現在のマーケットでは、株式市場が堅調に推移し、社債の買いが進んでクレジットスプレッドが縮小しています。さらに、ビットコインのようなテーマ性のある資産にも資金が流入し、リスク資産全般に強さが見られます。一方で、リスク回避資産とされる金価格も2024年を通じて米国株を上回るパフォーマンスを示しました。
このように多様な資産が買われる状況ですが、世界全体が「金余り」とは言い切れません。中央銀行の金融引き締めが続いたことで銀行の融資態度は依然慎重で、コロナ禍の財政支援による過剰貯蓄もほぼ消化されたと言われています。また、国際的な過剰流動性指標の一つであるワールドダラー(世界全体のドル流通量)の増加も限定的です。それでも経済が堅調に推移し、緩和的な金融環境が維持されているのはなぜでしょうか。
一因として、企業や家計のバランスシートの改善が挙げられます。低金利時代に固定金利選択などにより利払い負担を抑えた財務状況が経済の安定を支えています。また、リスク資産の上昇は資産効果を通じて消費を下支えする側面があります。特に、家計の純資産増加と市場の堅調さは連動していますが、その恩恵はリスク資産を多く保有する富裕層に偏りやすく、所得格差拡大やそれに伴う政治的影響の要因ともなっています。
市場の資金フローを見ると、パッシブファンドやハイテク株、さらにはそれらを対象としたレバレッジ投資が人気を集めています。今後、減税などによって家計の流動性が維持されるのかは大きな注目点でしょう。
また、資金フローが逆回転した際のリスクにも注意が必要です。レバレッジ解消など売りが売りを呼ぶような変動が市場全体の安定性を損なう可能性があります。現在の経済は総じて良好で、堅調なファンダメンタルズが局所的な物色に広がりを与えると期待される一方、割高な資産には調整の余地があります。調整局面は押し目買いの機会と捉えられることもありますが、何らかのきっかけで急激なフローにより資産効果が逆転すれば、「逆資産効果」により経済に悪影響を及ぼす恐れもあります。
バリュエーションは短期的に変動しやすいものの、長期的にはその高さはリターン低下の要因となるため、特定の資産クラスへの過度な集中は避けるべきです。例えば、ハイテク株やパッシブファンドに偏るのではなく、アクティブファンドや利回り妙味のある国債などにも注目すべきです。分散投資を意識することで、市場変動への耐性を高めることが重要となります。
このように、流動性は一見安定しているように見えますが、市場の過熱感や資産効果の偏りはリスクでもあります。ファンダメンタルズとバリュエーションのバランスを注視し、長期的な視点でバランスの取れた資産運用を心掛けることが求められます。