日経平均は値動きの荒い状況が続いています。これまでの急騰への警戒感や中東情勢の混迷、さらにそれに伴う原油価格上昇への懸念などが複雑に絡み合い、相場は方向感のない展開へと転じてきました。

前回のコラムで資本市場が最も警戒するのは「悪材料」ではなく「見通しが立たないこと」と指摘しましたが、まさに市場はその状況にあると言えるでしょう。経験則で言えば、こういう時に予測の決め打ちは禁物です。刻々と変化する状況に合わせて小刻みに調整を続けるか、休むも相場と割り切って銘柄研究に時間を割くか、あるいは相場の乱高下の中で明らかに「売られ過ぎ」「買われ過ぎ」となった銘柄の発掘に徹するか、できることはそれくらいしかないように思います。

こういう時こそ、日々のニュースに過剰に振り回されず、ご自身のスタイルに合った投資スタンスで臨んでいただきたいところです。

着実に進んできた脱炭素化、GXは第2ステージへ

さて、今回は「GX2.0」をテーマに取り上げてみましょう。このGX2.0という言葉はここで勝手に命名したものですが、言わんとすることは、GX(グリーントランスフォーメーション)の第2ステージということです。

そもそもGXとは、エネルギー源を化石燃料由来から太陽光や風力といったクリーンで再生可能なものへの転換と捉えられています。実際、様々な企業がエネルギー消費量そのものの削減とエネルギー源のクリーン化を通じてGXに取組んでいます。

その結果、日本における温室効果ガスのネット排出量(排出量と吸収量の差)は過去30年の最低水準となり、2013年度比で2割以上の削減がなされるに至っています。

資源エネルギー庁の発表によると、1990年度の国内エネルギー最終消費量が原油換算ベースで約3.5億キロリットル、このうち化石燃料に由来するものが99%を占めていたのに対し、2024年度には最終消費量が2.9億キロリットルと、約2割減少したとしています。化石燃料由来の比率も90%程度まで低下したと試算できます。

より変化の顕著な電力に絞って見てみると、再エネ由来の電力比率は既に約3割に到達しています。概して、GXは着実に進捗していると評価できるでしょう。

再エネの理想と現実。転換点を迎えたエネルギー政策と日本の課題

課題1:コストメリットはあまりない

しかし、その過程で様々な問題点も噴出してきました。まず、クリーンとされる再生可能エネルギーのコストです。2020年の試算では、日本の再生可能エネルギー由来の発電コストは、化石燃料由来に比べて15%程度割高な水準にありました。世界的には再生可能エネルギーの方が発電コストは安いという調査も見られますが、日本では設置場所の制約や人件費の高さ、化石燃料由来の発電効率の高さもあり、再生可能エネルギーによるコストメリットはむしろないというのが現実なのです。

直近は円安や原油高騰などからコスト格差はかなり縮小しているはずですが、これも為替や市況次第と考えると、日本でさらに再生可能エネルギーが構造的に増加する状況にはまだないと言えるでしょう。

課題2:安定性に欠ける

天候次第という不確実性も再生可能エネルギーの大きなネックです。安定性に欠けるエネルギーは極めて使い勝手が悪く、ベースロード電源にはどうしてもなり得ないという制約になります。

課題3:電力需要の大幅な増加

エネルギー消費量の面でも状況が変わってきました。データセンターやAIの進化などにより、電力需要が大幅に増大する可能性が高まってきたのです。発電分野にとどまらず、ガソリン車から電気自動車へという流れも明らかに減速してきました。

課題4:諸外国との温度差と競争力低下のリスク

さらに、日本は着実に脱炭素化を進めていますが、諸外国ではそこまで積極的ではないという温度差も垣間見えます。高いコストを投じて真正直に対応しても、結局は日本企業の競争力が阻害されるだけではないか、という虚しさも無視できません。GXの重要さは認識しつつも、これ以上のアクションには逡巡の気配が高まってきているようにも見受けられるのです。

詰まるところ、理想論を掲げた従来型GXは徐々にその成果発現が難しくなってきており、GXそのものが転換点を迎えつつあるのかもしれません。GX2.0とは、まさにこうした変化を想定した言葉なのです。

課題解決のため再評価される原子力やSMR、次世代火力発電

GX2.0では、これらの課題に対する現実的な解へのアプローチがカギを握るはずです。最近、原子力発電への再評価が進んでいるのはその好例でしょう。東日本大震災時の悲惨な事故はありましたが、安全性の厳しい精査を前提にしっかり活用すべきではないか、という流れです。直近の地政学リスクの急速な台頭は、エネルギー安全保障という観点からも、ベースロード電源たり得る原発への期待を増幅させています。

実用にはまだ時間がかかるでしょうが、核融合発電もまたその有効な解の一つと予想します(このテーマは2023年初夏に取り上げています)。最近は、従来より迅速かつ機動的に対応できる次世代小型原発(小型モジュール炉:SMR)も注目され始めました。SMRは従来原発の20分の1程度の敷地面積で対応できるため、設備・建設コストの大幅抑制や立地制約の緩和も可能となります。小型であるが故に、万一の事故の際も安全性を確保しやすいというメリットもあります。既に世界各国でSMRは実証研究が進んでおり、2030年以降に導入基数は急増し、2050年までに累積で6,000億ドル以上の投資が見込まれるという観測も出ています。

さらには、炭酸ガスを排出しない火力発電というアプローチもあります。アンモニア発電や水素発電という技術で、こちらも現在はまだ実証実験段階ですが、GX2.0を担う新技術になるとの期待があります。

原発、SMR、核融合など「GX2.0」関連株をチェック

では、株式投資という観点ではどういった企業が考えられるでしょうか。

原発関連では、再稼働インパクトも含め、東京電力ホールディングス(9501)、関西電力(9503)、九州電力(9508)、東北電力(9506)、北海道電力(9509)、中部電力(9502)、四国電力(9507)、北陸電力(9505)といった電力会社に加え、三菱重工業(7011)、日立製作所(6501)、IHI(7013)、日本製鋼所(5631)、富士電機(6504)、明電舎(6508)といった電機・重工各社が挙げられます。

SMRにおいては、日揮ホールディングス(1963)、カナデビア(7004)、木村化工機(6378)などが、アンモニア・水素発電では、中外炉工業(1964)、千代田化工建設(6366)、岩谷産業(8088)などが、上記企業群に加わります。

また核融合発電では、市場研究会への参画や米英の核融合炉開発企業への部材納入などで実績を有する企業として、トーエネック(1946)、東洋炭素(5310)、イビデン(4062)、日本酸素ホールディングス(4091)、東光高岳(6617)、日本碍子(5333)、富士電機(6504)、古河電気工業(5801)、フジクラ(5803)、住友商事(8053)などが挙げられます。