2024年8月27日(火)23:00発表(日本時間)
米国 コンファレンスボード消費者信頼感指数
【1】結果:現況指数、期待指数いずれも回復を示し消費者マインドは改善
8月の米消費者信頼感指数は、103.3を記録しました。市場予想と前回の結果を上回り、消費者のマインドに回復が見られます。
【2】内容・注目点: 消費者マインドは健全ながら労働市場の評価は軟化傾向を継続
米消費者信頼感指数とは、全米産業審議委員会が5,000人の消費者に対して、現状(経済、雇用の2項目)と6ヶ月後の予想(経済、雇用、所得の3項目)について調査し、指数化したものです。個人消費がGDPの約7割を占める米国では、その数値に注目が集まります。また、図表2の通り、景気後退時には、本指数が急激に落ち込む傾向にあるため、景気動向の判断にも用いられます。
そして図表1の内訳を見ると、現況指数は8月に134.4となり、7月の133.1から上昇しました。現況指数(図表2の黄色バー)は、7月まで下向き傾向 にありましたが、8月には反発し、回復を示しました。主な要因は、経済・ビジネス状況に関する評価の改善です。
また、期待指数も8月に82.5となり、7月の81.1(速報値78.2から上方修正)から改善しました。ここ数ヶ月、期待指数は景気後退の兆候とされる80を下回っていましたが、8月には80を上回り、消費者の先行き見通しが改善していることがわかります。
消費者の1年先のインフレ期待は4.9%に下がり、2020年3月以来の低水準となりました。依然として高水準にはあるものの、着実に低下基調にあります。インフレ期待は将来の実際の物価に影響を及ぼすと考えられるため、低下基調にあることはインフレ目標の達成に向けて良い兆候と言えます。
一方で、消費者の労働市場に対する評価は、今までの楽観的な評価から後退傾向にあります。市場では労働市場の強さを測るために、「雇用は十分にある」と回答した割合と「仕事を見つけるのが難しい」と回答した割合の差の推移に注目が集まりますが、図表3の通り反転させたグラフは上昇基調にあり、労働市場が徐々に軟化しつつあることが伝わります。この動きは、直近の失業率の上昇とも整合的です。
9月6日に公表される8月分の雇用統計では、失業率が4.3%から4.2%低下し、非農業雇用者数も7月の11.4万人から15.5万人に回復するという予想がされていますが、今回の調査からは労働市場の状況が劇的に回復する可能性は低いことが示唆されています。
【3】所感: 健全な消費者マインドに伴う個人消費の拡大に期待も、労働市場の軟化による景気後退懸念は引き続きあり
今回の結果は、米国の消費者マインドが依然として健全であることを示しており、消費者マインドの悪化に伴う個人消費の落ち込みや景気後退が懸念されていた中で、ひとまず安心感を与える内容となりました。
消費者マインドは、実際の個人消費動向に影響を与えるとされているため、今後も米国経済を支えてきた個人消費の拡大、もしくは緩やかな減速が期待されます。図表5のように、消費者信頼感指数と米国の個人消費(実質GDP,前年比%)の動きを見ると、2つのトレンドが互いにフォローしていることが確認できます。
一方で、労働市場に対する評価は低下傾向が続いており、労働市場の悪化による景気後退懸念は依然として残ります。同じく8月27日に公表されたリッチモンド連銀製造業指数も、8月に-19を記録し、前回結果および市場予想を上回る悪化を示しています。
インフレ期待や実際のインフレ動向が収まりつつある一方で、景気減速や悪化の兆しは随所に見られます。先日のジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演どおり、「政策調整の時期が来た」と感じられます。
政策の調整速度については、やはり今後のデータ次第ということになりますが、目先としては8月29日のGDP(24年4-6月期改定値)、8月30日の個人消費支出とPCE価格指数、そして9月6日の雇用統計に注目が集まります。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐