株式市場の先行きについては日々多くの予想が示され、時にはその日の株価変動要因として解説報道されることもあります。米国では、SNSで示された見解が株価リターンを予測する力を持つという先行研究も存在します。
では、日本でも同様の傾向が見られるのでしょうか。日本では、株価予想に関するSNSコミュニティが米国ほど発達しておらず、データの収集も容易ではありません。そこで、より身近な情報源であるアナリスト予想を用いて、それが株価の動きに先行するのかどうか。私が修士論文の題材としたこの内容を簡単に紹介いたします。
個別銘柄に関する複数のアナリスト予想の平均をその銘柄の目標株価とし、その数値をもとに日経平均株価が作られるのと同じ要領で日経平均株価の目標値を算出することで、その変化とその後の日経平均株価の動きを分析することができます。
その結果、株価が上にも下にも大きく変動する際には、事前にアナリスト予想が引き下げられている傾向が見られました。一方、株価が変化に乏しい場合には、予想値との関係は希薄でした。また、予想が上方修正された場合、その後の株価との関係は残念ながら明確ではありませんでしたし、予想と株価の関係には、昔と今とで精度が向上するなどの変化も見られませんでした。
このことから、市場予想は市場が上下に振れるその不確実性を事前に反映する代理変数として機能すると考えられます。一般的に、不確実性の指標としてはVIX指数などのボラティリティ指標が挙げられますが、これらは株価の変動をリアルタイムで捉えるものであり、アナリスト予想が示す不確実性とは異なる特性を持ちます。
特にアナリスト予想が下方修正される際には、その後の株式市場の動きに注意を払う必要があると示唆されます。そして現在、実際にアナリスト予想値の下方修正が見られ始めています。
市場予想は多様な情報源から発信され、それぞれに特性があると考えられます。本研究では、それらを統合することで集合知としての有効性を確認しました。今後は、予想の内訳を詳細に分析し、個別の特性を明らかにしていきたいと思っています。