先週(12月1日週)の動き:NY金は利下げを織り込み水準切り上げも上値が重い展開、手掛かり材料のないFOMC

利益確定売りが先行したNY金

先週(12月1日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、前週(11月24日週)にFRB(米連邦準備制度理事会)の主要メンバー数名が12月9~10日のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げを支持する発言をしたことを受け、切り上げた水準に対する強弱感から上値の重い展開となった。

週初めの12月1日こそ前週(11月24日週)の勢いを維持し一時4,299.6ドルまで買われたものの、それが週を通しての高値となった。12月FOMCでの利下げをほぼ織り込むかたちで前週から累計で200ドル超水準を切り上げたことで、週を通して利益確定売りが上値を抑えることになった。

週末12月5日の終値は前週末比11.9ドル(0.28%)安の4,243.0ドルで、週足では反落となった。価格レンジは4,194.0~4,299.6ドルで値幅は105.6ドルと前週の226.7ドルからは大きく縮小した。週初12月1日に4,299.6ドルまで付け終値は4,274.8ドル、週末12月5日には4,290.5ドルまで付け4,243.0ドルと上値には売りが控える状況にある。

手掛かり材料にならなかった9月のインフレ指標

今週(12月8日週)開催されるFOMCは10月から11月初旬まで続いた米政府機関閉鎖の影響で、主要経済指標がほとんど公表されず判断材料の少ないことがネックになっている。FOMCメンバーは、減速が指摘される労働市場を懸念して利下げを主張する側と、粘着型のインフレの持続から再燃を懸念して更なる利下げに反対意向を示す側に2分されている。意見対立は判断材料の少なさでより深まっているとみられる。

そのような状況でメンバーが直近で手に入れたインフレ指標が12月5日に発表された9月の個人消費支出(PCE)価格指数だった。なかでもFRBがインフレ指標として重視する食品とエネルギーを除いたPCEコア価格指数は前月比0.2%上昇で、3ヶ月連続で同率の伸びとなり、市場予想と一致した。前年同月比では2.8%上昇で、こちらも市場予想と一致した。この結果は判断材料となりにくいものだった。

一方で同時に発表された9月の個人消費支出は前月比0.3%増と、8月の0.5%増から伸びが鈍化した。雇用見通しの不確実さと生活費の上昇によって消費が抑制され、米景気は7~9月期末に失速した可能性を示唆した。

総じてインフレ圧力が目標(年率2%)を上回る水準で横ばいで推移する中、消費の減速が見られたことを受け、利下げ観測を後押しするものとなったが、これとて9月のデータであり、その後の状況を見たいだろう。11月の米雇用統計は12月16日、同消費者物価指数(CPI)は12月18日に発表される予定となっている。

国内金価格も最高値圏で横ばい、国内長期金利の動向に注目

NY金の上値の重さを映すように国内金価格も上値を抑えられる形で、週足のレンジも縮小し小幅に続落となった。大阪取引所の金先物価格(JPX金)の週末12月5日の終値は2万1366円で、週足は前週(11月24日週)末比82円(0.38%)安で続落した。米ドル/円相場が155円を挟み小動きに推移したことで、NY金の値動きに沿った流れとなった。レンジは2万1190~2万1653円で値幅は463円と前週の881円から大幅に縮小したのはNY金と同じである。前週(11月24日週)からほぼ横ばいとなったが、水準としては過去最高値圏を維持していることに変わりはない。

国内のトピックとしては日銀による年内の利上げ観測の高まりの中で、長期金利の指標となる10年物国債利回りが上昇(債券価格は下落)し12月5日に1.95%を付けたことが目を引いた。国内長期金利の上昇は目立って円高につながっていないものの、節目の2%に到達する場合には円高方向への動きが予想され、国内金価格には押し下げ要因となる。米ドル/円相場には今週(12月8日週)のFOMCの結果も影響するとみられる。

今週(12月8日週)の動き:分断予想されるFOMCに注目、パウエル議長のタカ派発言で値動き拡大に注意

投票行動の分裂が予想される異例のFOMC

今週(12月8日週)は何と言ってもFOMCという最大イベントが注目点となる。3会合連続の0.25%の利下げが織り込まれており、結果は予想通りになりそうだ。引き下げられると政策金利は3.5~3.75%となる。しかし、前述したようにFOMCメンバーの意見の割れが焦点となる。投票行動の分裂などFRB内の分断が何らかの形で表面化することで、2026年以降の先行きの見通しに影を投げかけ、市場の波乱につながる可能性もありそうだ。

パウエルFRB議長は事前に各メンバーと個別に話し合いをし、ここまで全会一致を目指す議事運営をしてきたが、利下げに関しては前回10月会合にてカンザスシティー地区連銀のシュミッド総裁が反対票を投じている。11月中旬には多くの地区連銀総裁が連続利下げに対し慎重な姿勢を示しており、反対票が増えることは十分予想される。仮に地区連銀総裁が3人反対すれば2019年9月以来となる。

パウエル議長、残された会合をにらむ試金石のFOMC

パウエル議長の議長任期は2026年5月までで、すでに再任の可能性がないことからレームダック化は始まっていると言える。さらに次期議長最有力候補として大統領の腹心とされるハセットNEC(米国家経済会議)委員長の名前が挙がっていることも影響力の低下につながりそうだ。先週(12月1日週)はハセットNEC委員長による今回のFOMCでの利下げ支持発言まで飛び出している。

トランプ米大統領は、年明け2026年1月にも次期議長候補の発表を行うとしており、該当人物の発言内容に市場の関心が向けられることになる。いわゆる影のFRB議長の存在が、パウエル現議長が取り仕切る予定の2026年1月(27~28日)、3月(17~18日)、4月(28~29日)の3会合に影響を与えることになる。

この点で今回12月の会合にてパウエル議長が、どこまでメンバー間の意見統一をできるかが今後の試金石になりそうだ。予想通り利下げとなってもパウエル議長は声明文に今後の利下げに対し慎重スタンスを盛り込んだり、FOMC終了後の記者会見でタカ派的スタンスを示す可能性もありそうだ。内外ともに金価格への影響が大きくなる可能性、また価格の振れ幅が拡大する可能性があり要注意と言える。

想定レンジはNY金が4,100~4,250ドル、JPX金は2万500~2万1500円に置いている。