ゴールドマン・サックス[GS]、消費者向けビジネスを縮小
ゴールドマン・サックス[GS]はウォール街を代表する投資銀行のひとつです。企業合併・買収(M&A)の助言や仲介などの業務に強みを持ちます。
収益源を多角化するために消費者向けのビジネスにも乗り出しましたが、最近ではこうしたビジネスの一部を売却するなど規模の縮小を図っています。具体的には住宅修繕向け融資を手掛けるグリーンスカイ・ホールディングスの売却が2024年1-3月期に完了しました。また、2024年4月には「マーカス・インベスト」のブランドで展開していたロボットアドバイザー事業を手放すと発表しています。
なかなか成果が出ない消費者向けビジネスに見切りをつけ、軌道修正を明確にした戦略には好意的な見方も多いようです。直近の業績では2024年7-9月期決算は売上高に相当する純営業収益が前年同期比7.5%増の126億9900万ドル、純利益が45.3%増の29億9000万ドルでした。
セグメント別では、グローバルバンキング&マーケッツ部門の純営業収益が6.8%増の85億5400万ドルと好調でした。助言業務、株式引き受け、債券引き受けの各事業がそろって増収。エクイティファイナンスと株式仲介も順調に収入を伸ばしています。
アセット&ウェルス・マネジメント部門ば純営業収益が16.2%増の37億5400万ドルです。事業別では減収となった債券投資以外は好調で、特に株式投資はプラスに転換しています。
プラットフォーム・ソリューション部門は純営業収益が32.4%減の3億3300万ドルです。消費者向けビジネスが33.5%減の3億3300万ドルと低調でした。
ブラックロック・ファンディング[BLK]、世界最大の資産運用会社
ブラックロック・ファンディング[BLK]は世界最大の資産運用会社で、2023年末時点の運用資産残高が約10兆ドルに上ります。30を超える国・地域に1万9800人の従業員を抱え、100を上回る国・地域で事業を展開しています。
ブラックロック・ファンディングの顧客には、リテール(小口投資家)と機関投資家がいます。運用資産残高は、リテール、機関投資家、上場投資信託(ETF)ごとに公表されています。上場投資信託(ETF)には、小口投資家と機関投資家が投資しており明確に分けられないため、このような区分けでの公表となっています。
リテールの投資対象は主に投資信託で2023年末時点の運用資産残高は9388億ドルです。
機関投資家は年金、基金、財団、公的機関、金融機関などで構成され、2023年末の運用資産残高は5兆5709億ドルです。内訳はインデックス投資が2兆9025億ドル(機関投資家投資の52.1%)、アクティブ投資が1兆9127億ドル(34.3%)です。ETFは「iシェアーズ」のブランドを中心に展開しています。世界のETF市場における「iシェアーズETF」の市場シェアは30.4%に達しています。
指数に連動した運用を目指すETFが「iシェアーズ」ブランド、アクティブ運用を目指すETFが「ブラックロック」ブランドと棲み分けています。2023年末の運用資産残高はETF全体で3兆4993億ドルで、内訳は株式で運用するETFが2兆5326億ドル(ETF全体の72.4%)、債券などの固定資産で運用するETFが8984億ドル(同25.7%)、商品を含むオルタナティブが591億ドル(1.7%)です。
チャールズ・シュワブ[SCHW]、米国のネット証券大手
チャールズ・シュワブ[SCHW]はテキサス州に本社を置く金融サービスの大手です。ネット証券としては米国最大級で、子会社を通じて証券仲介や決済サービスなどを提供します。また、ウェルスマネジメント、資産管理、銀行業務、カストディ業務、助言業務などの金融サービスも手掛けています。
2023年末時点の証券口座は3480万件、銀行口座は180万件、預かり資産は8兆5200億ドルに上っています。証券業務では株式や債券の仲介、信用取引、先物取引、為替取引などで、決済サービスも提供しています。
主力のネット証券事業は子会社を通じて展開しています。2020年には同業のTDアメリトレード・ホールディングスを買収し、業容を拡大させました。TDアメリトレードが持つ約1500万の顧客口座や1兆6000億ドルの預かり資産はチャールズ・シュワブの証券子会社への移管が完了しており、TDアメリトレードのブランドは廃止する方向です。
S&Pグローバル[SPGI]、市場分析情報を提供
S&Pグローバル[SPGI]は市場分析情報や指数の提供に加え、信用格付けサービスなどを手掛けています。事業はマーケット・インテリジェンス、格付けサービス、商品情報、自動車情報、指数算出などで構成されます。
マーケット・インテリジェンス部門は、さまざまなアセットのデータや分析を提供しています。主要顧客は投資マネジャー、投資銀行、商業銀行、保険会社、政府機関などです。
2023年の部門売上高は前年比14.8%増の43億7600万ドル、営業利益は71.3%減の7億1400万ドルです。2022年2月に調査会社の英IHSマークイットを買収した効果で売上高は伸びましたが、買収・統合に要する費用が増え、大幅な営業減益となりました。
信用格付けサービス部門は売上高が9.2%増の33億3200万ドル、営業利益が11.5%増の18億6400万ドルです。企業や政府などから依頼を受けて調査して格付けを決める依頼格付けで調査料などを得るほか、非依頼格付け(勝手格付け)でも使用料やロイヤルティーなどの手数料収入を得ています。
商品インサイト部門は商品やエネルギーなどの分野で情報を提供します。価格データや分析、業界の内部情報などに加え、ソフトウエア・サービスも手掛けてます。売上高は15.5%増の19億4600万ドル、営業利益は19.1%増の7億400万ドルです。サービス加入者向けの定額課金が収入の大半を占めています。
自動車情報部門は自動車メーカーや部品サプライヤー、ディーラー、ファイナンス会社、保険会社などにデータや分析、予想などを提供します。売上高は29.9%増の14億8400万ドル、営業利益は22.1%増の2億6000万ドルで、商品インサイト部門と同様にサービス加入者向けの定額課金が収入の大半を占めています。
インデックス部門は、CMEグループ[CME]との共同出資会社、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが指数を算出しています。「S&P500」や「ダウ平均」など米国の株式市場を代表する指数を算出しており、使用料などが収入源です。売上高は4.8%増の14億300万ドル、営業利益は0.9%増の6億8400万ドルでした。
アメリカン・エキスプレス[AXP]、クレジットカード大手
アメリカン・エキスプレス[AXP]はクレジットカードの大手です。1850年に貨物・郵便の運送会社として創業し、急行列車を使った運送も手掛けたことが社名の由来とされています。その後に郵便為替を取り扱い、1891年には現在に続くトラベラーズチェックを発行して金融事業に参入しています。
クレジットカードではビザ[V]やマスターカード[MA]と並ぶ大手ですが、決定的な違いもあります。ビザとマスターカードは自社でカードを発行せず、提携先のカード発行会社にブランドと決済機能を提供し、手数料を受け取るのが基本のビジネスモデルです。
一方、アメリカン・エキスプレスは自社でクレジットカードを発行し、会員にローンも提供します。総収入に占める金利収入の割合が大きく、不良債権のリスクを抱えるなど金融サービスが主体になっているのです。
2023年12月期決算は売上高が前年比14.5%増の605億1500万ドル、純利益が11.4%増の83億7400万ドルです。売上高の内訳ではクレジットカードの利用ごとに店舗側に請求する手数料収入が8.7%増の334億1600万ドルで売上高全体の55.2%を占めています。
カードメンバーへのローンなどから生じる純金利収入は32.7%増の131億3400万ドルで売上比率は21.7%、クレジットカードの年間費などで構成するカード手数料は19.5%増の72億5500万ドルで売上比率は12.0%です。