ワクチン接種率が株価に影響

前回コラムでは「各国・地域間のワクチン接種の拡大スピード差がモノを言う」と述べました。その後、実際に世界の株式市場において新型コロナワクチンの接種率が株価を左右しているという事実が明らかにされ、様々な形で報じられることとなりました。

もちろん、為替レートの変動要因はより複雑であると思われますが、相対的にワクチン接種の拡大スピードが速い米英の景気回復期待が強まっていることは紛れもない事実です。それはこのところの米ドルやポンドの強さにも表れていると言えるでしょう。

米国債利回りは上昇

既知のとおり、ここにきて米国における新型コロナウイルスの新規感染者数は目に見えて大きく減少しており、そのことも一因となって米国債利回りは顕著に上昇しています。

実際、先週末2月12日には米10年債利回りが1.2%台、米30年債利回りが2.0%台に乗せる動きとなりました。その結果、米2-10年債の利回り格差は一段とスティープ化が加速しました。

実のところ、2月8日に米30年債利回りが一時2%台に乗せた場面では、目先的に一種の達成感が強まったことが一因となり、後に一旦利回りが低下しました。そして、結果的に分かりやすく米ドル売りの流れが強まるといった場面もあったのです。

先週末(2月12日)あたりから、米国では薬局やスーパーなど小売店でのワクチン接種も始まっています。なおも米国では在庫や流通の問題があるとはいえ、少なくとも欧州連合(EU)や日本などに比べると遥かに速いペースでワクチン接種の拡大が着実に進んでいます。

ちなみに、EUで最後にワクチン接種が開始されたのはオランダで、最初の1人が接種を受けたのは1月6日のことでした。翻って、日本では今週あたりからようやく接種が始められる見通しと伝わっており、やはり米英との差は歴然としています。

米ドル/円は底堅い展開

そのような状況のなか、米ドル/円は2月初旬に一時的にも200日移動平均線を上抜く場面がありました。結局、一旦は同線に強く押し戻される格好となりましたが、先週2月10日には21日移動平均線が89日移動平均線を上抜けるゴールデンクロスを示現したことも事実です。基本的に底堅さが感じられる状態が、なおも続いています。

少し振り返ると、2021年1月7日を境にそれまで米ドル/円の上値を押さえ続けていた一目均衡表(日足)の基準線が下値サポート役に転換している点も見逃せないものと思われます。

米追加経済対策への期待や次回(3月)の日銀会合に関する市場の思惑などもあり、いずれ再び米ドル/円が200日移動平均線を試す可能性は高いと考えます。仮に同線を上抜けた場合には、2020年3月のコロナショック後につけた高値から2021年1月安値までの下げに対する38.2%戻し=106.07円が次の上値の目安の1つになると見ておきたいところです。

ユーロの動向はワクチン接種拡大懸念の影響があるか

一方で、EUは依然としてワクチンの生産面におけるボトルネックの問題を完全には解消できていない模様です。先週2月10日に欧州委員会は2021年のユーロ圏成長率予想を従来の4.2%から3.8%に下方修正しましたが、それもワクチン接種の拡大に関わる懸念によるところが大きいと見られます。

目下のところ、ユーロ/米ドルは一目均衡表の日足「雲」下限が下値サポートとして機能しています。先週2月11日には一時1.2150ドル処まで値を戻す動きとなりましたが、目先は日足の基準線が上値を押さえる格好になっています。

当面、ユーロ/米ドルの1.2150ドル処は1つの節目として意識されやすく、同水準をクリアに上抜けることができない場合は、再び日足「雲」下限水準を試すことになると見られます。さらに、同水準をも下抜けた場合には、次に2020年11月安値から2021年1月高値までの上昇に対する61.8%押し=1.1888ドル処が視野に入ってくるものと思われます。