先週(11月10日週)の振り返り=「シャットダウン」終了に対して好感し155円まで米ドル高値更新

「シャットダウン」終了後は株価反落=円安も一巡

先週の米ドル/円はこの間の高値を更新し、一時155円台まで続伸しました(図表1参照)。米政府機能の一部停止、「シャットダウン」終了への期待からNYダウが高値を更新したことなどが好感され、米ドル買い材料になったと考えられます。実際にシャットダウンが終了した後は、株価は大きく下落し、米ドル/円も週末には一時153円台半ばまで反落する場面もありました。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2025年9月~)
出所:マネックストレーダーFX

シャットダウン終了を好感した米ドル買いと判断されるものの、それを受けて米金利が上昇し、日米金利差(米ドル優位・円劣位)が拡大したわけではありませんでした(図表2参照)。その意味では、実態的にはシャットダウン終了を口実とした投機的な米ドル高を試す動き、またはむしろこの間続いていた日本の財政リスクを懸念した円売りが影響した可能性があったのではないでしょうか。

【図表2】米ドル/円と日米10年債利回り差(2025年9月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

株価反落は「上がり過ぎ」の反動か

シャットダウン終了後、株価の大幅な下落が目立つようになると、米ドル高・円安も一段落しました(図表3参照)。なぜ、米経済へのマイナス要因と考えられた米政府機能の一部停止という「シャットダウン」が実際に終了したことに対し、株価はむしろ下落リスクが顕在化するようになったのでしょうか。

【図表3】米ドル/円と日経平均(2025年9月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

日本株の場合なら、それは短期的な「上がり過ぎ」の影響ではないでしょうか。日経平均の90日MA(移動平均線)のかい離率は一時20%まで拡大し、短期的な「上がり過ぎ」懸念がかなり強くなっていました(図表4参照)。シャットダウン終了は、本来的には株価が好感する要因ですが、それにもかかわらず株買いが行き詰まったことで、すでに株価が「上がり過ぎ」になっていることを確認し、その修正が始まったのではないでしょうか。

【図表4】日経平均の90日MAかい離率(2000年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

現状と2013年「アベノミクス株高・円安」第1幕終了との類似

今回の日経平均の90日MAかい離率は、2013年5月22日に記録した水準まで拡大しました。この2013年5月22日は、第2次安倍政権の経済政策、「アベノミクス」をきっかけに拡大した株高・円安の第1幕が終了したタイミングでもあります。

2010年代前半から半ばにかけて、アベノミクスをきっかけにした株高・円安が2年以上も続くところとなりました。ただ、アベノミクス株高も、2013年5月22日で第1幕が終了し、日経平均は2割程度と大きく下落に向かいました(図表5参照)。それは、これまでみてきたことからすると、短期的な「上がり過ぎ」の反動ということだったのでしょう。そして、アベノミクス株高が反落に転じると、株高に連動していた円安「アベノミクス円安」も一旦、円高に転換となりました。

【図表5】米ドル/円と日経平均(2012~2015年)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

足下ではアベノミクス株高・円安の第1幕が終了した時以来の、日経平均の「上がり過ぎ」反動局面に入っている可能性がありそうです。高市総理がアベノミクスの継承を主張し、その中でアベノミクス株高・円安の再来のような展開が続いてきましたが、第1幕終了に差し掛かっている可能性もあるのではないでしょうか。

今週(11月17日週)の注目点=米経済指標発表も再開へ

「アベノミクス相場」第1幕終了と類似の状況となれば、円高へ回帰の可能性

アベノミクス株高は2013年5月22日から、日経平均が「上がり過ぎ」の反動で約2割の反落に向かいました。すると、それに連れる形で、それまで株高と連動した円安も、円高へ大きく戻りました。

今回、過去のアベノミクス相場と同様に、日経平均が「上がり過ぎ」の反動で2割程度の比較的大幅な下落に向かうのであれば、4万2千円程度まで下落するといった見通しになります。そうなった場合、これまでの相関関係が続くと仮定した場合、米ドル/円も147円程度まで米ドル安・円高に戻す見通しになります。

米ドル/円の予想レンジは152~155円

今週(11月17日週)は、シャットダウン終了を受けて、9月の雇用統計など米政府による米経済指標の発表も再開される見通しです。ただし当初は、シャットダウンが始まる前の経済指標になるので、結果に対して金融市場が素直に反応するかは微妙ではないでしょうか。

米国株の場合も、NYダウに対するナスダック指数の相対株価が、2000年のITバブル以上に割高拡大となるなど一部に異常な「上がり過ぎ」の兆候があります(図表6参照)。それが、シャットダウン終了といった本来的なプラス材料を好感できないことで行き過ぎを確認し、修正が本格化に向かう可能性も注目したいと思います。

【図表6】NYダウに対するナスダック指数の相対株価(1990年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

以上から、私はアベノミクス継承を主張した高市政権発足を前後した、まさにアベノミクス株高・円安に類似したここまでの動きが転換点を迎えている可能性があると考えています。それを踏まえ、今週(11月17日週)の米ドル/円は152~155円で予想します。