先週(10月20日週)の動き:過去最大の下げ幅に見舞われたNY金、JPX金も最高値から急落 金市場を取り巻く環境に大きな変化なし
先週(10月20日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、週初10月21日に利益確定に端を発した売りが売りを呼ぶ下げモメンタムが発生し、週初めの10月20日に一時4398.0ドルの過去最高値を記録するまで続いた急騰局面に急ブレーキがかかることになった。
10月20日のNY金の終値は4,359.4ドルとやはり最高値を更新し、9月以降の上昇率は843.3ドル(23.98%)に達していた。翌10月21日はNY時間外のアジア時間から売りが先行し水準を切り下げながら相場は進行した。何か特別の手掛かり材料が飛び出し急落というパターンではなく、アジア時間、ロンドン、NYの時間帯を下げ続け、終了してみれば前日比250.3ドル安と過去最大の下げ幅(日経)となった。下げ率では5.74%安と2013年6月20日(6.39%の下げ)以来の大幅下落(日経)となった。
下げの原因は整理売りの連鎖
下げの背景に具体的な材料はなく、市場の内部要因主導型の下げと言える。前週(10月13日週)まで週足で9週連続の上昇となるなど、テクニカル面での過熱シグナルを無視する形で買い建て(ロング)を増やしていた目先筋のファンドと個人投資家の利益確定に伴うポジション(持ち高)の整理売りが連鎖したものとみられた。
過熱感は市場参加者の誰もが持っていたもので、特に9月を通しさらに10月に入って以降の金ETF(上場投信)への資金流入は加速し、10月13日週は80億ドル(約1200億円)にも上り、2018年以降で最大の週間流入額となっていた(ワールド・ゴールド・カウンシル調べ)。
さらに先物市場でも目先筋のロング(買い建て)が急速に膨らんでいたとみられるが、ここでも過熱した投機的ポジションが一斉に整理されたとみられる。
米政府機関閉鎖の影響
難点は、米政府機関の閉鎖の影響で、9月23日分を最後に市場参加者別のポジションの変化についてのデータが手に入らないことだ。周辺情報から推測で取引や分析をする状況にある。このいわば手探り状態の環境が一方通行的な売りに広がりを持たせ、思わぬ大幅な下げにつながったとみられる。
新雪部分が一気に崩れ、下げが拡大
総じて言えるのはここまで上昇基調を続けてきた金市場を取り巻く環境に変化がないことだ。今回の急落は、金融市場での表現を使うなら市場が起こした一種のtantrum(タントラム、かんしゃく)と捉えている。例えるならば、表層雪崩が起きたということだろう。
8月下旬以降にFRB(連邦準備制度理事会)による利下げ再開、米トランプ政権によるFRBの独立性の侵害(クックFRB理事の一方的解任通告)、地政学リスクの高まり(ロシアによる欧州諸国に対する領空侵犯)など、複数の有力な買い材料に水準を切り上げていたNY金。
10月に入って以降は、米国内の政治分断を象徴する予算協議決裂による政府機関の閉鎖が加わり、さらに資金流入が加速した。極めつけは10月16日に米地銀2行で融資を巡るトラブルが表面化し、一時信用リスク連鎖への懸念が高まったことだった(後に単発的な事例と判明し沈静化)。
週間ベースで金ETFへ記録的資金流入が見られたと前述したが、先物ポジションも急増したとみられる(データ未発表)。いわば直前のドカ雪で積もった新雪部分が一気に崩れたことで下げが拡大したと見ている。つまり表層雪崩が発生した印象だ。
NY金週足、10週ぶりに反落
10月21日の急落後のNY金だが、その後も値動きの荒い流れが続いている。ポジション(持ち高)整理とみられる売りが続く一方で安値拾いの買いもあり足元では4,000~4,150ドルのレンジ相場が展開されている。
そのような中で10月24日のNY金は4,137.80ドルで終了した。売りが先行し、NY時間早朝に一時4,055.70ドルを付け、この日の安値に。通常取引に入って間もなく発表された9月の米消費者物価指数(CPI)が予想より落ち着いたものとなったことで、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ継続観測が高まり、一転買い優勢に転じ、下げ幅を縮小して取引を終了した。
週足は前週末比75.5ドル(1.79%)安となり、前週まで続いた週足ベースでの上昇は9週連続で途絶えることになった。取引レンジは4,021.2~4,398.0ドルで、値幅は376.8ドルにまで拡大した。
JPX金も週足10週ぶりに反落
NY金の急落に対し、国内金価格も反応し大きく反落した。時差の関係から週初めは前週末のNY金の終値を反映し、週末は当日のNY時間外ロンドンの午前(NY早朝)までの価格が反映される。そこに米ドル/円相場の変動が加わる。
先週(10月20日週)の大阪取引所の金先物価格(JPX金)は、10月20日に一時2万2288円と取引時間中の最高値を更新したものの、当日の終値は前週末比1265円安の2万765円と大荒れ状態となった。これは10月17日の大阪取引所の夜間取引が前日まで6営業日続伸していたNY金の上昇を受け高値を更新する一方で、大きく反落した10月17日のNY金の影響を受け、日本時間の週明けの取引で売られたことによる。さらに10月21日のNY金の下げは、10月22日の取引に反映され、前日比865円安で終了した。
週末10月24日の終値は2万522円となり、週足は前週末比1508円(6.84%)安となった。NY金と同様に週間ベースでの連騰は9週で終了することになった。取引レンジは1万9707~2万2288円で、値幅は2581円と前々週の2351円を上回った。週末にかけて米ドル/円相場が2円ほど円安方向に動いたことはサポート要因となったが、NY金の下げの影響が大きかった。
今週(10月27日週)の動き:FOMC、パウエル議長の記者会見の内容と共にバランスシート縮小の停止の有無 米中首脳会談に注目 NY金4,000~4,150ドル、JPX金1万9700~2万1000円を想定
すでに指摘したように大幅な調整安状態となったNY金だが、取り巻く環境に大きな変化はなく、基本的な上昇トレンドは継続すると思われる。ただし、10月中旬まで見られた過熱相場の後だけに強弱感の対立と共にポジション調整の売りも続くことから、当面は値固めのレンジ相場に移行するものとみられる。
下値のメドはどうなるか。上昇が加速する前の9月末のNY金の水準は3,900ドルほどで、下げが拡大した場合には、まずはこの水準がサポートラインになると見られる。その前の水準として心理的節目の4,000ドルが維持できるか否かが注目点となる。
先週(10月20日週)は4,000ドルに接近すると押し目買いが入り、4,100ドル台に復帰する流れが続いた。ただし、米中摩擦や地政学リスク、米政府機関閉鎖など買い要因が後退すると4,000ドル割れも視野に入りそうだ。
今週(10月20日週)は4,000~4,150ドルをNY金の想定レンジに、JPX金は1万9700~2万1000円を想定するが、振れ幅は拡大する可能性がある。
注目材料は言うまでもなく10月28~29日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)。パウエル議長の記者会見の内容と共にバランスシート縮小の停止の有無に注目したい。10月30日に予定されている米中首脳会談も注目点となる。
