8年前とはかなり異なる状況=為替ポジションなど
トランプ氏の勝利を受けた米ドル/円の上昇は、約2週間過ぎた11月20日までの段階で151円台から156円台まで、最大で5円程度にとどまった(図表1参照)。前回、2016年11月の大統領選挙でトランプ氏が勝利してから約2週間過ぎた段階では、101円台から112円台へ、最大で11円以上の上昇となっていたことと比べると半分以下の小幅にとどまったが、その理由は何か。
CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、8年前の選挙でトランプ氏の勝利が決まる前までは買い越し(米ドル売り越し)となっていたのに対し、今回は売り越し(米ドル買い越し)となっていた(図表2参照)。
8年前は、一般的にはサプライズだったトランプ氏の勝利を受けて、慌てて同氏の選挙公約である大型減税などの影響を織り込む動きが起こった結果、米金利急騰、米国株の一段高となり、それに連れる形で米ドル/円も急騰した。ところが為替市場は、直前まで米ドル売り・円買いのポジションとなっていたことから、その反動も米ドル高・円安を加速させ、大幅な「トランプ・ラリー」が起こったのだろう。
これに対して、今回は8年前の記憶もあったことから、為替市場は選挙の結果が出る前から米ドル買い・円売りポジションをとっていた。このため、ある程度予想されたトランプ氏勝利に対するさらなる米ドル買い・円売りの反応も限られ、「トランプ・ラリー」は小幅にとどまったということではないか。
次に、米ドル/円の5年MA(移動平均線)かい離率を見てみよう。2016年10月末、つまり大統領選挙直前の同かい離率はプラス3%で、米ドル/円は5年MAとの関係ではほぼニュートラルな状況にあった。これに対して、2024年10月末の同かい離率は19.8%で、米ドル/円はすでにかなり「上がり過ぎ」懸念が強い状況となっていた(図表3参照)。
5年MAとの関係からすると、8年前の米ドル/円はトランプ氏勝利を受けて「上がり過ぎ」拡大に向かったのに対し、今回はすでに「上がり過ぎ」圏にあったことから、さらなる「上がり過ぎ」拡大も限定的にとどまったということだろう。
8年前の「トランプ・ラリー」は、結果的に約1ヶ月続き、米ドル/円の最大上昇幅は17円程度に達した。では今回もこの後、米ドル/円は上昇幅を拡大するかと言えば、それは懐疑的ではないか。逆に年末が近づくことを考えると、米ドル買い・円売りポジションの調整により米ドル安・円高へ戻す可能性もあるのではないか。