米国発の高配当利回り株投資手法として、「ダウの犬投資法」があります。この手法は、毎年年末にNYダウを構成する30銘柄の中から、配当利回りの高い順に上位10銘柄を選び、投資するというシンプルなルールですが、高い投資成果が期待されます。
本連載の2025年12月17日付の記事「年末に仕込む高配当戦略、日本版『ダウの犬投資法』」では、このダウの犬投資法を日本株市場に応用する方法を紹介しました。ダウの犬投資法の特徴は、年末に一度だけ高配当利回り銘柄を選別し、投資先を決めた後は、翌年まで基本的にポートフォリオを見直さず、いわば「ほったらかし」で運用する点にあります。
一方で検証を進めると、必ずしも年末というタイミングにこだわらず、毎年1月末に投資を行う方法でも、十分に効果的な戦略となることが分かってきました。そこで本稿では、投資時期の考え方を広げた拡張版の日本版「ダウの犬投資法」を紹介します。
日本版ダウの犬投資法と「1月末投資」への拡張
まずは、前回の記事で紹介した、毎年年末に高配当利回り株へ投資する「日本版ダウの犬投資法」についておさらいしておきましょう。
この手法では、NYダウと同様に30銘柄で構成されるTOPIXコア30指数の構成銘柄を投資対象とします。TOPIXコア30指数は、東京証券取引所に上場する銘柄の中から、時価総額や流動性が特に高い30社で構成されており、日本株市場を代表する大型株指数として位置づけられています。
日本版ダウの犬投資法のルール
1.年末時点でTOPIXコア30指数に採用されている銘柄から、今期予想配当利回りの高い順に上位の10銘柄を選別します。
2.上位10銘柄それぞれに、均等に投資を行います。そして1年間そのままポジションを変更しません。
3.1年後の年末に、再びTOPIXコア30採用銘柄から配当利回りの高い上位10銘柄を選別し、均等額投資のリバランスを行います。
今回は、このルールのうち「1」の部分を拡張します。具体的には、
「年末時点でTOPIXコア30指数に採用されている銘柄から選別する」
という条件を
「1月末時点でTOPIXコア30指数に採用されている銘柄から、今期予想配当利回りの高い順に上位10銘柄を選別する」
という形に変更します。
日本版ダウの犬投資法進化版、1月末の銘柄選別が有効な投資手法となるかを検証
このように拡張して考案した「1月末に銘柄選別を行う日本版ダウの犬投資法」が、どの程度有効な投資手法であるのかを検証してみましょう。検証では、1994年1月末を起点に本手法を実行し、その後の年間リターンを年ごとに累積する形で分析を行いました。検証期間は32年間で、直近については2025年1月末時点で銘柄を選定し、2026年1月9日までのリターンを2025年分の投資成果として扱っています。
その結果を示したものが図表1です。赤線で示した累積リターンは、毎年1月末時点で配当利回り上位10銘柄に入れ替えながら運用した「拡張版・日本版ダウの犬投資法」を表しています。これをベンチマークとして用いたTOPIX(配当込み)の累積リターンと比較すると、大きく上回っており、1月末投資開始とした拡張版の日本版ダウの犬投資法が、有効な投資手法であることが確認できます。
この結果からは、配当収益だけでなく、株価の値上がり益も含めて、効率的にリターンを享受できていることが分かります。
注2:母数はTOPIXコア30構成銘柄
注3:予想配当利回りは日本経済新聞社の毎年末時点での今期予想の現金配当額を用いる
注4:毎年1月末時点で今期予想配当利回りが高い方から該当する数の銘柄に等金額投資した場合の翌年のリターンを算出。絶対パフォーマンスは1994年1月末以降を累積している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
長期検証で見えた効果と銘柄数による違い
配当利回りの高い順3銘柄に限定した場合も、一定の有効性
さらに図表1では、投資対象とする銘柄数を減らした場合の検証結果についても示しています。配当利回りの高い順に3銘柄に絞って投資を行う日本版ダウの犬投資法についても、一定の有効性が確認できました。図表1の青線は、投資対象を3銘柄に限定した戦略の累積リターンを表していますが、10銘柄で運用したケースと比べるとパフォーマンスはやや劣るものの、ベンチマークであるTOPIXと比較しても高い水準にあります。
一方で、投資対象の銘柄数が少なくなるほど、保有銘柄が特定の業種に偏りやすくなる点には注意が必要です。その結果、パフォーマンスは、その時々の業界環境や景気循環の影響を強く受けやすくなります。極端なケースとして、配当利回りが最も高い1銘柄のみに投資した場合のパフォーマンスを見ると、図表1の茶色線が示すように、長期的にはTOPIXとほぼ同程度の水準にとどまりました。
以上を踏まえると、一定の分散効果を確保しつつ、銘柄選定や運用の実行しやすさも考慮した場合、投資対象を3銘柄とする拡張版の日本版ダウの犬投資法は、現実的かつ有効な選択肢であると考えられます。
見直し時期についても検証、1月末以外の効果は?
さらに、銘柄選別および保有銘柄の見直し時期について、1月末以外の月でも同様に効果が得られるのかを検証しました。その結果を示したものが図表2です。今回取り上げた1月末投資のケースは赤色の棒グラフで示しており、平均年間リターンは10.4%となっています。
図表1では累積リターンを示しましたが、図表2では各月ごとの投資成果を比較するため、平均年間リターンを用いています。実際にTOPIXとの比較で見ても、1月末投資は平均して年率4.04%の超過リターンを記録しており、投資開始時期を1月末に拡張した日本版ダウの犬投資法が有効な戦略であることが、図表2からも確認できます。
注2:母数はTOPIXコア30構成銘柄
注3:予想配当利回りは日本経済新聞社の毎年末時点での今期予想の現金配当額を用いる
注4:毎年の各月末時点で今期予想配当利回りが高い方から該当する数の銘柄に等金額投資した場合の翌年のリターンを算出。年間平均している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
他の月についても一定のリターンは得られているものの、投資戦略として採用するのであれば、平均で10%前後のリターンが期待できる月を選びたいところです。その点で見ると、2月末投資は少し期待しにくい結果となりました。2月末に投資を開始した場合の平均年間リターンは7.9%にとどまっています。
2月は3月期決算企業の年度末を控え、配当取りを意識した動きが市場で強まりやすい時期であり、配当利回りにもとづく銘柄選択効果が高まりやすい局面です。そのため、2月末に投資を行うと、こうした季節性によるリターンを十分に享受できない点が、パフォーマンスが伸び悩む要因になっていると考えられます。
利回り革命下でも有効な理由と実践のポイント
ところで、足元の市場環境については、市場平均の配当利回りが国債利回りを下回る時代を迎えるとの見方も出てきています。いわゆる「令和の利回り革命」とも呼ばれる状況ですが、その背景には、インフレ観測の高まりを受けた金利上昇と、株価上昇が進んだ結果として、配当利回りが全体的に低下している点があります。
このような局面では、投資家の関心が配当よりも金利に向かいやすくなるため、配当利回りにもとづく銘柄選択の効果が低下するのではないか、という見方も一部にはあります。
しかし、過去のデータを用いて歴史的に検証すると、必ずしもそうした見方が当てはまらないことが分かります。図表3で過去を振り返ると、2007年頃までの期間は、市場平均の配当利回りが国債利回りを下回る局面でした。それにもかかわらず、図表1が示すとおり、この時代においても日本版ダウの犬投資法は有効に機能していました。
注2:10年国債利回りは新発国債10年の複利ベース利回り
注3:配当利回りは日本経済新聞社の予想配当をベースに時価総額加重市場平均値。2022年4月までは東証1部市の場平均値を用いている
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
理由としては、市場全体の平均配当利回りが低下する局面ほど、相対的に高い配当利回りを持つ銘柄の希少性が高まり、投資家から選好されやすくなる点が挙げられます(1月9日付の広木隆氏の記事「『令和の利回り革命』の時代こそ高配当株」参照)。加えて、ダウの犬投資法は配当収益のみを狙う手法ではなく、株価の値上がり益も同時に享受することを前提とした投資戦略である点も、こうした環境下でも効果を発揮する要因と言えるでしょう。
1月末投資の日本版ダウの犬投資法における参考銘柄、本田技研(7267)など3銘柄
そこで、実際に筆者がマネックス証券のウェブサイトで提供されている「銘柄スカウター」の10年スクリーニング機能を用いて取得した予想配当利回りデータをもとに、さらにExcelで加工することで、3銘柄を保有する1月末投資の日本版ダウの犬投資法における参考銘柄を抽出しました(図表4)。図表4に示しているのは、足元のデータを用いて算出した3銘柄です。
1月末投資の日本版ダウの犬投資法を厳密に実践するのであれば、1月末時点でスクリーニングを行う必要があります。ただし、そこまで厳密に投資時期を固定しなくても、毎年おおむね同じ時期に銘柄の見直しを行う運用でも、実務上は十分に対応可能でしょう。また、オリジナルの手法では各銘柄に等金額を投資することが前提とされていますが、投資できる総額によっては、それぞれの銘柄について最低売買単位の株数を購入する形で実践することも現実的な選択肢といえます。
銘柄スカウターを使ったスクリーニング後にエクセルで銘柄抽出の処理をします。
銘柄スクリーニング後のExcelでの作業詳細は、前回の記事「年末に仕込む高配当戦略、日本版『ダウの犬投資法』」で示しているのでご参考ください。
銘柄スクリーニングの条件設定について
以下では、実際に用いたスクリーニング条件を示します。
[基礎条件]
市場:東証プライム、時価総額:12,000億円(1兆2000億円円)~
[詳細条件]
[指標]予想配当利回り:指定なし
東証プライム銘柄で時価総額が1兆2000億円以上の銘柄を対象に「予想配当利回り」を出力しす。詳細条件の設定中の「予想配当利回り」は、後の処理で必要な指標なので表示のみとします。
Excel処理のために行う「csvダウンロード」は200銘柄までの制限があります。そこで対象銘柄数が200銘柄以内であることを確認します。仮に、200銘柄を超えていたら、1兆2000億円で設定している時価総額の最低基準を少し増やして、対象銘柄を200銘柄までに抑えるようにしてください。
