を通じインフレ懸念を高めさせる。4月29日に終了した米連邦公開市場委員会(FOMC)も声明文にて「中東における動向は、経済の見通しを巡る高い水準の不確実性の一因となっている」と指摘し、警戒感を示した。
3月以降ここまで、指標となる米国産油種WTIの高騰はFRBの利下げ観測を後退させるばかりか一時は利上げ観測まで生むことになった。利下げ観測の強弱は、そのままファンドによるNY金および金ETF(上場投信)の売買行動に反映され、金価格を方向づけてきた。
WTI原油とNY金価格推移を複合チャートにすると、逆相関性がきれいに示される。WTIの上昇はNY金の売り要因となっている。
一時緊張高まった米イラン間
イラン情勢は停戦継続で膠着状態にあるものの、警戒を解けない状況が続いた。4月30日、イラン国営放送は最高指導者モジタバ・ハメネイ師の声明を公表した。「イラン国民は核やミサイル技術を国家の資産とみなしている」とし、トランプ米大統領が求める核放棄を拒否する姿勢を改めて示した。
一方、米ニュースサイトのアクシオスは、イランへの軍事行動に関する新たな計画について、トランプ米大統領が米中央軍のクーパー司令官から4月30日にも説明を受ける予定だと報じた。これは、大規模な戦闘作戦の再開を検討していることを示唆する。この日WTIは一時110.93ドルと4月7日以来の高値を付けた。
イラン情勢、米協議再開に前向きの姿勢
なお、その後のイラン情勢は一転し、戦闘終了に向け楽観見通しが浮上している。週が明け、日本が連休中の5月4日、不安定な停戦状態の中でホルムズ海峡にて米国とイランが交戦したとのニュースに、NY金は一時約1ヶ月ぶりの安値(4,510.1ドル)に売り込まれる場面も見られた。
ただし、停戦継続から戦争の終結方向を探っているとみられる米国サイドは、5月5日にヘグセス米国防長官が「現時点では停戦は確かに維持されている」などと説明した(ロイター、日経)。ルビオ米国務長官も同日の記者会見で、対イランの軍事作戦「エピック・フューリー(壮絶な怒り)」作戦は終了したと話した(ロイター)。イラン本土空爆など一連の攻撃は終了したという意思表示とみられた。
これらの発言の後を受け、トランプ米大統領は具体的な交渉状況は明らかにしなかったものの、イラン側との戦闘終結に向けた交渉に「大きな進展があった」としていた。こうした状況の中、5月5日のNY金は売りが一巡し、前日比35.20ドル高の4,568.5ドルで通常取引を終えていた。
そして5月6日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)など複数のメディアが、仲介役を務めるパキスタンの関係筋による話として、米国とイランは戦闘終結に向けた1ページの覚書で合意に近づいていると報じた。中東での戦争終結への期待が高まり、NY時間に米国産原油WTIは急落し、一時2週間ぶりの安値となる88.66ドルまで付けて95.08ドルで終了した(前日比7.19ドル安)。インフレ昂進や高金利長期化への懸念が和らぎ、米ドルが主要通貨に対し下落する中でNY金は、5月6日4,694.3ドルで通常取引を終了した。前日比では125.80ドル高で約1週間ぶりの高値となった。
JPX金約1ヶ月ぶりの安値、為替介入の円高で下げ拡大
先週(4月27日週)の国内金価格は、前述のように約1ヶ月ぶりの安値を付けたNY金の動きに沿って、水準を切り下げた。さらに4月30日には政府・日銀による為替介入とみられる動きに米ドル/円相場は161円手前の水準から157円台に急落(円高)、さらに155円台に達する下げ(円高)となったことが、国内金価格を大きく押し下げた。5月1日の大阪取引所の金先物価格(JPX金)の終値は2万3891円と、終値としては3月27日(2万3598円)以来1ヶ月ぶりの安値で終了した。週足は前週末比755円(3.06%)安で2週続落となった。レンジは2万3891~2万5085円で値幅は1194円と3週間ぶりの大きさだった。
なお、4月27~28日の日程で開かれた日銀の金融政策決定会合は予想通り金利据え置きとなった。ただし、9人の審議委員のうち3人が1.0%への利上げを唱え、執行部の据え置き方針に反対票を投じたことが注目された。
今週(5月4日週)の動き:NY金の戻りで国内金価格も2万4000円台半ばに復帰、NY金は米イラン間の動き次第、4月米雇用統計に注目
今週(5月4日週)に入ってからのNY金については、前述の通り反発基調を強めている。5月7日から日中取引が始まったJPX金は、連休中の祝日取引にてNY金の動きを映し、2万4000円台半ばまで水準を回復していた。日本時間の5月7日12時までの時点で、一時2万4473円まで買われている。
米国提示の「1ページの覚書」は14項目
トランプ米大統領は5月6日、米公共放送PBSのインタビューで、5月14~15日に予定する米中首脳会談の前にイランとの戦闘終結に合意する可能性があるとした。米国側が提示した「1ページの覚書」は14項目を盛り込んだものとされる。WSJは来週(5月11日週)、両国の交渉団がパキスタンの首都イスラマバードで協議する可能性があると報じた。また、ロイターは、戦闘終結に向けた「1ページの覚書」で合意した後、完全合意を目指す30日間の交渉が始まるとしている。
現時点で何らの合意はなく、「覚書」での合意は、30日間の交渉の入り口という位置づけとみられる。これまでもトランプ米大統領の楽観発言は実現せず、霧消した経緯がある。一方、イラン側はアラグチ外相が訪中し中国の王毅外相と会談。中東での緊張緩和に中国が乗り出す可能性も高まっている。米中首脳会談前にイラン情勢に一区切りつけたい米国の足元をみて動くイラン。第2回の協議が成立するのか否か。
経済指標では5月8日の4月の米雇用統計が注目事項となる。
