神経内科医という多忙な仕事をしながら、約16年前に50万円から株式投資を始め、資産1億円を突破している個人投資家のちゅり男さん。「自分の判断を過信せず、常に株式市場に居続けること」をモットーにインデックス投資を継続しています。約1年前のインタビュー「自分を過信しない!医師の堅実な投資術」「億り人以降もインデックス投資を継続、ブレない投資戦略の理由」では、これまでの資産形成のポイント、堅実な投資スタイルにこだわる理由などをご紹介しましたが、今回新たに教育資金の作り方や「新しいNISA」の戦略などをお聞きしました。
●ちゅり男さんプロフィール●
愛知県在住の個人投資家。本業は神経内科医。30代後半で、妻と子ども2人(小学生・保育園児)の4人暮らし。ブログ「Dr.ちゅり男のインデックス投資」やTwitterで投資関連の話題や初心者も実践できる投資や節約術、人生を豊かにする本や健康情報を配信。
教育資金は小学校低学年までを目途に準備するのが理想
――お子さまの教育資金はどのような方法でご準備されていますか? 目標額や到達に向けた戦略などもお聞かせください。
教育資金に関しては、子どもの人数や、進学先が公立か私立かによって大きく変わってきます。大学卒業まですべて国公立でも1人1,000万円程度、私立であれば3,000万円近いお金がかかると言われており、これらの金額を参考にして早い段階から計画的に資金を準備する必要があります。
教育資金の考え方としては、2年〜3年後など近い将来に使うことが決まっているお金は株式などのリスク資産に回さず、現金で用意しておくことが重要だと考えています。逆に、大学進学など10年〜15年後に使う可能性が高いお金に関しては、長期で運用可能な株式インデックスファンドなどに回すのもよいと思います。
幼稚園や小学校受験をする場合は、幼少期からある程度の教育資金を準備する必要があります。逆に、受験は早くても中学、高校からと考えているのであれば、小学校低学年までは教育コストはあまりかかりません。もし可能であれば、教育コストがかからない小学校低学年ぐらいまでを目途に、将来に向けた準備をある程度完了しておくのがよいのではないでしょうか。
私自身は子どもの教育資金の積立にジュニアNISAを利用しています。ジュニアNISAといっても実際に運用しているのは親ですが、子ども名義の口座で投資を行うことにより、その資金の用途が明確になるのは大きなメリットです。一方で、2023年末でジュニアNISAは廃止が決定しており、2024年からは新しいNISAが開始されます。これにより、未成年が利用できる非課税口座は廃止されますが、その分、新しいNISAでは生涯、非課税で投資できる金額が1,800万円まで上昇するため、2024年以降は新しいNISAの制度を活用して子どもの教育資金も運用するのがよいと考えています。
教育資金は一定の時期に一定の金額が必ず必要になるので、資産運用で大損失を出すことは絶対に避けなければなりません。株式投資でなるべく損失を抑えるためには、できるだけ長く運用することが重要だと考えています。そのため、子どもの教育資金の一部を株式で運用する場合、子どもが生まれた直後のできるだけ早い時期から計画的に実施することが重要だと思っています。
1年未満であってもジュニアNISAは価値があると考える理由
――ジュニアNISAについて、これまでの方針(保有商品や目標額)と、今後の出口戦略などをお聞かせください。
2024年から新しいNISAの制度が開始になるため、現行のジュニアNISAは2023年末で廃止されます。しかし、2023年末までに投資をした金融商品に関しては、引き続き子どもが成人するまで非課税のまま保有することが可能です。子どもの年齢が低ければ低いほど、非課税で運用できる期間が長くなります。これまでは5年を超えて非課税運用を継続するためには、手動で継続管理勘定へ移すロールオーバーの手続きが必要でしたが、2024年以降はロールオーバーが自動化されます。これによって、基本的には子どもが成人になるまで放置することが可能です。
ジュニアNISAでは、個別株や国内外のETF、投資信託など様々な金融商品を選択することができ、一部の個別株やETFは定期的に配当金が支給されています。しかし、2024年以降はジュニアNISAでの新規買付ができなくなるため、配当金を非課税枠内で再投資することができなくなる点は注意が必要です。一方、投資信託であれば「分配金自動再投資」型の商品を選べば、分配金はファンド内で自動再投資され、基準価額の上昇につながります。そのため私は、2024年以降は基本的に放置するしかなくなるジュニアNISAに関しては、投資信託を選択するのが効率がよいと考えています。
――ジュニアNISAの投資先についてはいかがでしょうか。
投資先としては、私は全世界株式市場を対象としたインデックス投資を選んでいます。世の中の変化のスピードはどんどん加速しており、企業の寿命も短くなっていることから、10年〜20年後の未来を正確に予測することは困難です。その中で、最低水準のコストを維持している投資信託に投資をしています。
ジュニアNISAの年間投資枠は80万円が上限です。1年分の枠(80万円)で子どもの教育資金のすべてを賄うことは不可能ですが、2023年内であれば利用できるため、投資に回せるお金がすでに用意できている場合は残り数ヶ月の期間だけでも利用する価値があるのではないかと思います。
新しいNISAでも「やるべきこと」をシンプルに長期運用
――2024年からの新しいNISAについては、どのようにお考えでしょうか。具体的な戦略はありますか?
2024年から始まる新しいNISAでは、非課税で投資できる金額が1人あたり生涯で1,800万円まで上昇し、非課税での保有期間も恒久化されます。さらに、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」に分かれ、両者は併用可能です。「つみたて投資枠」の年間投資枠は上限120万円で、現行のつみたてNISA制度と同様、長期・積立・分散投資に適した商品にのみ投資が可能です。基本的には低コストインデックスファンドを選び、世界の株式に投資できる投資信託がよいかと思います。
「成長投資枠」の年間投資枠は上限240万円で、現行の一般NISAの後継制度となります。国内外の個別株、ETF、投資信託などより幅広い商品ラインナップから自分の好きな商品を選択できますが、長期投資に値する個別株を選別するためには、かなりの時間を銘柄分析など株の勉強に充てる必要があり、多忙な人にとって現実的ではないかもしれません。
私個人の考えとしては、「成長投資枠」に関しても「つみたて投資枠」と同様とすればそれで十分だと考えています。やるべきことをできるだけシンプルにした方が長続きする可能性が高いうえ、10年〜20年と長く運用すれば十分なリターンが期待できると考えているからです。
外国株投資を含む資産形成の重要性を再認識
――インタビュー取材時から約1年が経ちました。投資への意識や投資戦略などで変化があればお教えください。
投資への意識は前回のインタビューから大きくは変わっていません。万が一の時のための生活防衛資金は十分蓄えてあるため、毎月の給与から発生する余剰資金はすべて株式投資に回すようにしています。
2022年〜2023年にかけて急激に円安が進行したこともあり、株式投資において円建て資産(日本株)だけに集中投資するのではなく、外貨建て資産(外国株)も保有することが重要だと再認識しました。日本人は米国などと比較すると、株式投資に対して消極的で、家計資産に占める預金の割合が高く、仮に株式投資をしたとしてもこれまでは馴染みの深い日本株を選択していた方も多かったと思います。しかし、昨今の情勢を考えると、アセットクラスも通貨も分散しておくことの重要性がますます高まっていると思います。
また、日本人の実質賃金が伸び悩む中、食料品、日用品、光熱費などほぼ全てで急激なインフレが進行しており、平均的な日本人の実質購買力は大きく低下したと言えるでしょう。5年〜10年前からコツコツと外国株投資を含む資産形成に取り組んできた人と、これまで預金しかしてこなかった人の差が一気に広がってきています。以前からポートフォリオの中に外国株を積極的に取り入れていれば、円安の進行によって一気に資産が増加したため、昨今の円安やインフレにも十分に対応できたはずです。今後もこの流れは加速する可能性があり、小さなことからでよいので今すぐに行動を開始することが重要だと思います。
――本日はお時間をいただきありがとうございました。
※本内容は2023年7月に取材しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。