第1回ベッセント・植田会談後、約1ヶ月半で10円弱の円高
ベッセント米財務長官は先週行われたあるインタビューの中で、先日植田日銀総裁と話したことを明かした上で、「日銀はインフレ対策で後手に回っているかもしれない」「日銀は利上げをすべきだ」などと語った。
ところで、これまでに明らかになったベッセント長官と植田総裁の「会談」は今回が2回目。1回目は、ベッセント氏が正式に財務長官就任を承認された直後の2月初めに行われたとされたが、その後から日本の金利は急上昇に向かった。「会談」直前、0.7%程度だった2年債利回りは、3月下旬にかけての約1ヶ月半で0.9%近くまで上昇した(図表1参照)。
この日本の金利の急上昇が主因となって、日米金利差(米ドル優位・円劣位)も急縮小に向かった。日米2年債利回り差は、3.5%程度から3月下旬には3%割れ近くまで、一気に約0.5%も急縮小した(図表2参照)。そしてそれにほぼ沿うような形で、米ドル/円も155円程度から3月中に146円まで、最大で10円近い下落となった。
この第1回目のベッセント・植田「会談」後のように、この第2回目の「会談」後も金利と為替相場の反応が起こるなら、この先日本の金利は上昇、日米金利差は縮小し、米ドル安・円高に向かうことになる。単純にこれまで見てきた第1回「会談」後と同じようなプライス・パターンが起こるなら、9月末にかけて日本の金利が大きく上昇することにより、米ドル/円は年初来の安値、139円をトライするといった見通しになる(図表3参照)。
第1回会談後のもう1つの特徴、ヘッジファンド「謎の円買い」
第1回目のベッセント・植田「会談」後の、もう1つの特徴的な動きが代表的な投機筋であるヘッジファンド(以下、ヘッジF)の円買いであった。ヘッジFの取引が反映されているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、まさにこの第1回ベッセント・植田「会談」の頃に、それまでの売り越し(米ドル買い越し)から買い越し(米ドル売り越し)に転換した。そしてその後の米ドル売り・円買い拡大が、米ドル安・円高のリード役になったようでもあった(図表4参照)。
図表4を見ると、日米金利差縮小に沿う形で米ドル安・円高が広がるところとなったため、ヘッジFは米ドル売り・円買いを拡大したという、あくまで合理的判断に過ぎないようにも見える。
しかし図表5で見ると、日米金利差は絶対的にはまだ大幅な円劣位が続いていた。そのように金利差から見ると不合理であるにもかかわらず、ヘッジFは空前の規模で円買いを拡大したという「謎の円買い」にも見える。この「謎」に対する1つの解答は、トランプ政権の円高誘導への連携ということになるだろう。
CFTC統計の円買い越しは4月末には18万枚近くまでと、2016年に記録した2024年までの最高7万枚の約2.5倍にも急拡大した。その後は縮小に転じ、8月12日時点では7万枚まで縮小した。しかしトランプ政権の円高誘導と連携しているなら、日本の金利上昇をにらみ、円買いの再拡大に動く可能性には注目できるだろう。
