2026年は名実ともにデフレからの脱却となる見通し

2026年の東京株式市場は国内経済の拡大やそれに伴う企業業績の伸びを背景に堅調な展開が予想される。2025年は物価の上昇に賃金が追い付かない実質賃金のマイナスが続いたが、2026年は人手不足などで賃金が高水準で上昇する一方、物価の伸び鈍化などでこれを解消し、名実ともにデフレからの脱却となる見通しである。

高市内閣による「責任ある積極財政」政策を背景に、個人消費の拡大で名目GDP(国内総生産)の増加が期待される。企業業績では2027年3月期はトランプ関税の影響も一巡し、大手調査機関では本業の儲けを示す営業利益は12%の増益と試算している。

2026年3月期の日経平均株価の1株あたり利益は2690円前後。来期12%増益で3012円強となり、PER20倍まで評価すれば単純計算で日経平均株価は6万円に乗せる計算になる。到達時期は翌年の増益が見え始める年末を想定する。

資本効率化の動きは継続、株式市場への追い風に

企業サイドでは2026年も資本効率化の動きが継続するとみられることも株式市場には追い風だ。東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)1倍割れの是正を求めて以降、各企業はROE(株主資本利益率)の改善をさらに進めている。PBR=PER(株価収益率)×ROEの算式で求められるため、自己資本(株主資本)を減じる自社株買いや増配などが有効な手段となるからだ。政策保有株の売却も進む。自社株買い(事業法人)は2025年11月時点で10兆円を超えた。この流れは2026年も同様で、全体相場の調整時に下支え要因になることも期待される。

大手の運用会社によれば、2023年3月期末のROEは8.1%だったが、直近では9%台に乗せてきており、2027年3月期末には10%に乗せる可能性もある。米国は14倍、欧州では12倍程度となっており、10%乗せなら海外投資家が日本株を長期的に評価する可能性がある。さらに企業は設備投資を積極化している。将来の収益獲得に向けた動きは重要となる。

リスク要因は米国経済のインフレ加速や景気失速である。トランプ関税の影響が2026年から本格化するとの懸念がある。また、国内では高市内閣の支持率低下や長期金利上昇ピッチの速さなどにも注意を払いたい。

物色の軸は高市政権の重点投資対象17分野

物色は高市政権が掲げる重点17分野が軸で、特にAI・半導体、造船、防衛、デジタル・サイバーセキュリティなど経済安全保障に関係する分野が注目されそうだ。2026年度予算や6月ごろに閣議決定される「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」でも、注力する姿勢が示される見込みである。

造船業関連銘柄

例えば、政府が復活を後押しする造船業は、2026年にはその流れが明確化する可能性がある。日本は一時造船で世界首位だったが、現在ではシェア7割を握る中国の後塵を拝している。経済安全保障において造船は重要で、米国との連携も模索している。名村造船所(7014)は買収で規模を拡大し、大型造船の建造も可能になっている。三井E&S(7003)は船舶用ディーゼルエンジン国内首位で、中国塗料(4617)は船舶用塗料で世界2位の位置にある。

フィジカルAI関連銘柄

また、フィジカル(論理的)AIが有望だ。フィジカルAIとは、ロボットが現実の(物理的な)世界を認識および理解し、最適な行動を起こすAIのことである。ロボットが人の言葉を理解し、自律的に制御する。2025年12月に開催された国際ロボット展ではファナック(6954)、安川電機(6506)がフィジカルAI搭載ロボットを展示して話題となった。ロボットアームなどを滑らかに動かすのに必要な精密減速機を手掛けるハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)、ナブテスコ(6268)などにも注目したい。

半導体関連銘柄

半導体関連株は引き続き注目度が高い。製造工程は「前工程」と「後工程」2つに分類される。エヌビディア[NVDA]の先端AI半導体の登場で、チップに切り出した後の後工程が複雑になり重要視されている。性能を上げるためにチップにHBM(広帯域メモリ)を隣接する必要がある。切断装置などのディスコ(6146)、テスター(検査装置)のアドバンテスト(6857)、パッケージ基板のイビデン(4062)、封止装置などのTOWA(6315)、後工程材料のレゾナックホールディングス(4004)などが該当する。

一方、前工程では微細化で線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートル関連の量産が本格化する。前工程装置で世界有数の東京エレクトロン(8035)、検査装置のレーザーテック(6920)、洗浄装置のSCREENホールディングス(7735)、超純水装置の野村マイクロ・サイエンス(6254)などが有望となる。

サイバーセキュリティ関連銘柄

サイバーセキュリティ対策も強化される。2025年はランサムウエア攻撃による被害も目立ったが、「サイバー対処能力強化法」が整備され、2026年は4年ぶりに新たな「サイバーセキュリティ戦略」が策定される。先端のネットワークセキュリティに強みがある網屋(4258)のほか、グローバルセキュリティエキスパート(4417)、サイバーセキュリティクラウド(4493)などが有望といえる。

防衛関連銘柄

また、防衛関連では三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)、IHI(7013)の「御三家」を軸に、引き続き先高期待が大きいと言えそうだ。