直近の価格動向
前回のコラムから直近(5月23日~6月12日)J-REIT価格は、ボックス圏での動きとなった。東証REIT指数は1,720ポイントから1.740ポイントの狭いレンジでの推移となり、5月上旬から続いていた下落傾向には一旦歯止めがかかった。
一方で、5月の東証REIT指数は前月末比3.7%の下落と2月以来の下落となった。個別銘柄の値動きを見ても、最も価格が上昇したGLP投資法人(3281)で1.6%の上昇に留まり、全58銘柄中54銘柄が下落、全面安とも言える展開となった。また、公募増資を公表した平和不動産リート投資法人(8966)の下落率が7.8%と最も大きくなっている。
外国人投資家は4年ぶりの大幅売り越し
東京証券取引所が公表した投資部門別売買によると、外国人投資家は5月に642億円の売り越しとなっている。500億円を超える売り越し額は、コロナ禍の2020年5月651億円以来、4年振りとなる。
外国人投資家は2024年に入り、2月の436億円売り越しなど、4月までに累計で455億円を売り越していたが、5月に売り越しが加速した。米国ではインフレが収束せず、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待が大幅に低下した。
複数回が想定されていた2024年内の利下げが実施されない観測も多くなっている。利下げを想定して外国人投資家は、2023年後半(7~12月)に691億円の買い越しを行っていたが、誤算が生じた形となり、売り越しが加速していると考えられる。
米国利下げ観測後退の影響は国内にも
さらに米国の利下げが遅れていることで円安が進行し、国内長期金利にも上昇圧力が掛っている。財務省は、4月29日と5月2日に10兆円弱の為替介入を行ったと公表しているが円安への動きは収束せず、日米金利差の縮小という思惑が市場に広がっている。
日本の10年国債利回りは円安の進展と共に上昇を続け、5月下旬には1.0%の節目を超え、2013年4月に始まった日銀による異次元緩和前の水準となっている。国内長期金利の先行きが不透明となっているため、国内機関投資家のJ-REIT投資拡大も期待できない状態だ。
その一方、個人投資家は5月に204億円を買い越ししている。2月の249億円に続き、過去3番目となる買い越し水準となった。J-REIT価格は前述の通り、需給面から弱含む可能性が高いが、中期的に見ても業績面から割安感が強くなっている。既に投資している個人投資家は、需給面での価格下落圧力が解消するまで短期的な値動きに左右されない投資姿勢が重要な局面と考えられる。