先週(10月7日週)の動き:前週からの売り圧力続くもFRB利下げ継続観測から反発、国内金価格は円安を映し史上最高値更新

先週(10月7日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、週初から売り優勢の流れが続いた。前週から4営業日続落の後、10月10日には一時3週間ぶりの安値となる2,610ドル台まで売られる局面があった。ただし、発表された9月米消費者物価指数(CPI)の詳細が引き続き鈍化傾向を示したこと、翌11日の9月同生産者物価指数(PPI)がインフレの落ち着きを示したことで買い直され、11日の引値は2,676.30ドルと週足ベースでは前週末比プラスに転じることになった。NY金の週足は前週末比8.50ドル、0.3%高で終了した。

米雇用統計が予想外に上振れ、利下げ観測に変化

10月4日に発表された9月米雇用統計の予想外の上振れ、その結果を受けた利下げ観測の変化でNY金に対し高まった売り圧力は、先週後半まで続いた。米経済のソフトランディング(景気後退なきインフレの沈静化)期待が高まり、市場はFRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ見通しの修正を迫られることになった。それまで高まっていた11月FOMC(米連邦公開市場委員会)での大幅利下げ継続観測は一気に後退。一部では利下げ見送りまで指摘された。長期金利とドルは上昇傾向を続け2、3ヶ月ぶりの高水準に達し、金(ゴールド)が売られやすい市場環境となった。イランを巻き込む可能性も出ている中東情勢の悪化が逃避需要を集め、一定のサポート要因となるものの、売りが先行する流れが週末にかけて続いた。

売り先行の流れを変えた9月米CPIと新規失業保険申請件数

流れの転機となったのが、まず10月10日に発表された注目指標の9月米CPI、さらに同じ時間に発表された週次の新規失業保険申請件数だった。

CPIの結果は前月比では0.2%上昇し、伸びは前月と並んだ。食品価格の上昇を背景に予想の0.1%上昇を上回った。前年比では2.4%上昇と市場予想(2.3%)を上回った。しかし、2021年2月以来約3年半ぶりの小幅な伸びにとどまったことで、FRBが利下げ継続を見直すまでには至らないと受け止められた。予想を上回る伸びとなり発表直後にNY金は一時2,618.80ドルまで売られたものの、その後買い戻された。いわゆるヘッドライン(見出し)で売られ、詳細を見て買い戻されるパターンとなった。

結果的にCPI以上に注目されたのが、10月5日終了週の新規失業保険申請件数だった。前週比3万3,000件増の25万8,000件と、週間の増加幅としては2021年7月以来最大となった。市場予想(ロイター)は23万件だった。米南東部で大きな被害を出したハリケーン「ヘリーン」の影響もあるが、無関係のミシガン州の増加が目立っており、雇用統計より現状に近い指標だけに注目されNY金の買い手掛かりとなった。

また、10月11日に発表された9月の米PPIは前月比横ばいと、市場予想(0.1%上昇)を下回り、こちらも次回11月の会合でも利下げを継続するとの見方を後押しした。

こうした中で先週のNY金のレンジは2,618.80~2,679.20ドルとやや拡大した。9月CPIを前月比マイナスと読み想定レンジを2,650~2,690ドルとしていたが、節目の2,650ドルを下回ることになった。

JPX金は過去最高値を更新

一方、国内大阪取引所の先物価格(JPX金)は取引時間中及び終値ベース双方で史上最高値を更新した。ドル円相場が前週に切り上げた1ドル=150円手前の水準を維持したことで、NY金が2,600ドル台後半の最高値圏に接近するタイミングでJPX金は過去最高値を更新した。取引時間中の過去最高値は10月7日の1万2773円で7月17日(1万2679円)の水準を更新。終値ベースでは7日に、やはり7月17日(1万2565円)の水準を超え、さらに11日に1万2639円で終了し最高値に。週足は前週末比130円、1%高となった。

JPX金のレンジは1万2454~1万2773円で、予想レンジは最高値更新を読む1万2500~1万2850円としていたが、上限はNY金の想定上限2,690ドルに対応したものだった。なお、10月11日および週明け14日のNY金の値動きを反映する14日JPX金の祝日取引は、一時1万2841円まで買われ取引時間中の最高値をさらに更新している。これを受け14日の国内店頭小売価格(10%の税込み)は1万4000円台に乗せ最高値を更新している。

金ETF(上場投資信託)残高、北米では3ヶ月連続で増加

金の国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC、本部ロンドン)が10月8日に発表したデータでは、金現物に投資するETF全体で9月に約18.4トン(14億ドル)の残高増となった。増加は5ヶ月連続となる。地域別では北米が16.2トン増で全体をけん引する一方で、欧州は1.7トンの減少と、5ヶ月ぶりに売りに転じた。

5月に全体で残高増に転じた金ETFだが、欧州が先行する中で北米は出遅れ、増加に転じたのは7月以降だった。FRBの利下げ転換がいよいよ着手の段階に入ったことで、ETFを介した金市場への機関投資家の買いが入っていることを表す。先物市場における目先筋の売買動向と異なり、2,600ドル台の最高値圏でのETFへの資金流入は、市場で広がる先高期待をサポートする動きと言える。

今週(10月15日週)の見通し:10月17日(木)の9月米小売売上高、週次の新規失業保険申請件数に注目

NY金は、2,600~2,900ドル、JPX金は1万2600~1万2900円を想定

米国ではいよいよ11月5日の大統領選挙と議会選挙に向けて終盤の追い込みに入り、選挙の行方と今後のFRBの利下げサイクルの先行きに関する思惑で市場が揺れ動く展開になりそうだ。10月1日のイランによる本土攻撃とそれに対するイスラエルの報復攻撃の有無と内容にも市場の警戒が続くとみられる。

米国ではCPIなど重要指標の発表が一巡し、FRBの判断に影響を与えそうな周辺情報に市場の関心が向けられることになる。米経済指標では10月17日の9月小売売上高に注目する。減速予想に対し堅調地合いを続ける個人消費に関連するものとして、その動向を見たい。今週(10月15日週)もFRB高官の発言機会が多く予定されている。10月14日ウォラーFRB理事による緩やかな利下げ継続発言が注目されたが、15日はサンフランシスコ地区連銀デイリー総裁、18日はミネアポリス地区連銀カシュカリ総裁の発言が注目される。

また、このところ連続した大型ハリケーンの被害状況に関連して、10月17日に発表される週次の新規失業保険申請件数にも注目したい。

こうした中で今週のNY金の想定レンジは、2,600~2,900ドルと2,600ドル台後半での推移となりそうだ。一方、JPX金はドル円相場が150円手前での約2ヶ月ぶりの安値圏でのもみ合いが続くと見て、1万2600~1万2900円と、最高値更新を含むレンジをみている。