先週(1月13日週)の振り返り=米ドル反落し、一時155円割れ

先週の米ドル/円が比較的大きく米ドル安・円高に戻した2つの理由

先週の米ドル/円は158円台から一時は155円を割れるなど比較的大きく米ドル安・円高に戻す展開となりました(図表1参照)。これは、日銀の1月利上げ期待や、米金利の低下が主なきっかけになった結果でしょう。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2024年11月~)
出所:マネックストレーダーFX

先週、このように大きく米ドル/円反落となった動きは、基本的には日米金利差米ドル優位縮小に沿ったものでした。日米10年債利回り差米ドル優位は、3.6%程度から3.4%割れへと比較的大きく縮小しました(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と日米10年債利回り差(2024年9月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

日米の10年債利回りは基本的に連動します。このため、日銀への1月利上げ期待が広がったものの、米10年債利回りが大きく低下する中では日本の10年債利回りも週後半は低下に転じました(図表3参照)。その意味では、日米10年債利回り差米ドル優位の縮小は、日本の10年債利回りの上昇以上に米10年債利回りが大きく低下した影響が大きかったと考えられます。それではなぜ先週、米10年債利回りは大きく低下したのでしょうか。

【図表3】日米の10年債利回りの推移(2024年10月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米10年債利回りなどの長期金利が大きく変動した

先週の米10年債利回り低下は、CPI(消費者物価指数)などのインフレ指標が懸念されたほど強い結果でなかったことや、FRB(米連邦準備制度理事会)のウォラー理事が「3月の利下げの可能性も排除せず」と語ったことから、早期の利下げ再開への期待が浮上したことなどがきっかけになりました。

先週の大幅な米金利低下は、2024年12月FOMC(米連邦公開市場委員会)以降広がった米利下げ見通し後退の見直しのように感じられるのではないでしょうか。ただし、この間大きく変動したのは、金融政策を反映する米2年債利回りなどの短期金利ではなく、米10年債利回りなどの長期金利でした(図表4参照)。

【図表4】米2年債および10年債利回りの推移(2024年10月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米10年債利回りは、この間の高値を大きく更新、先週は4.8%程度まで上昇しました。短期金利ではなく長期金利がこの間の金利上昇を主導したわけです。長期金利は景気や財政などの国債需給に反応するのが基本なので、その意味ではトランプ次期大統領の経済政策を受けた財政赤字拡大や金利上昇リスクへ反応した結果だったのでしょう。そう考えると、先週の大幅な米金利低下も、本質はトランプ・リスクを織り込んで長期金利が上昇してきたことの反動だったのではないでしょうか。

トランプ関税リスクを試す取引が、「行き過ぎ」圏に達している可能性

1月20日に正式に米大統領に就任する予定のトランプ氏の経済政策は、輸入関税引き上げなど金利上昇をもたらすリスクがあります。リスクを試す取引としては債券売り、または高関税を名指しされたカナダの通貨売りなどがあるでしょう。

この中で、カナダドルの売り越しは、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のポジションを見ると、すでに過去最高規模に達しています(図表5参照)。私はこれについて、このカナダドル売りを含めたトランプ関税リスクを試す取引が、「行き過ぎ」圏に達している可能性を示しているのではないかと考えました。

【図表5】CFTC統計の投機筋のカナダドル・ポジション(2010年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

1月20日のトランプ氏の大統領就任で、関税政策の中身についても具体化されるタイミングが近づいていると考えられます。そうした中で、トランプ関税リスクを織り込む取引の行き過ぎへの懸念が強まっているのなら、その修正が入りやすくなっているのではないでしょうか。具体的には債券売りやカナダドル売りの修正で、先週の米金利の大幅な低下は、その中の債券売りの反動の影響も大きかったのでしょう。

今週(1月20日週)の注目点=日米金利差米ドル優位縮小は続くのか

米ドル/円は、過去1ヶ月近く156~158円中心の方向感の定まらない展開が続きましたが、先週後半からこのレンジを一時下方向に抜ける動きとなりました。これにより、米ドル反発の動きは158円で終了し、150円を目指し米ドル安・円高に向かうのでしょうか。

これまで見てきたように、この間の米ドル/円は日米10年債利回り差との相関性が高い状況が続いてきました。この関係がこの先も続くなら、一段の米ドル安・円高に向かうためには、金利差米ドル優位・円劣位が一段と縮小に向かうことが必要になります。

今週は1月20日がトランプ氏の米大統領就任式、そして24日には日銀の金融政策決定会合が予定されています。こうしたことを受けて、特に米金利低下、それに伴う日米金利差米ドル優位・円劣位縮小が続くかが、一段の米ドル安・円高に向かうのか、それとも米ドル高・円安が再燃するかの鍵を握ることになるでしょう。

私は、債券売りや対カナダドルを中心とした米ドル買いというトランプ関税リスクを試してきた取引の修正が一段と広がる可能性が高いと考えています。その通りなら、それは米金利低下、米ドル売りとなるでしょう。そうした前提で今週の米ドル/円は、152.5~157.5円のレンジで想定したいと思います。