分析の方針について(再掲)

今回当レポートを初めて読む方もいらっしゃると思いますので、分析方針について改めて簡単に説明します。

当ウィークリー・レポートはテクニカル分析がメインですが、ファンダメンタルに逆らった分析はしません。現在、そして今後起こりうるファンダメンタルやイベントをベースに、それに沿ってテクニカル分析を行います。

また、テクニカル分析は水平線(過去の高値・安値)、トレンドライン、チャートパターンを基本にしながら、主に移動平均線を使ってその時のトレンドを判断するやり方です。長期の分析には20週移動平均線を使い、短期の分析には5日移動平均線を使います。

誰でも同じ読み方ができる分析手法となりますので、慣れるまではゆっくり読み進めていただくと良いと思います。今週も日足チャートの見方において先週と同じ内容を説明しています。

現在のファンダメンタル:日米10年債利回り差と米国株の動きに注目

先週(1月6日週)の米ドル/円レンジ:156.242~158.872(マネックストレーダーFX のBidレート)

東京市場も先週から始まりましたが、1月6日(月)の欧州市場で米ドル/円は156.242レベルと大きく円高に振れた後、買い戻しが入る荒っぽいスタートを見せました。これはトランプ大統領就任後の関税は重要品目に絞られるとの米紙の観測記事が出たことでインフレ懸念後退から米金利低下、その直後にトランプ氏が同紙の記事を全面否定、関税政策は後退させないと発言したことから米金利が元に戻ったことを背景にした動きでした。

その後米国雇用統計まではカーター元米国大統領の国葬による祝日もあり、158円台前半を中心としたもみあいが続きました。しかし、1月10日(金)に発表された米国雇用統計が失業率、非農業部門雇用者数とも予想よりも強かったことからインフレ懸念が再燃し、米金利上昇、直後に158.872レベルまで円安が進みました。そして、米金利上昇を嫌気した米株市場が大幅安となったことから157円台前半へと大きく反落後、157円台半ばでの週末クローズとなりました。

年明け以降各国の10年債利回りは上昇傾向が強いのですが、米ドル/円に関して言えば日米金利差の影響が大きく、前回も書いた通りですが日米10年債利回り差と米ドル/円の20日相関係数は0.86と依然として高く、ほぼ同じ動きをしていると言ってもよい状態です。参考までに日米10年債利回り差に米ドル/円を重ねたチャートをご覧ください(図表1)。

【図表1】日米10年債利回り差と米ドル/円(日足)
出所:TradingView

チャートは青のラインが日米10年債利回り差(右軸)、ローソク足が米ドル/円日足となっていて、下段のサブチャートのその相関係数を示したものです。2024年8月以降の動きを見ても両者がほとんど似たような動きをしていることを確認できると思います。

米国CPIの発表に注目

今週(1月14日週)はイベント的には1月15日の米国CPI(消費者物価指数)が注目されます。CPIも予想より強いようであれば、さらにインフレ懸念が強まり米金利上昇につながりますが、雇用統計後のように米国株式市場が一段安となる場合には、リスクオフの円買いの動きも出ることが予想されます。短期的には米国雇用統計後の高値を超えることも先週1月6日(月)の安値を下回ることも無いのではないかとみています。

米ドル/円は上昇トレンドを維持しているなか、上値は徐々に重くなってきている点に注意

米ドル/円チャート(週足)は上昇トレンドを維持、ウェッジを下抜けるのは数週間先か

それではファンダメンタルも踏まえながらチャートを見て行きましょう。長期的な判断は週足で行いますので、まずは週足チャートをご覧ください。

【図表2】米ドル/円(週足)
出所:マネックストレーダーFX

先週(1月6日週)から大きな変化は見られません。中長期的には2024年夏以降の上昇ウェッジの中での動きとなっていて、このウェッジの中での動きを続ける限りは米ドル高・円安の流れが続いているという見方です。少なくともサポートラインが上昇し、155円台に乗せて来ないと距離があるという印象です。

またトレンドの判断は、20週移動平均線と週足終値との位置関係で判断しますが、ダマシを排除するため、2週連続で移動平均線を上回るか、下回るかした時にトレンドが転換したという見方をします。

2024年10月21日・28日週において2本連続で移動平均線を上回って上昇トレンドに転換して以降の長期トレンドは米ドル高・円安という判断となります。現在の終値は20週移動平均線(赤)よりもかなり上にありますので、ウェッジを下に抜ける動きのほうが先に発生するでしょうが、それでもまだ数週間は先といった感じでしょう(図表2)。

米ドル/円チャート(日足)における売買シグナル1月14日の引けで売りシグナルに転じる可能性も

短期的な判断は日足で行います。

【図表3】米ドル/円(日足)
出所:マネックストレーダーFX

日足には2本の移動平均線が引いてあり、どちらも5日移動平均線です。異なるのは計算に使うレートで青は日足終値、赤は「日足始値」を計算に使っています。マネックストレーダーFXでは移動平均線の設定画面で四本値(始値、高値、安値、終値)を選択することができますので、ぜひお試しいただきたい機能です。

始値・終値移動平均線は上昇トレンドであれば終値移動平均線(青)が始値移動平均線(赤)の上で推移し、下降トレンドであれば終値移動平均線(青)が始値移動平均線(赤)の下で推移します。ローソク足が5日連続陽線のケースと5日連続陰線のケースを考えていただくとわかりやすいと思います。

通常のローソク足では陰陽がミックスしてトレンド判断はしばしば名人芸となってしまいますが、この方法であれば誰でも同じ判断を行うことができます。2本の移動平均線は短期と長期ではなく、同期間の始値と終値を使い、終値が短期線の役割、始値が長期線の役割を果たしているという見方をします。

つまり、終値移動平均線(青)が始値移動平均線(赤)を下から上に抜くゴールデン・クロスが買いシグナル、終値移動平均線(青)が始値移動平均線(赤)を上から下に抜くデッド・クロスが売りシグナルということになります。

前回の日足チャートの判断では短期的には1月3日に売りシグナルが出た直後という状況でしたが、1月6日に大きく下げた後に反騰したことから改めて1月7日に買いシグナル(ゴールデン・クロス)が発生し、1月13日終値時点までその状況が続いています。

しかし、ここ2日ほどの動きを見ていると本日1月14日の引けで売りシグナルに転じる可能性もありますので、押し目買いを狙う方はデッド・クロスとなるかを見た上で、次のゴールデン・クロスを狙う方が良いと思います(図表3)。

今週(1月14日週)の米ドル/円は先週のレンジ内(156.242~158.872)での値動きを想定していますが、徐々に上値が重くなってきている点には注意しておきましょう。

ユーロ/ドル、長期トレンドと短期トレンドともにユーロ売り

ユーロ/ドルのチャートと結論だけを書いておきます。いつ、その状態になったのかチャートを見てご自身で判断してみましょう。答え合わせは次回(1月20日)のレポートで行います。

【図表4】ユーロ/ドル(週足) 長期トレンド=ユーロ売り
出所:マネックストレーダーFX
【図表5】ユーロ/ドル(日足) 短期トレンド=ユーロ売り
出所:マネックストレーダーFX

なお、次回からは具体的なチャートの見方を週足(長期)と日足(短期)の項目にまとめて書いた上で、米ドル/円ともうひとつの通貨ペアの解説という本来のスタイルにしていく予定です。

それでは今週も良いトレードを!