2025年2月13日(木)8:50発表
日本 企業物価指数2025年1月速報

【1】結果:国内PPIはコメ等の食品インフレが続く

【図表1】企業物価指数・輸入物価指数・輸出物価指数の結果(2025年1月速報値)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

2025年1月の企業物価指数は、前年同月比4.2%増と前月から伸びが加速し、2023年6月以来となる4%台の上昇となりました。コメを含む農林水産物の上昇が、依然として指数全体を押し上げている状況が続いています。1年7ヶ月ぶりの上昇となるも、コロナショック時とは様相が異なり、足元では食品類のインフレがPPI、ないしはCPIを押し上げている状況です。

【図表2】企業物価指数・輸入物価指数・輸出物価指数の推移(前年同月比、%)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

輸入物価は期間中に円安に推移したこともあり、円ベースでは伸びが加速しました。輸入物価が前月よりプラス圏での推移となるも、輸出物価の上昇率が上回っており、交易条件は改善が続いています(図表2)。契約通貨ベースでは、輸入物価はマイナス推移が続く一方で、輸出物価においてはプラス圏での推移となっています。

【2】内容・注目点:少しずつ円安による輸出入物価が上昇している

【図表3】輸出物価指数寄与度の推移(円ベース、前年同月比、%、%ポイント)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

コロナショック等ほどではないにせよ、輸入物価は2024年9月以来伸びが加速していることがわかります。輸入依存度の高い石油・石炭・天然ガスは、マイナス寄与であるものの直近では幅を縮めており、一方で、そのほかの財も安定的にプラスで推移しています。

【図表4】輸入物価の推移(前年同月比、%)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

契約通貨ベースをみると、輸入財自体は底打ちが見られるも依然として前年同月比マイナスでの推移が続いています(図表4)。2024年の米大統領選以来、米ドル円相場は円安方向で推移しています。FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ見通しの先送りも、米ドル高に寄与していることが主因で、足元の輸出入物価の上昇は円安の効果が大きいと推察されます。現在直面している食品インフレの状況にプラスして、輸入物価がさらにヘッドラインを押し上げるリスクが意識される局面でしょう。

【3】所感:日銀の次回利上げは7月実施が市場予想

2月12日に米CPIが市場予想を上回ったことで利下げ見通しが後退しました。また、パウエルFRB議長が「当面は景気抑制的な政策を支持したい」といった発言を経て、足元の米ドル円相場は円安に推移しています(2月13日執筆時点で、1ドル154円半ばで推移)。

日米の金利差を根拠とするならば、日銀は7月の利上げ実施が現時点での市場コンセンサスとなっており、米国が利下げ休止する可能性は考慮しつつも、先行きの金利差は縮小していく見通しです。再び160円台といった過度な円安のリスクは低いと考えられます。日銀は為替相場への影響を目的とした金融政策は実施しないものですが、食品類と輸入物価のダブルパンチとならないため、日銀には利上げ実施の間接的なインセンティブがあるのではと感じています。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太