2024年12月2日(金)8:50発表
日本 法人企業景気統計調査2024年7-9月期
【1】結果:経常収支は7四半期ぶりに減益に
財務省が発表した四半期別法人企業統計によれば、2024円7-9月期の企業売上は全産業において前年同期比2.6%増と14期連続でプラスの結果となりました。一方で、前四半期からは減速傾向がうかがえ、営業利益に目を向けると、業態問わず減速が顕著なことがわかります。また経常利益は、全産業で7四半期ぶりに減益となっており、製造業を中心に弱さが現れる形となりました(図表1)。
経常利益を資本金別で比較すると、資本金1,000万円から1億円未満の中小企業において減益が顕著であることがわかります(図表2)。7-9月は米ドル円相場に変動幅もあり、円高に推移したことや不確実性の高まりを受けて、中小企業の経営をひっ迫させたことが推察されます。また設備投資は、ソフトウェアを含む、全産業において小幅に上昇しており、なかでも製造業における上昇幅が大きい結果となりました。
【2】内容・注目点:利益効率の改善はまちまち、非製造業の改善に期待
利益効率の改善に注目すると、製造業では業務用機械や化学セクター、非製造業では不動産やサービスの売上高営業利益率の改善がうかがえます。一方で、製造業では、循環的な景気変動のある石油石炭や鉄鋼・金属の低下が目立ち、非製造業では電気が弱く、前年同期と比較し売上高営業利益率が低下するセクターは半分程度となりました(図表3-1、3-2)。
先行きについて非製造業は、例年夏場に勢いを落とす傾向があり直近の年末商戦や期末に向けて利益水準を例年通り上昇させることができるかに注目です。製造業は、昨年度が好調であったともいえますが、今年度は横ばいで踏みとどまる様子もうかがえ、12月末の営業利益が前年同期比でプラスとなるかに注目したいと思います(図表4)。
【3】所感:前期比の設備投資は小幅にプラス、GDPに改定余地
法人企業統計は、経常利益の減益に注目が集まる結果となりました。GDP改定に用いられるソフトウェアを除く設備投資は前期比0.8%増とプラスで踏みとどまる内容で、GDPも上方修正される可能性があるでしょう。一方で、ソフトウェア投資は直近ではアップダウンが見られますが、7-9月はプラス転換となりました。勢いを落としている様子がありつつも、先行きの人員不足に伴う省力化投資等、ソフトウェア投資のニーズが高いと考えられ、全体の設備投資を押し上げることが期待されます(図表5-1、図表5-2)。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太