現在のファンダメンタルズ:株安から米国債売りへと悪材料が変化

先週(4月7日週)のレンジと終値(マネックストレーダーFXのBidレート)
・米ドル/円:  142.066円~148.276円   143.571円
・ユーロ/米ドル:1.08890ドル~1.14729ドル 1.13514ドル
・ユーロ/円:  158.402円~163.135円   162.074円

先週(4月7日週)の米ドル/円:米国トリプル安の動きでホワイトハウスに焦りも

先週(4月7日週)も米国の相互関税とそれに伴うトランプ米大統領の発言に振り回された一週間になりました。米中間の報復関税合戦により米国の対中関税は最終的に145%、中国の対米関税は125%まで跳ね上がっています。20%の差は当初米国が中国に課した関税分なので、その部分について中国は受け入れるということでしょう。

この報復関税による世界経済悪化懸念に加え、先週は米国債が一時大きく売られたことで米金利が大きく上昇することとなりました。これは中国が米国債を売ったためと考えられていますが、時期が時期なだけに報復関税に加えてレアアースの輸出規制、さらには金融面でも米国に対抗しているとの見方がされています。

そのため、市場が落ち着いているときには米金利上昇は米ドル高要因とされてきましたが、今回は米債売りによる金利上昇ということで、株安、米ドル安、債券安のいわゆるトリプル安状態が発生しました。典型的な米国売りの動きとなっています。これにはトランプ米大統領、ホワイトハウスもさすがに焦りもあったのでしょう、自ら「株は買い時」と発言することとなりました。

また関税に関しては金融市場の混乱を抑える面もあったのか、報復関税を発動しなかった国に対しては90日間停止されることとなりました。米国内で既に値上げの動きも出ている中でスマホの価格高騰懸念を払拭するため一時PCとスマホは関税の除外対象と報道されましたが、別途半導体関税の対象とするような報道もなされています。株式市場は落ち着きを取り戻しつつありますが、米国債と米ドルの売りは続き、4月11日NY市場では米国10年債利回りが4.59%台、米ドル/円も欧州市場で一時142円目前の水準まで下げました。

米国の相互関税の最終的なゴールが見えるまでは金融市場も落ち着きを取り戻せないと思われますが、日米協議が先行するとのことなので日本の関税24%がどうなるのか、世界中の注目が集まります。その結果次第でリスクオフが続くのか終わるのか、日本の交渉力が非常に重要な局面となっていきそうです。

先週(4月7日週)のユーロ/米ドル:ユーロ/米ドルは2022年2月以来の高値へ

先週(4月7日週)のユーロ/米ドルは、米ドル/円同様に米ドル全面安の動きを受けて週後半に急速にユーロが買われる動きとなりました。対米ドルだけでなく対円でもユーロは強含みましたが、特にユーロ/米ドルは4月11日に一時1.14729ドルの高値をつけ、2022年2月以来の水準を見ています。

シンプルに米ドルが下げたという見方でも良いのですが、米国債に売りが入ったことで資金シフトが起き、いったん準備通貨としてのユーロ買いの動きもあったでしょう。安全資産としての金は3245ドル台へと上昇し史上最高値を更新中です。米国の相互関税は対EUでは20%ですが、最終的な落ち着きどころがわかるまではユーロ買い一方向ということもないように思います。

また4月18日(金)~21日(月)はイースター休暇となるため、今週(4月14日週)は実質的に17日(木)までとなります。イースターとクリスマスの休暇シーズンは欧米のトレーダーによる市場参加は激減しますので、何も無ければ静かな時期ですが、逆にトランプ大統領発言には相当な注意が必要です。

流動性が低下する中でのボラティリティ上昇は、米国トリプル安という不穏な局面にあるだけに警戒感を高めておきたいところです。

米ドル/円チャート(週足)、下降トレンドを継続、チャンネル下限をトライ

長期的な判断は週足で行いますので、まずは週足チャートをご覧ください。

【図表1】米ドル/円(週足)
出所:マネックストレーダーFX
【週足チャートの見方】
長期トレンドは20週移動平均線と週足終値との位置関係で判断します。
・上昇トレンド=週足終値が移動平均線の上にある
・下降トレンド=週足終値が移動平均線の下にある
トレンド転換の判断はダマシを排除するため、2週連続で移動平均線を上回るか、下回った時にトレンドが転換したという見方をします。

週足チャートでは、20週移動平均線を下回る展開と年初来高値からのレジスタンスライン(青)とそれに平行なライン内での動きを継続中です(図表1)。日足ではやや見た目も異なりますが、週足での動きを優先する方が大局を見失わないと思いますので、ここでもチャートパターンは週足優先で見ています。

米中間の報復合戦で米ドル/円は一時142円目前まで下げたことで下ヒゲでは下降チャンネルをトライしましたが、その後チャンネル内に戻して引けました。フィボナッチ・リトレースメントでは2024年9月安値と2025年1月高値との76.4%押し144.129円に到達しましたので、ターゲットとして残すは100%押しの139.575円のみです。引き続き大台140円を視野に入れる流れになっています。

米ドル/円チャート(日足)、4月11日に改めてデッド・クロスで売り

短期的な判断は日足で行います。

【図表2】米ドル/円(日足)
出所:マネックストレーダーFX
【日足チャートの見方】
短期売買シグナルは5日終値移動平均線(青)と5日始値移動平均線(赤)のゴールデン・クロス(GC)、デッド・クロス(DC)で判断します。
・買いシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を下から上に抜くGC
・売りシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を上から下に抜くDC
短期上昇トレンドの間は終値移動平均線が始値移動平均線の上で推移し、短期下降トレンドの間は終値移動平均線が始値移動平均線の下で推移します。通常の2本の移動平均線で言えば、終値が短期線の役割、始値が長期線の役割を果たしていると考えるとわかりやすいでしょう。
※マネックストレーダーFXでは、移動平均線の設定画面で始値を選択することができます。

日足チャートでは、移動平均線が下げ方向で推移する中で、一時的に5日終値移動平均線が5日始値移動平均線を上回る動きとなりましたが、4月11日に改めてデッド・クロスとなったことで米ドル/円は売りシグナルが点灯しました(図表2)。

週足の下降トレンドの中で日足の移動平均線をどのように考えるかという点について、今回のように移動平均線が2本とも下げている場合、ゴールデン・クロスとは言い難く、ポジションを閉じても買いで入ることは慎むべきです。少なくとも終値移動平均線(青)が上向きでのゴールデン・クロス、あるいは終値移動平均線(青)が上昇に転じるのを待つべきでしょう。

引き続き中期ターゲットは大台140円のトライとなりますので、4月11日のデッド・クロスは米ドル売りのチャンスという見方をしています。

ユーロ/米ドル、長期トレンドはユーロ買い継続

ユーロ/米ドルのチャートから見ていきます。

【図表3】ユーロ/米ドル(週足) 長期トレンド=ユーロ買い継続
出所:マネックストレーダーFX
【図表4】ユーロ/米ドル(日足) 短期トレンド=ユーロ買い(3月28日ゴールデン・クロス)
出所:マネックストレーダーFX

週足チャート(図表3)は移動平均線を上回った状態を維持していますが、1.15ドルの大台近くまで上昇するとは思いませんでした。1.14ドル台後半は2022年2月以来と2年以上も前の水準となりますので、今回は月足でのフィボナッチ・リトレースメント(緑のターゲット)を追加しました。2021年1月高値1.23491と2022年9月安値0.95359ドルの76.4%戻し1.16852ドルがターゲットとなっていることがわかります。もちろん、その手前の大台1.15ドルは最初のターゲットです。

日足チャート(図表4)では3月28日にゴールデン・クロスへと転換した状態が続いています。前回新たに引いた2月下旬からの上昇ウェッジ(青)を上抜けてきたため、短期的にはこのウェッジの上限(1.12ドル台前半を上昇中)がサポートとなります。1.12ドルから1.15ドルの間で押し目買いが出やすい週となりそうです。

ユーロ/円、週足では方向感が出にくい流れ、当面は日足チャートを参考に

次にユーロ/円のチャートです。

【図表5】ユーロ/円(週足) 長期トレンド=引き続き方向感は出ていない
出所:マネックストレーダーFX

ユーロ/円週足では週足終値が移動平均線からあまり離れず方向感が出にくい流れが続いています。引き続き2024年8月安値をサポートに、2024年7月高値と8月安値の半値戻し164.913円(黒文字のターゲット)をレジスタンスとして考える流れを継続中です。しかし、これまで下向きだった20週移動平均が上向きとなってきたことから、トレンドはややユーロ買い方向に変化しつつあるという流れです。引き続きトレンドは日足で考えるスタンスで行きます(図表5)。

【図表6】ユーロ/円(日足) 短期トレンド=ユーロ買い(4月7日ゴールデン・クロス)
出所:マネックストレーダーFX

日足チャートでは4月7日にゴールデン・クロスが発生しましたが、このパターンは米ドル/円日足で注意すべきパターン(2本の移動平均線が下げている中でのゴールデン・クロス)と同じです。

良い例なので終値移動平均線(青)の動きを見てください。4月7日に終値移動平均線(青)が始値移動平均線(赤)を上回り、その後10日に終値移動平均線(青)が上昇に転じたことが確認できます(図表6)。

つまり、2本の移動平均線の位置関係が変化した動き(ゴールデン・クロス)を移動平均線の傾き(下げから上げへ)が追認したというイメージです。週足移動平均線の傾きも上昇してきたことと併せて、当面のユーロ/円は押し目買いで入りやすい流れになってきたと見ています。

それでは今週も良いトレードを!