現在のファンダメンタルズ:米中協議への期待によるリスクオン
先週(5月5日週)のレンジと終値(マネックストレーダーFXのBidレート)
・米ドル/円: 142.348円~146.187円 145.379円
・ユーロ/米ドル:1.11968ドル~1.13807ドル 1.12480ドル
・ユーロ/円: 161.596円~163.937円 163.531円
先週(5月5日週)の米ドル/円:米中協議への期待で一時146円台
先週(5月5日週)は週前半、東京市場がゴールデンウィークに重なり取引は低調となっていたものの、トランプ米大統領が中国に対して強気な発言を行ったことで、主要中銀総裁が最近よく使う言葉「不確実性(uncertainty)」を懸念したリスクオフの動きによる株安と米ドル安の動きが先行しました。
米ドル/円は5月6日NY市場で週間安値となる142.348円をつけたところで底固めの動きとなり、NY引け後には「ベッセント米財務長官とUSTR(米通商代表部)代表が、米中協議開始に向け中国当局者と会談」とのヘッドラインによりリスクオフの巻き返しとなりました。5月7日NY後場のFOMC(米連邦公開市場委員会)では予想通り現状維持となったものの、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が会見で「利下げを急がない」と発言したことで一段高の流れへ。
その後週末にかけては、週末に米中協議が開催されることへの期待感、さらにトランプ米大統領による「株を買え」という2度目の相場操縦発言があったことから完全にリスクオンムードとなり、株式市場は上昇。為替市場では米ドル/円が146.187円の週間高値をつけ、5月9日は週末イベント前のポジション調整からやや利食いが入っての引けとなりました。
先週(5月5日週)のユーロ/米ドル:米ドル高の動きから1.11ドル台後半まで続落
先週(5月5日週)のユーロ/米ドルは、対米ドルの動きとしては米ドル/円同様で、5月6日NY市場で週間高値となる1.13807ドルをつけ、5月9日東京前場には1.11968ドルの週間安値を見た後にやや戻しての引けとなりました。
先週(5月5日週)は週前半のリスクオフと週後半のリスクオンという流れで考えると、株式市場においては日経平均株価が下げた後に上昇に転じる動きでした。日経平均株価とユーロ/円の動きに相関があることから、ユーロ/円が同様に5月6日までの下げとその後の反転上昇という動きとなり、このユーロ/円の動きがユーロ/米ドルの動きを相殺していたという面もありました。
米ドル/円もユーロ/米ドルも、米中協議の行方が最大の材料です。本日5月12日に発表される予定の米中間の今後の協議の枠組み、そして協議中の暫定関税の税率がどうなるのかを見てからでないと、今週(5月12日週)は動きにくいということになります。また関税発動後、最初の米国CPIが5月13日に発表され、これまでの価格転嫁の影響を検討することとなります。まだ大きく影響は出ていないはずなので、今回の数字次第では今後の利下げ思惑が後退する流れにつながる可能性があります。
米ドル/円チャート(週足)、下降トレンド継続もチャンネル上限は上抜けか
長期的な判断は週足で行いますので、まずは週足チャートをご覧ください。

・上昇トレンド=週足終値が移動平均線の上にある
・下降トレンド=週足終値が移動平均線の下にある
トレンド転換の判断はダマシを排除するため、2週連続で移動平均線を上回るか、下回った時にトレンドが転換したという見方をします。
週足チャートでは、20週移動平均線を下回る展開は継続中ですが、年初来高値からのレジスタンスライン(青)とそれに平行なライン内での動きは、今週(5月12日週)の動き次第で上抜ける可能性が出て来ました。今週末の引けを見るまでは確定しませんが、週初の段階ではギャップアップして始まったことから、チャンネル上限を上抜けての動きになっています(図表1)。
テクニカルには2024年9月安値139.575円をトライできなかったことも大きかったと思います。今回の安値は139.880円で底打ちし、先週のリスクオフの巻き返しにより現状は円高の流れを継続するか、円安方向に流れを変えるかの節目にあります。
ただ米中間協議が順調に進むとしてもまだ結論は出ていませんし、以前よりは関税が高くなることも間違いないでしょう。中長期的には今のリスクオンの動きが続くことは逆に難しいのではないかと考えます。
日足チャートで分析を続けます。
米ドル/円チャート(日足)、4月23日のゴールデン・クロス状態が続く、デッド・クロスを待ち米ドル/円の売りの方針も継続
短期的な判断は日足で行います。

・買いシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を下から上に抜くGC
・売りシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を上から下に抜くDC
日足チャートでは、各種ラインを引き直しました。週足チャートで示した年初来高値からの下降チャンネルは、日足チャートではそろそろ継続判断が困難となってきましたので、新たに4月安値からの上昇チャンネル(黄色)を引いてみました。またフィボナッチ・リトレースメントによる値幅観測も年初来高値と年初来安値を起点としたもの(黒)に加え、3月高値と4月安値を起点としたもの(青)を表示してあります(図表2)。
年初来高値からの38.2%戻し(147.135円)と4月高値からの61.8%戻し(146.879円)が近い位置にあることから、今後米ドル/円が一段高となる場合のターゲットとして147円が妥当な水準です。逆に同水準までは米ドル売りは出にくくなってくると見ておいた方がよさそうです。
5日移動平均線は4月23日のゴールデン・クロス状態が継続しています。これがいつまで継続するかわかりませんが、少なくともこの状態が続いている間の米ドル売りは避けるべきです。しかし、4月安値から6円以上上昇してきていることを考えると、次のデッド・クロスを待って米ドル/円の売りで入る方針もそのままで良いと思います。
ユーロ/米ドル、長期トレンドはユーロ買い継続、当面は下降チャンネルの中での動きに注目
ユーロ/米ドルのチャートから見ていきます。


週足チャート(図表3)は移動平均線を上回った状態を維持していますが、2021年11月以来の高値をつけたことで現状は調整局面入りとなってきました。
日足チャート(図表4)ではこの高値からの短期下降チャンネル(黄色)の中での下げを継続中です。また、フィボナッチ・リトレースメントによる値幅観測も米ドル/円同様、引き直しました。年初来安値と年初来高値を起点としたもの(黒)に加え、3月下旬安値と4月高値を起点としたもの(青)を表示してあります。年初来安値からの38.2%押し(1.10399ドル)と3月下旬安値からの61.8%押し(1.10675ドル)がほぼ同じ水準にあり、今後のユーロ/米ドルの下値の目途としては1.10ドル台半ばがターゲットになってくるでしょう。
2本の移動平均線の間隔は狭いままでダマシが発生しやすい状況ですが、直近では5月8日の下げでデッド・クロスが発生しています。今回のクロスも短命に終わる可能性はありますが、ユーロ/米ドルにおいても米中間協議への期待がある限り安易にユーロ/米ドル買いに動くのは危なそうです。短期的な視点とはなりますが、当面は高値からの下降チャンネルの中での動きを注目していきます。
ユーロ/円は、引き続き日足チャートで判断、165円の大台をターゲットとする流れ
次にユーロ/円のチャートです。

ユーロ/円週足では移動平均線よりも上にあるためトレンド的には上昇トレンド継続中です。先週のリスクオフの巻き返しで一段と底堅い流れになってきましたが、引き続き長期方向性の判断は行わず、短期的な方向性を日足で判断します。(図表5)。

日足チャートでは4月7日のゴールデン・クロス状態がずっと続いていましたが、5月8日に1日だけのダマシが発生し9日に改めてゴールデン・クロスとなりました。(図表6)。こうした超短期(1~2日)でのダマシの後に元の方向性に戻す場合、比較的以前のトレンド(今回はユーロ/円の買い)を継続しやすい地合いとなります。週足チャートで示した半値戻し(164.913)に近い165円の大台をターゲットとする流れと見てよいでしょう。
今週も良いトレードを!