先週(3月23日週)の動き:米利下げ観測の後退・消滅と換金売りにNY金、一方で底打ちシグナルも、国内金価格は3ヶ月一時安値

先週(3月23日週)のニューヨーク市場の金先物価格(NY金)は、週初めに大きく売られたものの乱高下しながらも週後半に掛けて下げ幅を縮小することになった。3月27日のNY金の終値は4,492.50ドルで週足は前週末比82.4ドル(1.8%)安の4週続落となった。つまりイラン戦争が始まって以来、NY金は下げが続いていることを意味する。レンジは4,100.0~4,601.0ドルで値幅は501ドルと前週(571ドル)と同じく波乱の展開を映すものとなった。

NY金4週続落

4週目に入ったイラン戦争はトランプ米大統領による楽観見通しとは逆に米・イスラエルとイラン双方の攻撃が収まることなく長期化の様相を示している。長期化懸念の高まりによって原油価格が上昇し、米主要株価指数が大きく続落する中で、NY金の下げが続いてきた。

米利下げ観測の後退・消滅と換金売りにNY金水準切り下げ

イラン戦争が始まってここまで、原油価格の上昇がインフレ再燃懸念を引き起こし、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ観測を後退させ、NY金の売り手掛かりとされてきた。さらに時間の経過とともに年内利下げ観測の後退は利下げ観測の消滅に至り、先週(3月23日週)は年内利上げ見通しまで生まれるに至った。

そうした市場見通しを映す形で、過去1ヶ月、米国産原油WTIとNY金は逆相関性を強めていた。WTIの上昇がそのままNY金の下げにつながっているのは、ファンドの運用プログラムに沿ったものとなっている。

さらにイラン戦の長期化観測は株式市場でも売り手掛かりとされ、米国主要株式指数は軒並み水準を切り下げて来た。市場横断的なリスクオフ環境の中、金(ゴールド)は利益が出ている投資家が多いことから、現金捻出(キャッシュアウト)の対象となり、この点でも売りが続き、下落の背景となってきた。

トランプ発言で原油高騰、NY金乱高下

概ねこうした流れの中でNY金は水準を切り下げた。とりわけ週明け3月23日は、一時4,100ドルと取引時間中としては2025年11月24日以来4ヶ月ぶりの安値を記録するなど、大荒れの展開となった。前週(3月16日週)末にトランプ米大統領が、イランに対して「エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡を開放しなければ発電所を攻撃する」と48時間の時間を設け警告していた。

軍事攻撃が激化するとの懸念が高まり、週明けのアジア時間からWTI原油は100ドルを超えて上昇。NY金には売りが先行した。3月18日に開かれたFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見にて、パウエルFRB議長が、「FOMCメンバーの主要意見ではない」としながらも、「利上げの可能性を議論した」と述べていたことも売りを促した。

下げ過程で1月末の急落局面で付けていた安値(2月2日の4,423.20ドル)を下回ったところで、テクニカル主導の売りが加わり、下げが拡大した。上げでも下げでも流れの発生に乗じ、それを加速させ利益を上げる運用手法をとるファンドが動いたとみられ、下げが加速した。一気に4,100.0ドルを付けるところまで水準を切り下げた。

さすがに売りが一巡すると流れは自律反発に入り、下げ過ぎの修正ともいえる反転となった。その後、3月23日のNY時間に入り流れたのが、トランプ米大統領による「イランのエネルギーインフラに対する攻撃を5日間延期する」というSNSへの書き込みだった。警戒感が高まっていた市場では、原油価格が急落した。NY金は一気に買い戻され、当日の終値は4,407.3ドルとなった。

日足を基にしたテクニカル分析では、日中の安値からの大きな戻しは、底打ちのシグナルとされている。そのため、市場にはいったん、底打ちとの見方が広がった。ただし、今は平時でなく有事の時間帯のため、今後の展開を注視する必要がある。

NY金、日足のテクニカル分析では底打ち観も

この底打ち観測もあり、注目されたのが3月27日のNY金の値動きだった。NY時間に入って以降、WTI原油高(終値5.16ドル、5.46%高)は上昇し、米国株式も大幅に続落(主要株価3指数は軒並み終値で7ヶ月超ぶりの安値で終了)するなど、いわば下落環境だった。それにもかかわらずNY金は前日比116.2ドル高と逆行高となったためである。ここまでの展開から、換金売り(キャッシュアウト)が一巡したとの見方が出ている。

今回の売りは先行き見通しの悪化による売りではなく、現金が必要な人が必要な量を売ればそれで終わりという類の売りだった可能性がある。その兆しが、27日の逆行高ではないか。

JPX金、週足大幅続落(1,916円安)で一時約3ヶ月ぶりの安値

先週(3月23日週)の国内金価格は下げ幅が拡大し、週足は大幅続落した。時差の関係で前週末3月20日のNY金の下げ分が、週明け3月23日の国内金価格に反映されることも下げ幅を大きくした。3月27日の大阪取引所の金先物価格(JPX金)の終値は2万3598円だった。週足は前週末比1,916円(7.51%)安の大幅続落となった。

週初め3月23日のJPX金は前営業日比3278円安と2月2日以来(3989円)の大幅安となった。NY金は3月23日に一時4,100ドルまで売られた。ちょうどNY時間外の日本時間の午後遅い時間帯だったため、その下落がJPX金の価格にも反映された。週後半に戻りは見られたものの、この週初の下げが効いて大幅続落となった。

先週(3月23日週)のJPX金のレンジは2万2073~2万5224円で、値幅は3151円と大幅下落に見舞われた2月2日週の4019円以来の規模となった。ちなみに安値2万2073円(3月23日)は、2025年12月19日以来、約3ヶ月ぶりの安値水準となる。

今週(3月30日週)の動き:NY金に原油や米株の値動きと離れた動きが出るか注目、3月米雇用統計、2月米小売売上高に注目

NY金に独自の値動きが出るか注目

今週(3月30日週)もイラン情勢による原油をはじめとする市場全般的な動向を見ながらの展開となりそうだ。NY金については先週(3月23日週)、原油価格や米長期金利の値動きから離れる兆しが出ており、大きな注目点となる。背景として、換金売りが一巡した可能性がある。さらに3月26日には、NY金の中心となる取引(中心限月)が2026年4月物から6月物に移行する局面で、大きめのポジション整理(2万8287枚減少、1枚=100オンス)も見られた。この点からも、調整が一巡したという指摘がありそうだ。

外部環境では、トランプ米大統領の発言内容から、戦争状態の長期化の中で早期の収拾を図ろうとする焦りのようなものも感じられ、近い将来に戦況に変化をもたらす動きもありそうだ。それが米軍による地上戦への突入か否かは判然としない。

しかし、イラン側の攻撃も想定外に強く、当初の一方的な米国有利の状況は後退しているようにも見受けられる。その中でのNY金の値動きは、先行きの米国財政や米国政治状況などを読み、本来的な有事反応を示す兆しが出ている可能性もありそうだ。この辺りを注視したい。

3月米雇用統計、2月米小売売上高に注目

今週(3月30日週)は米国関連で重要な経済指標の発表も予定されている。イランへの攻撃から1ヶ月経過し、その影響が指標にどのように表れるかも要注目となる。4月3日に発表される3月の米雇用統計は、前回雇用者数が予想外の減少となっただけに注目度は高い。4月1日発表の2月の米小売売上高も要注目となる。