現在のファンダメンタルズ:株安による円一段高進行リスクは大きい

先週(3月31日週)のレンジと終値(マネックストレーダーFXのBidレート)
・米ドル/円:  144.539円~150.475円   146.894円
・ユーロ/米ドル:1.07783ドル~1.11449ドル 1.09629ドル
・ユーロ/円:  159.017円~164.172円   161.036円

先週(3月31日週)の米ドル/円:トランプ関税でリスクオフの円買い進む

先週(3月31日週)は四半期末、日銀短観、米国相互関税発表、米国雇用統計とイベントが多い一週間となりましたが、金融市場への影響を考えると相互関税発表のインパクトが大きく他の材料は霞んでしまったと言ってよいでしょう。

相互関税は当初は楽観的な見方もありましたが、実際に発表された数字は事前に草案が出ていたEUの20%は低い方で、日本は24%、中国は34%(既存の20%と合わせると54%)をはじめとして、主要国は軒並み高い関税が示されました。

これを受けて米国を筆頭に世界全体の景気後退が懸念され株式市場は急落、米金利は安全資産としての米国債購入の動きに加え、景気後退懸念を反映した金利低下思惑で大きく低下、シカゴのFF(米国政策金利)先物も年末時点で4回の利下げを織り込むなど、金融市場は4月2日のNY引け間際から、それ以前とその後とで様相が全く異なってきています。

為替市場も株安によるリスクオフの動きから米ドル全面安の展開となり、関税発表直前に150.475円の高値を付けた水準から一気に円高が進み、翌3日のNY市場では145円台前半、4日の欧州市場では144.539円と2024年10月2日以来の円高水準を見ることとなりました。米国雇用統計の非農業部門雇用者数が予想よりも強かったことから週末前の調整で146円台後半へと戻しての引けとなりました。

シカゴ通貨先物の投機筋円買いポジションは約12万2千枚と前週(3月24日週)から大きく変わっていませんが、これは関税発表前の数字となっているため、その後改めて円買いが増えているものと思われます。また相互関税発表後に中国の報復関税をはじめ各国が対応策を示したことで週明け早朝のダウ先物が大きく続落していることから米ドル/円もギャップダウンして再び145円台前半へと水準を切り下げてきました。

先週(3月31日週)のユーロ/米ドル:米ドル全面安からユーロ/米ドルは大幅高

先週(3月31日週)のユーロ/米ドルは、4月1日時点で相互関税の草案としてEUは20%という数字が出ていたものの、その時点では他国の状況がわからないこともありほとんど動きは見られず、1.08ドル台を挟んでのもみあいが続いていました。

しかし、相互関税の全体像が判明し株式市場急落と米ドル全面安の動きが始まるとユーロ/米ドルも大幅上昇、4月3日欧州市場で一時1.11449ドルと、こちらは2024年9月30日以来のユーロ高水準を見ることとなりましたが、週末に向けてはポジション調整もあり、1.09ドル台前半へと押して引けています。

ユーロ/円は米ドル全面安の動きの中で米ドル/円とユーロ/米ドルとの値動きのスピード差から関税発表前後に高値164.172円をつけましたが、すぐに上昇前の水準へと押し基本的に方向感は出ませんでした。しかし、米国株急落とともに日経平均株価も大幅安となり、日経平均下落とユーロ/円下落の相関が高いため、今後の方向性としてはユーロ/円でも円高の動きになりやすいと言えるでしょう。

全体として為替市場も荒れ模様となっていますが、今後相互関税の効果が思ったほど出ないということになると為替政策で米ドル安誘導という動きにつながる可能性もあり、ホワイトハウス、財務長官、商務長官(既に米ドル安容認発言あり)からの発言には注意が必要です。

米ドル/円チャート(週足)、下降トレンドを継続、チャンネル下限に到達

長期的な判断は週足で行いますので、まずは週足チャートをご覧ください。

【図表1】米ドル/円(週足)
出所:マネックストレーダーFX
【週足チャートの見方】
長期トレンドは20週移動平均線と週足終値との位置関係で判断します。
・上昇トレンド=週足終値が移動平均線の上にある
・下降トレンド=週足終値が移動平均線の下にある
トレンド転換の判断はダマシを排除するため、2週連続で移動平均線を上回るか、下回った時にトレンドが転換したという見方をします。

週足チャートでは、20週移動平均線を下回る展開と年初来高値からのレジスタンスライン(青)とそれに平行なライン内での動きを先週(3月31日週)も継続しました(図表1)。日足ではレジスタンスラインを上抜ける動きとなりましたが、より長い週足で効いているという事実を重視すべき流れが続いているようです。

米国の相互関税発表で下降チャンネルの下限にほぼ到達し、2024年9月安値と2025年1月高値との76.4%押し144.129円にも近づいたことから144円水準はいったん下げ止まりやすい水準です。しかし毎週着実に水準は下がっていきますので、今後は2024年9月安値139.575円を視野に入れる流れになっていくことは間違いないでしょう。

米ドル/円チャート(日足)、3月31日にデッド・クロスで売りシグナル点灯

短期的な判断は日足で行います。

【図表2】米ドル/円(日足)
出所:マネックストレーダーFX
【日足チャートの見方】
短期売買シグナルは5日終値移動平均線(青)と5日始値移動平均線(赤)のゴールデン・クロス(GC)、デッド・クロス(DC)で判断します。
・買いシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を下から上に抜くGC
・売りシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を上から下に抜くDC
短期上昇トレンドの間は終値移動平均線が始値移動平均線の上で推移し、短期下降トレンドの間は終値移動平均線が始値移動平均線の下で推移します。通常の2本の移動平均線で言えば、終値が短期線の役割、始値が長期線の役割を果たしていると考えるとわかりやすいでしょう。
※マネックストレーダーFXでは、移動平均線の設定画面で始値を選択することができます。

日足チャートでは、相互関税発表前の3月31日終値時点でデッド・クロスが発生したことで米ドル/円は売りシグナルが点灯しました。前回3月31日付のレポートで「そろそろ次のデッド・クロスが発生する可能性が高く、それを待っての米ドル売り」と書きましたが、その日のうちにデッド・クロスが発生し、その後もその状態が継続していますので今は流れに逆らうべきではありません(図表2)。

うまく乗れた方は良いですが、売り遅れた方は必ずストップを置いた上で戻り売り、あるいは下がり続ける場合には新安値売りということになります。週足チャートで書いたように中期ターゲットは大台140円のトライとなりますので、いつ入ったとしても間に合うという感じではあります。

ユーロ/米ドル、長期トレンドはユーロ買い継続

ユーロ/米ドルのチャートを見ていきます。

【図表3】ユーロ/米ドル(週足) 長期トレンド=ユーロ買い継続
出所:マネックストレーダーFX
【図表4】ユーロ/米ドル(日足) 短期トレンド=ユーロ買い(3月28日ゴールデン・クロス)
出所:マネックストレーダーFX

週足チャート(図表3)は移動平均線を上回った状態を維持していますが、関税発表後に一段高、2024年9月高値と2025年1月安値との76.4%戻し1.09693ドルも上抜ける動きを見せています。スピードが速いものの米ドル全面安の流れは続いているので、100%戻しとなる1.12ドル台を視野に入れ始めたと考えていた方がよいでしょう。

日足チャート(図表4)では3月28日にゴールデン・クロスへと転換した状態が続いています。新たに2月下旬からの上昇ウェッジ(青)を引いてみましたが、短期的にはこのウェッジの下側のライン(現在1.08ドル台半ばを上昇中)をサポートとする流れ、レジスタンスは先週(3月31日週)高値を見ておくとよさそうです。

ユーロ/円は、当面は日足チャートを参考に

次にユーロ/円のチャートです。

【図表5】ユーロ/円(週足) 長期トレンド=ユーロ売りに転換の可能性大
出所:マネックストレーダーFX

ユーロ/円週足では先週(3月31日週)、移動平均線を下回って引けたため、今週(4月7日週)末も下回って引けたらユーロ売りへ転換することとなりますが、2024年10月末以降は移動平均線をもみあいの中心とする方向感が無い流れを続けています。

移動平均線自体の傾きが平になってきていることも、もみあいを示していると言ってよいでしょう。そのため、8月安値をサポートに、2024年7月高値と8月安値の半値戻し164.913円(黒文字のターゲット)をレジスタンスとして考える流れをしばらくは継続し、トレンドは日足で考えるというスタンスになります(図表5)。

【図表6】ユーロ/円(日足) 短期トレンド=ユーロ売り(4月3日デッド・クロス)
出所:マネックストレーダーFX

日足チャートでは4月3日にデッド・クロスが発生しましたので短期的には下降トレンド、ユーロ売りとなります(図表6)。ただ、最初のターゲットとなる2月安値と3月高値との半値押し、次のターゲット61.8%押しとも既に達成していることから、いったん160円の大台へ戻す動きが先行しそうです。その場合2本の移動平均線がゴールデン・クロスを示す可能性が高いため、スタンスとしてはゴールデン・クロスが発生した後の次のデッド・クロス待ちが安全策となりそうです。

前回も書いたことですが、日本株との相関が高いユーロ/円は上値を抑えられやすくなるという点には注意です。

それでは今週も良いトレードを!