先週(11月17日週)の振り返り=高市政権の財政対策への懸念として円安拡大

日本の長期金利と米ドル/円の連動続く=一時158円近くまで円安に

高市政権の積極財政対策が、財政規律への懸念から円売り要因になっているとされる中で、先週も米ドル/円の上昇が続き、一時は年初来高値の158.8円に迫る動きとなりました。ただし、21日に高市政権の経済対策が発表された後は156円前半まで反落しました(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2025年9月~)
出所:マネックストレーダーFX

財政規律への懸念が円売り要因になっていることを裏付けるように、158円台までの米ドル高・円安は日本の長期金利上昇(債券価格下落)にほぼ沿ったものでした。そして、その長期金利が11月21日の高市政権の経済対策発表後に低下に転じると、米ドル安・円高に戻すところとなりました(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と日10年債利回り(2025年9月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ただこれは、経済対策発表を受けて財政規律への懸念が後退したということではないのではと考えます。今回の経済対策は、21兆3千億円と2020年の「コロナ・ショック」以降で最大規模のものとなり、財政悪化への懸念を再確認する内容との見方が基本だったようです。その意味では、「日本の長期金利上昇=円安」の流れが転換したとするのは時期尚早ではないでしょうか。

なぜ、日本株は積極財政好感の上昇から下落に転換したのか

先週(11月17日週)は、日本の株価の下落が一段と広がりました。11月に入ってから広がり出した株安に対して、米ドル円はほとんど反応せず円安が続く動きでした。しかし、21日の高市政権の経済対策発表に少し反応し、米ドル安・円高となった可能性があるでしょう。

円とは対照的に、株価は10月末までは高市政権の積極財政を好感するとして大きく上昇する状況が続いていましたが、それが11月に入ってから大幅な下落に転じたのはなぜなのでしょうか(図表3参照)。

【図表3】米ドル/円と日経平均(2025年9月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

日本株が2025年11月に入り、下落が拡大したのは、米国が主導した世界的な株高が株安に転換したことに連動したように見えます。その意味では、そもそも2025年10月末までの円安・株高も、高市政権の積極財政に対して円売り、株買いといった正反対の評価だったのではなく、株高は世界的な株高への連動が基本だったのではないでしょうか(図表4参照)。そうであれば、日本株の今後の行方は、世界的な株高の動向が目安になるでしょう。

【図表4】日経平均とナスダック総合指数(2025年1月~)  
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

11月から広がりだした世界的株安=「バブル」破裂の始まりか

米ナスダック総合指数は、7月に入り最大で7%以上といった具合に比較的大きく下落しました。先週(11月17日週)は米半導体大手のエヌビディアの決算発表を受けて大きく反発する場面もありましたが、翌日には大幅反落となるなど不安定な動きが目立ちました。

ナスダック指数について、NYダウに対する相対株価を見ると、一時0.5倍以上に拡大しました。これは、2000年のITバブルで記録した以上にダウに対してナスダックが割高になっていることを示すものです(図表5参照)。ITバブル以上といった意味では、ナスダックの相対的な割高感は「超バブル」ともいえるかもしれません。

【図表5】NYダウに対するナスダック指数の相対株価(1990年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

そんな「超バブル」の修正が本格化、つまり「バブル破裂」がついに始まったなら、それはやはり米ドル売りの急拡大になるのではないでしょうか。先に述べたように、日本の財政リスクへの懸念に伴う「日本売り」、それを受けた円安に歯止めがかかるかは、米国主導の世界的株高の「バブル破裂」に伴う「米国売り」拡大が起こるかが目安になりそうです。

今週(11月25日週)の注目点=「日本売り」vs「米国売り」の構図になるか

2024年まで円安終了で「主役」を演じた為替介入=今回は為替介入の可能性はまだ低い

先週(11月17日週)、148円台で円安が一巡し146円台まで円高に戻したのは、日本政府関係者から米ドル売り・円買い介入の可能性が示唆されたことがきっかけになった面もあるようです。ただ、米ドル売り介入の可能性はまだ低いのではないでしょうか。

2024年に日本の通貨当局は160円前後で断続的に米ドル売り介入を行いました。このように米ドル/円の水準で見ると、2024年に介入が行われた圏内に接近してきました。ただ、過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)かい離率で見ると、2024年に介入が行われた頃はプラス20%以上だったのに対し、足下では15%程度でかなり水準が違います(図表6参照)。なお、2022年にも米ドル売り介入が行われましたが、この時も同かい離率はプラス20%以上でした。以上のように見ると、2024年までと介入方針が変わらなければ、米ドル売り介入はまだ当面行われる可能性は低いでしょう。

【図表6】米ドル/円の5年MAかい離率と為替介入(1990年~)  
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

もう1つ重要なのは、足下の状況は2022、2024年の介入局面と異なり、介入の「失敗」リスクがあるということです。一部のデータを見ると、2022、2024年は米ドル「買われ過ぎ」局面で米ドル売り介入が行われたのに対し、足下は未だ「買われ過ぎ」懸念は低いのではないでしょうか(図表7参照)。

【図表7】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

今週(11月25日週)の米ドル/円は154~159円で予想

2024年までの円安局面の終了においては、日本の米ドル売り介入が重要な役割を果たしましたが、今回は当時とは違う可能性があります。今回の場合、円売りの主役が日米金利差を主な拠り所とする投機筋ではなく、日本の財政リスクを受けた資本流出の可能性があるからです。そうであれば、そんな円安が止まるのは、株価の「バブル破裂」などにより、日本以上に米国から資本流出が拡大するかどうかが目安になるのではないでしょうか。

以上を踏まえると、今週は特に米国株の動向に注目しながら、154~159円で予想したいと思います。