ジム・ロジャーズ氏特別インタビュー3回目では、日本への緊急提言、投資アイデアを練る秘訣、すべてを失った投資の失敗から学んだこと、ジム・ロジャーズ氏の「最高の投資」についてお届けします。
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日本への緊急提言
岡元:日本についてですが、ジムさんは現在、日本の株式市場に投資していますか?
ジム・ロジャーズ氏:日本の株式には現状では投資していません。今年の10月下旬頃に売却しました。最近、保有していたのは日本のETFです。日銀は毎日お金を刷ってETFを購入していましたので、彼らは私よりもお金を持っています。ですから、彼らがETFを買うならと私もETFを買いました。売らなければよかったのですが、すべて売却してしまいました。
岡元:日経平均株価が上昇を始め、2023年5月にはついに30,000円を超えました。そして、その水準を維持しています。日本の金融関係者の中には、このことに歓喜している人たちがいます。長い間待ち望まれていた日経平均の変化の始まりであり、日本経済の変化の兆候であり、おそらく日本の新しい明るい未来の始まりであると考えています。ジムさんは日本のマーケットで起きていることについてどうお考えですか?
ジム・ロジャーズ氏:今はモメンタムがあります。日銀は大金を入手し使っています。通常、市場が上昇すれば投資家が集まり、外国人投資家がやってきます。外国人は日本で起きていることに気づき始めています。私も買い直すでしょう。しかし、2024年か2025年、日本の株式市場が再び40,000円近くにならなかったしても、私は驚かないでしょう。
岡元:日本の株式市場の可能性を考慮しても、日本に対する長期的な見方は変わらないのですね。
ジム・ロジャーズ氏:ええ、人口が減少しているという事実は変わらないし、借金が急増している事実も変わりません。
もし何かが人口を変えるなら、何かが負債レベルを変えるなら、それがさらに良くなるなら、特に人口を増やせるなら、それは本当に素晴らしいことになるはずです。日本の人口が13年間減少し続けているのは事実です。怖がらせようとしているのではなく、事実を述べているだけです。特に国が抱える負債のレベルはまずい状況だと思います。
岡元:現在、日本の株式市場にはモメンタムがあり、短期的にはもっと上に行くかもしれないものの、何か抜本的な変化が起こらない限り、長期的にはジムさんのお考えは変わらないということでしょうか。
ジム・ロジャーズ氏:何かしら抜本的な変化がない限り、悲観的な見通しは変わりません。仮に私が10歳の日本人の女の子だったら、日本を脱出するか、身を守る方法を学ぶでしょう。生きている間に何かが変わらない限り、日本は良い場所ではないからです。
岡元:日本全体の人口が減少しているにもかかわらず、東京は都市化が進み、これからも繁栄し続けるでしょうし、私は住みやすく良い都市だと考えています。 しかし、ジムさんは違う見方をしています。著書の中で、2020年8月、日本全体の人口が減少し続ける中で、東京の魅力は失われていくだろうとおっしゃっていました。東京の魅力が失われるという見方について、もう少し詳しく教えてください。
ジム・ロジャーズ氏:人口が減れば、借金は毎年増えていき、借金を返す人がいなくなります。他国と競争するのに十分な労働者もいません。インドや中国を見れば、安価で教育を受けた若い労働者がたくさんいます。これは単純な事実なのです。意見ではなく事実で、日本には悲観的な未来が待っていることを示唆していると思います。
英国に話を戻しましょう。100年前は世界で最も豊かで、最も強力な国でした。そして破産しました。しかし、ビートルズは成功し、マーガレット・サッチャーが北海油田を発見しました。もし北海油田のようなものを日本で発見できれば、心配はいりません。世界最大の油田があれば。でも、それはないと思います。
岡元:ジムさんが杞憂している日本の非観的な事実について、日本政府は政策として十分なことをしていると思いますか?
ジム・ロジャーズ氏:日本は移民を受け入れていますが、ごくわずかで、現状の課題を解決するほどではありません。政府が借金を増やすのをやめていないのは確かです。
借金は毎日刻々と増加しているのに、人口は毎週減少しています。人口が減少していることを認識しているのに、方向転換のために何も実行していていません。日本の政治家、彼ら自身は40年後にはもういないわけですから、気にしていません。
岡元:覆水盆に返らずですが…、日本の政治家が与党の再選にフォーカスするよりも、もっと真剣にこの国の将来を考えていれば、このような不幸な事態を避けられたと思いますか?
ジム・ロジャーズ氏:あたなは自分で自分の質問に答えていますよ!2010年以降、人口が減少し続けていることに気づいたのは私が最初の人間ではありません。誰もが知っていました。 赤ちゃんが生まれなかった時代もありました。
日本のおもちゃ会社に投資するのは良いアイデアかもしれません。なぜなら、国民は赤ちゃんを増やさないといけないからです。日本の政治家たちはそのことに気づいています。彼らが十分に賢明であることを願っています。
これまでにも変えることはできたと思います。ただ、ヨーロッパのいくつかの国では出産に奨励金を与えましたが、上手くいきませんでした。国民に出産を促すために、何かをしなければ日本は消滅してしまいます。
投資アイデアを練る秘訣
岡元:ジムさんはヘッジファンドでファンドマネージャーであったころ、毎日5ヶ国の新聞を読み、40誌の雑誌と80誌の業界誌を読んで投資アイデアを考えるのが日課だったと聞いています。個人投資家がそのようなことをするのは少し無理があります。投資アイデアを練るためにはどうすればいいか、アドバイスはありますか?
ジム・ロジャーズ氏:私は自分のやっていることが好きでしたし、世界に対する好奇心もありました。だからやったのです。それが私のやりたかったことで、それ以外のことはしたくなかったのです。
投資家として成功したいなら、ファッションでも車でも何でも、とにかく自分の知りたいこと、興味・関心のあることにフォーカスしたら良いと思います。毎日ファッションについてインターネットなどで何か調べているなら、その人はすでにその分野で他の人よりずっと先を行っているはずです。
何か成功しそうなことが起きたら、もっと調査し、深く研究してください。好きなものを理解し、投資をするのです。
もし「人生で25回しか投資できない」と言われたら、人はとても慎重になるはずです。いろいろなものに飛びついたりすぐに手を離したりせず、とても慎重になって、大成功を収めるでしょう。これは、すべての人に学んでほしい重要なレッスンです。
誰もがすぐにお金持ちになりたいと思っています。もちろん私もです。
一攫千金も夢ではないかもしれません。しかし、もし成功したいのであれば、耳寄りな情報には耳を貸さず、自分の知っていることだけにフォーカスすることです。これは簡単に見えますが、とても難しいことです。
自分を律しなければなりません。誰でも何か1つくらいは詳しく知っている事柄があるはずです。そうやって成功するのです。これはとても簡単で、とても難しいことです。
すべてを失った投資の失敗から学んだこと
岡元:投資で大きな失敗をしたことについても教えていただけますか?
ジム・ロジャーズ氏:私は成功よりも失敗から学ぶことが多いのです。成功すると、「ああ、自分は頭がいいのだ」と思ってしまいます。これは簡単なことだと思うようになります。すべてが素晴らしい、私は金持ちになると。
何か間違ったことをしたら、そのことをよく考えてフォーカスします。何がいけなかったのか、そこから何かを学んでほしいのです。
キャリアの初期の頃、他の人達が失敗していたときに、資金を3倍にする大成功を収めたことがあります。当時私は株価が再度暴落すると確信していました。ですから株式市場が上がるのを待ち、そこで6銘柄を空売りしたのですが、2ヶ月後、株価は急騰し、私は何もかも失ってしまいました。壊滅的でした。しかし、最終的にはその後2年間で、私が空売りした6社全て倒産したのです。私の考えは正しかったのですが、それが証明される前に、私は全てを失ってしまったのです。つまり、タイミングを間違えたのです。
この時の教訓は、私は自分が知っていることは、誰もが知っていると思っていましたが、マーケットには知らない人がたくさんいるということでした。私が空売りした後、彼らは株を買いあさり、株価は大きく上昇し、私はすべてを失いました。彼らは私が知っているほど多くのことを知らなかったからです。
岡元:良い勉強になりましたね。
ジム・ロジャーズ氏:私は宿題を立派にこなしたのですが、すべてを失ったのです。当時はマーケットについて知らないことがたくさんありました。
岡元:その時、ジムさんは何歳でしたか?
ジム・ロジャーズ氏:28歳くらいでしょうか、金融界でのキャリアはまだ浅かったころです。幸いにも生きることをやめず、神父にもならず、逃げることもしませんでした。唯一私にできたのは、お金を貯めてやり直すことだけでした。
ジム・ロジャーズ氏「最高の投資」とは
ジム・ロジャーズ氏:教訓といえば、一度だけ思い出したことがあります。おそらく1980年頃のことです。私は金曜日に原油を空売りしました。その週末、イランとイラクは戦争に突入し、原油価格が高騰し、損をしてしまいました。1つだけに投資をしていたのであれば、終わりということです。
岡元:ジムさんは通常はどれだけの投資アイデアを実行しているのですか?
ジム・ロジャーズ氏:2つかもしれないし、22かもしれない。世界で何が起きているかによります。答えはないのです。限界もありません。何が起きているかによります。
岡元:過去には1度に最大どれだけのトレードを行いましたか?
ジム・ロジャーズ氏:1番多くて30~40でしょうか。もし、石油に投資すると決めたら、石油に投資する方法はたくさんあります。ただ1つだけでなく、通常はさまざまな国、さまざまな業界の石油を買うことになる。石油を買うこともできるし、掘削業者やパイプラインを買うこともできます。
岡元:もし石油業界が好きならば、すべてに投資しますか?
ジム・ロジャーズ氏:いつも、だいたいはそうですね。石油が良い投資先だとわかっているなら、私は他の投資方法を探します。時には、石油自体を買うよりもっと良い方法もあります。
岡元:そういった投資は、通常どれくらいの期間所有しているのですか?
ジム・ロジャーズ氏:できるだけ長く所有できるものを買うようにしています。
岡元:長期?それはなぜですか?
ジム・ロジャーズ氏:生涯を通じて、最高の投資とは、売る必要のないものです。自分の子どもたちが所有し続けるようなものですが、そういったものはなかなかありません。私は中国株を1度も売ったことがありません。私の中国株を子ども達が引き継いでくれることを希望しており、 彼女たちが自分の父親は頭が良かったに違いないと言ってくれることを願っています。「この中国株を見て!お父さんのおかげで私はお金持ちなのです」と。
しかし、たとえそうなったとしても、適切な企業を見つけなければなりません。すべての企業が永遠に存在しうるわけではありません。今までもそうでした。簡単なことではありません。
次回は、ジム・ロジャーズ氏特別インタビュー【4】成功への道と人生の重要な教訓をお届けします。