「2月警戒論」が現実のものとなるか
かねて市場に根強くあった「2月警戒論」が現実のものとなる可能性が高まってきています。実際、1月29日の日経平均株価とNYダウ平均株価は大幅安となり、ともに25日移動平均線を下回る水準まで下押してきています。
もともと、目先の高値警戒感は双方ともに強まっていました。2017年の秋口から2018年の1月下旬にかけて大きく値を上げた後に反転急落したときのバターンに似ているとの指摘も以前から聞かれていました。
むろん、今回の日米の株価下落の直接的な引き金となったのは米国市場における一部中小型株の異常な乱高下だったわけで、このことが相場の根底にある強気トレンド自体を変えてしまうことはないと思われます。しかし、やはり事態が収束するまでには一定の時間を要するということも一応、覚悟しておく必要があるように思われます。
折しも、1月31日から2月21日までは「水星逆行」の期間にあたり、相場のボラティリティが高まりやすくなるというアノマリーが投資家心理に作用する可能性もあると見られます。
そのような中、足下の米ドルはユーロや円に対してやや強含みの動きになってきています。株価の調整で、いわゆる「リスク回避のドル買い」圧力が強まっているということもあるのでしょう。しかし、より根本的なところでは、むしろ米・欧・日の間における今後の景気回復見通しの違いが、より重要なポイントとなってきているように思えてなりません。
景気回復の行方を左右する新型コロナワクチン接種の拡大スピード
各国・地域における今後の景気回復の行方を見通すうえでは、やはり新型コロナワクチン接種の拡大スピードがモノを言うようになると考えられます。その点において米・欧・日の間には今、大きな差違が生じています。
既知のとおり、米国ではバイデン米大統領が「春までに希望者全員のワクチン接種が可能になる」との見通しを明らかにしています。一方の欧州ではワクチン供給の当初計画に対する遅れが大いに問題視されています。
むろん、日本政府の対応はより一層深刻で、いまだワクチン接種の実績は一例もなく、英データ会社の予測によると、日本が集団免疫を獲得するのは10月頃になるとされています。
1月26日、一部通信社が関係者の話として「欧州中央銀行(ECB)はFRB(米連邦準備制度理事会)との政策の違いが為替レートに与える影響を調査する」と伝えていました。米国経済の方が強いにもかかわらず、米ドルが弱いことが疑問だというのです。「御説ごもっとも」と言えるでしょう。
ユーロ圏に関しては、域内各都市の封鎖措置が一段と延長される可能性があるとの指摘もあります。仮にそうなれば、ECBはパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を再度延長する必要に迫られる可能性があるとの指摘もなされています。
そうした背景もあってか、目下のユーロ/米ドルは上値抵抗として意識される21日移動平均線と下値支持として機能している一目均衡表の日足「雲」上限との間でのもみ合いを続けています。いまや21日移動平均線はジワジワと下降してきており、このまま同線を上抜けることができないと、いずれ日足「雲」上限を下抜け、再び節目の1.20ドル処が意識されやすくなる可能性もあると見られます。
一方、米ドル/円は先週末にかけて3日続伸しました。ついに、89日移動平均線や日足「雲」を上抜けています。日足ローソクが終値で日足「雲」よりも上方に位置するようになるのは2020年6月半ば以来のことです。これは2020年3月高値下落基調が2021年1月安値で完了したことを示唆する動きかもしれません。
目先、105円処は上値の壁となる可能性もあります。それがひとたび105円台乗せとなれば、次に105円台半ばに位置する200日移動平均線を試すような展開になる可能性もあると考えられます。