先週(3月24日週)の動き:NY金続伸で3,100ドル超、5四半期連続上昇の見込み、国内金価格も年初来13回目の最高値更新

先週(3月24日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、週末27、28日と再び最高値を更新し3,100ドル台に乗せることになった。前週に3,000ドル台に乗せた後でもあり、週前半はCTA(Commodity Trading Advisor)と呼ばれる短期筋のファンドと見られる売りに上値の重い展開で、節目の3,050ドルを下回って推移した。それでも3,000ドル割れには至らず底堅さも感じさせた。そうした中、26日にトランプ大統領が輸入自動車や主要部品に対する25%の追加関税を発表。また貿易相手国に同水準の関税を課す「相互関税」や品目別追加関税の詳細について、予定通り自らが「米国の解放記念日」と呼ぶ4月2日に発動するとしたことから、市場センチメントはさらにリスクオフに傾いた。

加えて28日はこの日発表された2月の米消費支出(PCE)統計やミシガン大学消費者マインド調査の3月確報がさえない内容となったことで、米株式は再び大きく売られることに。ダウ30種平均は、前日比715ドル安で3日続落の41,583ドルで終了。S&P500は2%安で年初来では3月10日の2.7%安に次ぐ大幅な下げを記録。ナスダック総合指数の下落率は2.7%に達した。後1日を残すが両指数とも四半期ベースでは2022年以降で最悪のパフォーマンスになるとみられる。

こうした中でNY金は逃避資金を集め前日に続き水準を切り上げた。NYコメックスの通常取引は前日比23.40ドル高の3,114.30ドルで終了した。中心となる取引が6月物に切り替わるタイミングもありNY時間に入ったところで、水準を切り上げそのまま一時3,124.40ドルまで付け、連日の最高値更新となった。NY金としては終値とともに年初来17回目の史上最高値更新となった。

週足は前週末比92.90ドル3.1%上昇で4週続伸に。レンジは3,007.70~3,124.40ドルで116.70ドルと前週の73.80ドルを大幅に上回ったのは、限月交代で金利分以上のプレミアムが乗っていることもある。四半期末となる3月31日に同じ水準を維持すると1~3月期の上昇率は約18%に及び、5四半期続伸となる。

予想を下回る個人消費にしぶといインフレ

米政治要因以外に28日市場が反応したのは、前述のとおりまず2月の米個人消費支出(PCE)統計だった。PCEは前月比0.4%増と1月の0.3%減(下方修正)からプラスに転じたものの、市場予想の0.5%増を下回った。さらにFRB(米連邦準備理事会)が注視するPCE価格指数(デフレーター)のエネルギーと食品を除くコア指数は市場予想を上回り、インフレ圧力の根強さを示した。コア指数は前月比0.4%上昇と、2024年1月以来の大幅な伸びを記録した(前回1月は0.3%上昇)。前年比でも2.8%上昇し、1月と市場予想(ともに2.7%上昇)を上回った。足元で市場関係者が懸念している、しぶといインフレと個人消費の減速という組み合わせが浮上することになった。

消費者信頼感は低下し期待インフレ率は上昇

さらにミシガン大学が発表した3月の消費者信頼感指数の確報値は、57.0と速報値(57.9)から下方修正され、2022年11月以来の低水準となった。市場は速報値から変わらないとみていた。さらに消費者の5年先の期待インフレ率は4.1%で、前月の3.5%から上昇し、1993年2月以来の高水準となった。

一方、1年先の期待インフレ率は5.0%と、2022年11月以来、約2年半ぶりの高水準となった(2月は4.3%で1月は3.3%)。FRBは消費者の期待インフレ率の上昇高止まりを警戒している。

いずれの指標も市場に警戒感を強めさせ株売りにつながるとともに、NY金を押し上げた。 

国内JPX金も年初来13回目の最高値更新

一方、先週(3月24日週)は国内金価格も週末にかけて史上最高値を更新した。日本時間の3月28日夕刻まで米ドル/円相場が1ドル=150.5円前後で推移していたことから、国内金価格もNY金の上昇に「つれ高」する形で27、28日と連日高値を更新した。大阪取引所の金先物価格(JPX金)は28日初めて1万5000円台に乗せることになった。取引終盤に一時1万5018円まで付け 1万5013円で終了した。週足は前週末比341円2.3%高で4週続伸となった。

レンジは1万4463~1万5018円となり値幅は555円と前週より約100円拡大した。年初からの最高値更新は終値ベースで12回、取引時間中で13回となる。10%の税込みで表記される代表的な店頭小売価格も1万6398円と28日は最高値を更新している。

今週(3月31日週)の見通し:まれに見る注目イベント満載の週、NY金は引き続き強含みに推移、JPX金は円高により相殺され上値を抑えられる展開か 

今週(3月31日週)は米国関連で主要指標の発表と多くのFRB高官の発言機会に加え、トランプ関税が本格的にスタートするイベント週となる。

4月2日、「相互関税」や品目別追加関税の詳細発表

まずは米国が「解放の日」とする4月2日に発表される「相互関税」や品目別追加関税の詳細と発動に対する対象国の反応を見たい。米株市場を中心に過度の悲観が先行しているきらいがあるが、関税賦課にあたり調査に時間をかけていること、また対象国の対応次第では税率引き下げなど軟化するとの楽観論もある。朝令暮改も珍しくないトランプ大統領だけに、市場は双方向に身構える。

4月4日、米3月雇用統計

主要経済指標の中では、やはり4月4日発表の3月の米雇用統計が注目となる。非農業部門雇用者数(NFP)は14万人増と、前月の15万1000人増を下回る見通しである(ダウ・ジョーンズ調べ)。仮にそうなると直近3ヶ月の雇用者増加数の平均は2024年10月以来の低水準になる。このところの各種指標からは米消費者の慎重姿勢の強まりが目立っているだけに、結果が下振れし雇用の鈍化が鮮明になると、米株式市場中心にリスクオフ・センチメントはさらに広がりそうだ。

4月4日、パウエルFRB議長講演

さらに今週は4日の米雇用統計発表直後にパウエルFRB議長が経済見通しについて講演を行う予定となっているのも興味深い。結果に対しどのように言及するのか。同じ日にバーFRB理事、ウォラーFRB理事の講演も予定されている。

他にもISM(米サプライマネジメント協会)は4月1日に3月の製造業総合景況指数、3日に非製造業総合景況指数を発表する。こちらもトランプ関税現実化を受けどうなるか注目である。

NY金は3,100ドルを中心に、JPX金は1万4800円を挟み上下に

こうした中で今週(3月31日週)もNY金の堅調展開は続くとみられる。広範な米関税政策はいまや世界経済の先行き見通しを曇らせており、米国発の株安は世界同時株安の様相を呈すると、金市場への逃避資金の流れを加速させる。一方、2024年まではリスクオフに際して買われた米ドルは、現在むしろリスクオフで売られる状況にあり、米ドル/円相場が円高に振れることから国内金価格には押し下げ要因となる。

今週のNY金は4月2日のトランプ大統領の発表内容により切り上げた3,100ドルを中心に上下に振れることになりそうだ。JPX金については円高への流れから1万4800円を挟み上下250円幅のレンジを想定している。