先週(12月22日週)の米国株、指数全体がじわりと押し上げられる展開

2025年の米国株式市場は、残すところあと3営業日で年末を迎えようとしています。先週(12月22日週)の市場は堅調で、S&P500は前週比+1.4%、ナスダック100は+1.18%の上昇となりました。

注目すべきは、先週水曜日(12月24日)のクリスマスイブの取引です。半日取引という流動性が極端に低い環境の中、S&P500指数は0.3%上昇し、年内39回目となる史上最高値で取引を終えました。これは、同指数にとって2013年以来となる「クリスマスイブでの最高値更新」です。まさに投資家にとってのクリスマスプレゼントと言えるでしょう。

出来高は年間で最も少ない水準でしたが、それでも株価は下がらない。それどころか、指数全体がじわりと押し上げられる展開となりました。この光景は、2025年の米国株市場を象徴していると言っても過言ではありません。

S&P500年初来で+17.8%上昇、7,000ポイント到達へ

年初来で見ると、S&P500はすでに+17.8%の上昇となっています。残り数営業日で、僕が2024年末に想定していた2025年の年末水準である7,000ポイントに到達するとみています。
大きな波乱がなければ、これで3年連続のプラスとなり、この3年間の累積上昇率は約8割に達します。米ドル/円の為替のリスクをとった日本人投資家の円建てのリターンはほぼ110%で、この間の日経平均のリターンである約95%を15パーセンテージ・ポイント上回ります。

「この間、市場には常に不安材料が存在していました。高バリュエーションへの警戒感、トランプ関税政策を巡る不透明感、地政学リスク、米国政府機関閉鎖による経済統計の歪み、そして「AIバブル論」。しかし、米国株はそれらを一つひとつ振り切る形で上昇を続けてきました。

特に重要なのは、年末にかけての上昇がテクノロジー一辺倒ではなかった点です。12月24日(水)の取引では、S&P500構成銘柄のうち約4分の3が上昇して引けました。金融、生活必需品、一般消費財といったセクターにも資金が回り、市場の裾野が着実に広がっていることが確認できます。

恐怖指数と呼ばれるVIX指数は13台まで低下し、2025年の平均水準である19を大きく下回っています。投資家心理は極めて落ち着いており、「恐怖がない状態で株価が上がっている」。これは健全な上昇局面に見られる典型的な特徴です。

労働市場は徐々に正常化、企業業績も底堅さを維持

マクロ環境を見渡しても、株式市場を大きく揺るがす材料は見当たりません。12月24日(水)発表の新規失業保険申請件数は21万4千件と市場予想を下回りました。失業率は4.6%まで上昇していますが、急激な悪化ではなく、労働市場が徐々に正常化している過程と解釈できます。

インフレ指標も落ち着きを見せており、FRB(米連邦準備理事会)は2026年に向けて段階的な利下げ余地を残しています。金利が急騰しない限り、株式市場にとって致命的な逆風となる可能性は低いでしょう。

企業業績も底堅さを維持しています。第3四半期には米国企業利益が過去最高を更新し、年末商戦を示すレッドブック小売売上高も前年比7%を超える伸びを記録しました。消費は減速しているものの、崩れてはいません。「景気は強すぎず、弱すぎず」という状態が、結果として株価を支えているのです。

半導体、データセンター、クラウド関連企業の受注やガイダンスは引き続き堅調

こうした中で、AIを巡る議論も一段と冷静さを増したのです。2025年は「AIは本当に収益化できるのか」「設備投資が先行しすぎていないか」といった疑念が何度も浮上しました。しかし実際には、AI関連投資が急減速したわけではありません。半導体、データセンター、クラウド関連企業の受注やガイダンスは引き続き堅調です。年末にかけて再びテクノロジー株が上昇したことは、市場が「AIは一過性のテーマではない」と判断している証左でもあります。

「調整=トレンド転換」ではないため、「恐怖に反応しすぎないこと」が大切

もちろん、2026年に向けて株価の調整がないというわけではありません。S&P500は2025年4月の調整後、堅調に推移してきましたが、2025年10月末から2025年11月末にかけて約5%の調整があり、投資家を不安にさせる場面もありました。ただし2025年12月に入ると、その下げを完全に取り戻し、再び史上最高値を更新しています。

つまり、2025年11月のような調整は米国株市場では一般的なことだということです。僕は繰り返しお伝えしていますが、S&P500は長期的に見れば、年に1回は10%超の調整が起き、5%程度の調整は年に3回ほど発生します。短期的な調整は、新しい年が始まってからもいつ起きても不思議ではありません。ただし重要なのは、「調整=トレンド転換」ではないという点です。

2025年を通じて繰り返し示されたのは、悪材料が出ても米国株市場は崩れず、長期的な上昇トレンドが維持されたという事実です。これは、企業収益とマクロ環境というファンダメンタルズが、依然として高い耐久力を持っていることを意味します。

2025年の市場は、投資家に一つの明確な教訓を残しました。それは、「恐怖に反応しすぎないこと」です。不安材料は常に存在します。しかし、それを理由に市場から降りてしまえば、この3年間のリターンは手に入りませんでした。年末の静かな上昇は、その事実を改めて思い出させてくれます。

2026年も「STAY INVESTED」、下落局面を恐れずに投資を続けられるかどうかがカギ

2026年も、決して一直線に上昇する相場にはならないでしょう。それでも、ファンダメンタルズと需給環境が大きく崩れない限り、米国株は引き続き「簡単には下がらない市場」であり続ける可能性が高いと考えています。

投資家として、2026年も「STAY INVESTED」、すなわち投資を継続すること、いや、下落局面を恐れずに投資を続けられるかどうか、その姿勢が改めて問われる一年になるでしょう。

これまで市場に居続け、投資を継続してこられた皆さまは、本当におめでとうございます。2026年が、皆さまにとって実り多い一年となりますことを、心よりお祈りしております。

どうぞ良いお年をお迎えください。

マネックス証券チーフ外国株コンサルタント
ハッチこと、岡元兵八郎