ポートフォリオ構築:ジム・ロジャーズ氏の成功への道

岡元:みんながお金持ちになれるなんて素晴らしいことですね。ジムさんはファイナンシャル・アドバイザーではないのですが、お聞きしたいことがあります。あなたが日本人の個人投資家だとしたら、今後20年間、どのようなポートフォリオを組むでしょうか?

ジム・ロジャーズ氏:もう1度言います。私だったら知っていることだけに投資します。もし私が日本の個人投資家だったら、自分がよく知っている少数のものにとどまり、チャンスを見つけようとします。
私にとっての成功への道は、この変化が起きている中で安いものを見つけることです。安くて変化があって、それについてよく知っているものを見つけられたら、もっと研究して投資すべきです。

岡元:これは日本人の頭痛の種です。日本国外で投資をするのであれば、為替を考慮する必要があります。日本人だけでなく、誰でもです。もし金融業界にいるなら、ヘッジすることもできるでしょう。
しかし個人投資家は為替ヘッジのテクニックを持ち合わせていません。アメリカの金利がピークに達して下がってきて、円高になるかもしれない。つまり、日本の視点からの海外投資は損をする可能性があるということです。それを踏まえて2つ質問させてください。 円の方向性についてどうお考えですか?

ジム・ロジャーズ氏:まず、みなさんに強調しておきたいのは、お金を稼ぐ簡単な方法はないということです。そして、お金持ちになるのも簡単ではありません。投資も簡単ではありません。投資の決断には多くのことが必要です。ただA社を買うだけでなく、通貨、借金、政治、あらゆるものを考えなければならないのです。だから簡単ではなく、投資をする際には為替を気にしなければならないのです。

日本人であろうとアメリカ人であろうと、誰もが米ドルを売るかもしれません。でも、心配はいりませんよ。ドルは上がって、下がります。それは歴史上の様々な時代において、どのような通貨であったとしても同じです。だから、簡単なことではないことを強調したいのです。

もし私が日本国民だとしたら、繰り返し言いますが、自分の知っていることのみに投資します。円が横ばいだった時期には、円について深く考える必要はありませんでした。しかし現在は考えなければならなくなりました。

どの国も歴史の中で大きな変動があるものだから、それを考慮しなければなりません。ただ、もし私が今、日本国民だったなら、日本の株式市場がかつての高値に戻る可能性は十分にあると言うかもしれません。

それは円安のせいもあります。円安は輸入価格が上がりますから、日本人の生活にとっては良くないですが、日本株にとっては良い訳です。日本に住んでいて、もし円安になるのであれば、自分のお金の価値がどうなるかは真剣に考えなければなりません。

円が下がれば小麦の値段が上がり、銅の値段が上がり、いろいろなものの値段が変わってきます。そのような状況は、日本には打撃です。その一方、ユーロ紙幣の価格は上昇します。米の値段も上がるでしょう。

初めての投資:投資脳を鍛えるヒント

岡元:日本では2024年からNISAという制度が新しくなります。これは、日本が英国を真似て導入した制度で、個人が銀行やタンスに眠らせているお金を預金から株式市場に移すことを奨励するものです。初めて投資をしようと考えている個人投資家が増えるのですが、そんな投資家のみなさんへアドバイスをいただけますか?

ジム・ロジャーズ氏:自分が何をしているのか分かるまでは、投資をすべきではないということです。もし、あなたが債券と株式の違いを知らないのであれば、まずは自分自身を教育してください。投資というのはお金を稼ぐ簡単な方法ではありません。

できる限り多くのことを学び、投資を始めたら、自分の知っていることにフォーカスしてください。誰もが何かについて知っているはずです。私たちみんなが毎日インターネットを見て、知っていることがあります。スポーツでも何でもいい。どうか、他の人の言うことを聞かないで、自分のやりたいことを貫いてください。そうすれば成功します。

この話をすると、みんなつまらないから聞きたくないと言いますが、金持ちになりたければ、つまらなくなってください。いくら強調しても足りません。自分の知っていることにフォーカスしてください。

岡元:ジムさんが現在65歳だと仮定しましょう。これは一般的な日本人が定年退職する年齢です。多くの日本人が100年以上生きる可能性があります。若い人たちと違って、ある程度の収入が定期的に必要でしょう?それを踏まえて、これからの世の中をどのように考えていますか?65歳、日本人のポートフォリオのポジションはどうなるでしょうか?

ジム・ロジャーズ氏:もし私が65歳の日本人だったら、知っているものにフォーカスします。世界について、いくつか知っていることがある日本市場、韓国市場、中国市場、そしてアメリカ市場についても少しは知っているでしょう。

私は自分の知っていることにとどまり、チャンスを見つけようと思います。もしかしたら私はコットンのことをよく知っているかもしれません。シャツを作っていますから。私ならそこから始めます。コットン市場で何かチャンスになるようなことが起きているのか?シャツ市場で何かが起きているのか?タイではどこよりも安くシャツを作っているのかもしれません。タイのシャツ会社に投資すべきかもしれません。

私たちは皆、何かについて知っています。耳寄り情報は避けてください。

65歳の日本人の皆さんにお伝えしたいのは、自分の人生に目を向け自分が何について一番よく知っているのかを見極めてください。そしてチャンスを求め、チャンスがなければ、心配しないでただ待ってください。今月ではないかもしれませんが、いずれあなたの分野でチャンスがあります。ただ、待つだけです。

 

投資期間:短期VS長期、どちらがよいのか?

岡元:個人投資家が短期売買をするべきか、長期投資をするべきかについてはご意見ありますか?

ジム・ロジャーズ氏:みなさんの得意分野によりますね。もし、あなたが短期売買が得意ならそうすればいいですし、私はそうではありません。しかし、私は素晴らしい短期トレーダーを何人か知っています。彼らが1週間も株を保有していたら、それは長すぎるのです。

私は短期売買が苦手ですが、それは誰でも自分で考え、自分が短期投資に向いているかどうか考えてみる必要があります。私が株式市場に足を踏み入れた時には、そのことを知りませんでした。短期売買が得意かどうかを学ぶ必要があります。やってみてください。得意なら大金持ちになれます。私はそうではないので、何ヶ月、何年、一生所有できるものを見つけます。

誰もが自分の道を見つけなければなりません。以前、私はすべてを失ったことがあると話しました。私はとても優秀だったと思いますが、すべてを失ったのは、市場の仕組みについて、短期売買のことについてよく知らなかったからです。私が学んだ群衆の狂気について知らなかっただけです。

ファンダメンタルズはとても重要です。私は、ファンダメンタルズ分析は完璧でしたが、短期的な投資家のセンチメントについては十分に理解していませんでした。

優れた投資家になるために、知っておきたい投資で重要なこと

岡元:投資においてもっとも重要な規律はなんでしょうか?

ジム・ロジャーズ氏:会計学は、投資において最も重要な学問のひとつです。短期トレーダーなら、何も知らなくてもいいですが、優れた投資家になりたいのであれば、ぜひ数字について学んでほしいのです。会計士になる必要はありませんが、数字の仕組みを学ばなければなりません。資産についても負債についても知らなければなりません。売上や利益についても知る必要があるでしょう。基本的な数字とその仕組みを知らなければなりません。

競争についても知らなければなりません。他の人々が何をしているかを知らなければなりません。政府が何か行動を起こせば、政府についても知らなければなりません。それは誰かを金持ちにすることで、間違った行動かもしれません。でも、それは問題ではないのです。政府が何かに大金を使えば、誰かがリッチになります。だから政府には注意を払う必要があります。

そして、何が変化しているのかを把握する必要があります。良い変化であれ、悪い変化であれ、その変化を見極めることができれば、おそらく大儲けできるでしょう。長期的な問題なのか、短期的な問題なのかを見極める必要があります。

人生の重要な教訓「すべては変化する」

岡元:あなたの人生における教訓についてお聞かせください。

ジム・ロジャーズ氏:いろいろありました。先ほども言いましたが、一度すべてを失いましたが、その前に大儲けしたことがあるのです。大きな財産を築けたわけではないのですが、少ない金額ではありませんでした。周りの人々が大損しているときに、3倍儲けたのです。その後、空売りをしたのですが、それは失敗に終わりすべてを失いました。文字通り何も残りませんでした。バイクを売るしかないと思いました。その時の状況は酷かったのです。

私のファンダメンタル分析は完璧だったのですが、群衆の狂気については理解していませんでした。私はそれらを空売りしました。大きく上がりましたが空売りしたから、どうしようもできませんでした。それらの会社は結局倒産し、私はすべてを失いました。とても悲しく、混乱して当惑しました。
大成功から大失敗に陥ったからです。

でも振り返ってみると、日本語の「危機」という言葉がチャンス、「災い転じて福となす」という意味であることを知ることになりました。当時は知りませんでしたが。

岡元:前向きに考えるということですね?

ジム・ロジャーズ氏:そうなのですが、そう簡単にはいきません。 特に若くて経験が浅いうちは、突然大きな災害に見舞われても、ああ、これは素晴らしい、と言うのは簡単ではありません。

世界一周の旅の途中で拘束されたこともあります。コンゴで9日間、警察に人質にされたのです。私はコンゴのど真ん中にいました。警察でしたので、警察に行って助けてとは言えませんでした。不安でした。

私の人生には困難な時期もありました。でも、私はまだここにいます。まだ生きています。だから今はとても幸せです。

子ども達に何かあったら私は打ちのめされてしまいます。なぜなら、子ども達は今、私の人生で最も大切だからです。長い間子どもは欲しくないと思ってきました。それは人間にとって、とても恐ろしい過ちとすら思っていたのです。

しかし今、私は子ども達に対して非常に前向きです。私は学んだのです。今日あなたが何を思っていようと皆さんには学び続けてほしいと願っています。今知っていることが15年後には間違っているかもしれません。それが自分自身についてであれ、世界についてであれ、人生についてであれ、投資についてであれです。

「すべては変化する」ということを理解することは、とても重要な教訓です。良くも悪くもですね。そして、それがどう変わるかを見極めることができれば、大きな成功を収めることができるでしょう。

一番重要なのは自分自身が何を好きなのかを見極めること

岡元:最後に何かメッセージをいただけますか?

ジム・ロジャーズ氏:最も重要なメッセージは、若かろうが年配であろうが、自分自身が何を好きなのかを見極めることです。そして追求し、追求し、追求することです。

もしあなたが若ければ、もっと若いころの気持ちに戻りましょう。そしてガーデニングが好きで、計画を立てるのが好きなら、ガーデナーになるべきです。君の両親は言うでしょう。「ガーデナーになるために教育したんじゃない」と。そして先生たちは言うでしょう。「こんな素晴らしい学校に行って、ガーデナーになりたいのか?」と。そして友達は笑うでしょう。「え? あの子はガーデナーなの」って。

だから毎日起きて、毎日楽しみましょう。たとえ状況が悪くても、何をすべきかわかっていれば、いつかアジア中にガーデンショップのチェーンができるでしょう。そして、ニューヨーク証券取引所に上場します。ご両親から電話がかかってきて、こう言われるでしょう。「あなたが小さい頃、種をあげたことを覚えている?」と。先生は、「あなたがガーデナーになるよういつも励ましていた」と言うでしょう。そして、友人たちはあなたを呼んで言うでしょう。「ねえ、あなたお金持ちよね、仕事が欲しいわ」。あなたはとても成功し、とても幸せになり、嫌な日だって、きっといい日になります。

しかし、ほとんどの人にとって、それはとても難しいことです。私も自分の人生で何をしたいのかわかりませんでした。18歳や21歳の頃、考えていたことはすべて間違いだと思っていました。

幸いなことに、私はそれが間違っていないことを偶然学びました。自分の好きなものを見つけられればいい。人生について知る必要があるのはそれだけです。決して不幸にはなりません。毎日が良い日になります。自分の好きなこと、自分が幸せだと感じることをやることです。

特に他人から「お前はバカだな!」と言われたらなおさらです。そんな批判に対し闘うのです。簡単ですが、難しいことではあります。私たちの大半は、21歳のときに思っていたことがすべて間違っていたと言うでしょう。私も21歳のときに考えていたことは、自分自身についても世界についても間違っていました。恋愛もうまくいきませんでした。

私は何も知りませんでした。打ちのめされました。災難であり、悲劇だと思いました。そして今、やっと分かったのです。ありがたいことです。

岡元:ジムさん、ありがとうございました。お会いできて大変楽しかったです。

ジム・ロジャーズ氏:どういたしまして。こちらこそ、楽しかったです。