今回のインタビューでは、ハッチこと岡元兵八郎がジム・ロジャーズ氏に米国と中国の関係は今後どうなるか、これから成長が期待される魅力的な3つの市場について、直撃しました。
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中国が台湾に対して軍事行動を起こす可能性は?
岡元:ジムさんは、中国に対して非常に前向きですね。私は先日6年ぐらいぶりに中国の深圳市に行きました。金融業界の人たちと会って、中国の可能性についてポジティブに考えさせられました。しかし、米国では中国が台湾に対して軍事行動を起こす可能性があると主張する人もいます。
特にロシアやウクライナ、中東で紛争が起きている状況下で、これらの出来事は中国が台湾に対して実際に軍事行動を起こす口実を与えていると私は感じています。そこで質問なのですが、ジムさんの意見として、軍事行動の可能性はどのくらいあると思いますか?もしそうなった場合、中国に対する見方は変わるのでしょうか?
ジム・ロジャーズ氏:まず第1に、もし私が中国政府のトップだとしたら...、まあ、実際は違いますが、待ちます。地図を見てみましょう。台湾はいつか中国の一部になると思います。数年か数十年待たなければなりませんが、私が中国なら、ただひたすら待つでしょう。
米国の軍隊が戦争を好むということが、ひとつのリスクです。米国が戦争を引き起こすようなことをするリスクもあります。しかし、米国がその戦争に勝てるわけがないのです。
米国の国防総省は戦争モデルを作成しており、それによれば米国は負けると言われています。台湾をめぐる戦争に勝つことはできないと。その理由はとてもシンプルです。地図を見てください。一体どのようにしたら米国は勝てるのでしょうか。そのため、台湾をめぐる戦争が起これば中国にとって良いことはないですし、もちろん米国にとっても良いことではありません。
両方にとって愚かな戦争になるでしょう。そのため、それは起こらないでしょう。戦争は何を中国にもたらすのでしょう?戦争は誰にとっても良いことではありません。人間は何千年も戦争をしてきました。
戦争をしたとしても、中国は回復するでしょう。中国は巨大です。シベリアのすぐ近くには莫大な量の天然資源があり、人口はそれほど多くありません。これは中国のための資源です。当面は心配ないでしょう。20世紀の米国には、酷い時期がありました。それでも20世紀で最も成功した国となりました。同様のことは将来、中国にも起こることだと思います。
もし戦争となれば、歴史はそうなることを示しているように、誰にとっても良いことではありません。
米国と中国の関係は今後どうなるか
岡元:米国と中国の政治的関係についてですが、米国は中国との関係を完全に断ち切ることはできないでしょう。両国は相互に必要としています。ジムさんはこの2国の関係をどう見ていますか?
ジム・ロジャーズ氏:もし、政治的に行き詰まったとしても、世界の大国が経済的に前進するでしょう。過去40年間はそうでした。1980年ごろから両国はうまくいっていました。両国はお互いに大金を手にし、素晴らしい状況でした。世界中の政治家は、物事がうまくいかなくなると他国のせいにします。自国よりも他国を責めるのは簡単です。
岡元:そうですね。
ジム・ロジャーズ氏:そして政治家たち、特にトランプ氏は、米国のすべての問題を外国人のせいにし始めました。中国がその矛先となったのです。だから、人々は文句を言い始めました。中国は可能な限り反撃をしませんでした。彼らは抑制されてきました。今は双方が協力しようとしているようです。私はそう願っていますが、歴史はこの2つの国が いつか戦争をおこすと示唆するでしょう。
歴史とはそういうものです。停滞している支配的な大国と台頭している大国がある場合、歴史上ほぼ常に衝突してきました。必ずではないですが、ほぼ常にです。人間とはそういうものだからです。
だから私は、将来的に米国と中国の間で軍事衝突が起きるのではないかと思っています。それは誰にとっても良いことではありません。負けた方がより悪い影響を受けます。
国防総省の戦争モデルの地図を見ると、我々は負けることがわかりますが、核兵器の場合はどうなるかわかりません。しかし、核兵器を使用して勝ったとしても、我々は勝てないでしょう。私たちは負けるでしょう。私たちの破滅となり、歴史の移り変わりを見るでしょう。
100年前、英国は世界で最も豊かで強力な国でしたが、崩壊し、米国に取って代わられました。次に米国に取って代わるのは、私は中国と予測していますが、他の誰かかもしれません。
そして明らかに、日本は両国関係の悪化から利益を得ることはないでしょう。紛争、貿易紛争、軍事紛争で得をした人はいません。勝ったと思っている人たちでさえ勝てないのです。
今後、成長が期待される魅力的な3つの市場
天然資源、観光資源が豊富なウズベキスタン
岡元:ジムさんは、あまり注目されていない国の株式市場がお好きだと思うのですが、一般的に、新興国の株式市場の方が、先進国の株式市場よりも有望だと思いますか?
ジム・ロジャーズ氏:一般的にはその通りです。株価が安いからです。40年前のドイツを見ればわかりますが、ドイツの株価はとても安かったのです。ドイツは大成功を収め、台頭していたにもかかわらず、株式市場には誰も見向きもしませんでした。50年前の日本を覚えているでしょうか。日本株に投資をするんだと言うと、みんな笑って「気でも狂ったのか」と言ったものです。ですが、50年前に日本株に投資をしていたら大変なことになっていたのです。
通常は無視された市場の株価が安いのは、誰も注目していないからなのです。しかし、それはしばしば大きなチャンスにつながります。私は最近ウズベキスタンの株式市場に投資をしました。次の日本になるとは思いませんが、大きな成功を収める可能性があるとみています。
岡元:資産価格が割安だからですか?
ジム・ロジャーズ氏:彼らは巨大な資産を持っているからです。天然資源があり、観光資源もあります。ウズベキスタンは、資本主義で国を動かしています。ウズベキスタンは新たなサクセス・ストーリーになるかもしれません。
インドは中国の次の大国となるか
岡元:以前のジムさんが「もし世界で1ヶ国しか行けないとしたら、それはインドだ」と言っていた記事を読みました。しかし、ジムさんは投資において、中国ほどインドに期待していないように感じられますが、それはなぜでしょうか?
ジム・ロジャーズ氏:私がそのインタビューで言ったのは、もし訪れることができるのであれば、観光として魅力的なインドへ行くべきだと言うことですね。
インドは食べ物、人工科学、自然の風景において、驚くべき場所です。本当に賢い人たちがたくさんいます。しかし、世界最悪の官僚機構がある国のひとつでもあります。彼らは英国から官僚主義を学び、より悪い方向に向かってしまったのです。インドには多くの民族、宗教があります。問題の一部は政府にあります。多くの民族、宗教、言語集団がいるからです。この数十年、一度もまとまったことがありません。しかし、良いところもたくさんあります。ただ、彼らは全体をうまくまとめることができないのです。
また、素晴らしい農家もあり、そういった農家を保護するために規則や規制を設けて助けようとしています。しかし多くの場合と同じように、官僚主義がそれを台無しにしてしまっています。
中国は良くも悪くも、基本的にひとつの民族、ひとつの民族集団です。私はインドに懸念もありますが、大きな可能性を感じています。私は、インドが世界の中国の次の大国になると思っています。インド人はとても良いPRをしていますが、それは現実的ではなさそうです。観光旅行ならインドに行けばよいと思いますよ。
アフリカの魅力と投資の醍醐味
岡元:ジムさんは、バイクで多くのアフリカ諸国を訪れていますね。20年程度の中長期的な視点で見た場合のアフリカへの投資の醍醐味を教えてください。
ジム・ロジャーズ氏:アフリカには50以上の国があり、その中には人々や指導者のせいで絶望的な国もあれば、偉大な国もあります。過去のアフリカにも偉大な帝国がありました。今後、アフリカでも歴史に残る偉大なサクセス・ストーリーが再び生まれるかもしれません。
アンゴラへの投資は、歴史に残る偉大なサクセス・ストーリーであり、再び成功する可能性もあります。ただし、地図上でアンゴラを見つけられないなら、アンゴラへの投資はやめておきましょう。みなさんがアフリカを理解しているのであれば、アフリカには大きなチャンスがあるでしょう。賢いアフリカ人はたくさんいます。みんな働き者で、特に女性はアフリカで1番働き者です。
このような理由もあり、アフリカへの投資は魅力的だと思います。でも中国がアフリカ中に注目しており、アフリカのどこに行っても中国政府、中国起業家、中国人を目にします。そのため、アフリカへの投資は、早いほうがいいと思います。
岡元:アフリカでジムさんがお勧めの国はどこですか?
ジム・ロジャーズ氏:まあ、それは10年ごとに変わっていきます。人も変わっていきます。ルワンダのように、政府が資本主義や起業家精神に対して正しい姿勢を持っているところは、ひとつのチャンスですが、それは本当に「時と場合」によります。
ガーナにはカカオがたくさんあり、世界市場を独占しています。1956年から1957年にかけて、大英帝国で最も裕福な国はガーナでした。カカオの巨大な強気相場があり、彼らはカカオをたくさん持っていたからです。彼らは当時信じられないほど裕福でした。しかし、その10年後にクーデターが起こり、破産しました。すべてが一瞬で変わってしまうのです。
石油を持っている国もあります。農業が盛んな国も、金や鉱山がある国もあります。ボツワナにはダイヤモンドがたくさんあります。初めて私がバイクでアフリカを旅したとき、ボツワナの国境を越えました。その時ボツワナについてよく知らなかったのですが、他のアフリカの統一国家とは何かが違うのを感じました。ボツワナには、世界最大のダイヤモンド鉱山があったのです。後にこの国は大きなダイヤモンド鉱山で、大成功することになります。ですから、時間次第ということなのです。
答えはいずれ出ますが、10年後もこれまでと同じ答えが出るわけではありません。人生とはそう単純なものではないと思っています。
次回は、ジム・ロジャーズ氏特別インタビュー【3】日本への緊急提言/すべてを失った投資の失敗から学んだことをお届けします。